40 記憶を総動員します
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
クラスメイト:セリーナ・クロウ(なし)
「もうずっと前だけど…フローラが図書館でヴァン様と2人きりでいるのを…見ちゃって」
私がヴァンと2人で?
思い返してみたけど、まったく覚えていない。
「それを、ちょっと…その…愚痴ってしまったことがあったの。…でも、周りに誰もいなかったし…いないと思ったし。だけど、あれを誰かに聞かれていたのかもって…」
フローラがそう言った。
「あっ!アリシアが、イジメられてたときの!…って、あれ、1年のときの話だよね?」
ようやく思い出した。
たしか、セリーナが出てきたときに、アリシアを守ってあげてってヴァンにお願いしたんだ。
オスカーにも説明する。
「ごめんね。言わないって言ったのに」
アリシアにそう伝えると「そうだったんだ」とホッとしていた。
「その1回のことを、尾びれに背びれに手足までつけて、話を大きくしてるってことか」
オスカーが考えている。
「…話は大きくなってるけど、全く嘘じゃないというのが困ったところだな」
ヴァンも忘れていたようで「軽率だった」とオスカーに謝っていた。
「状況はわかったけど、どうしたらいいかしら」
アリシアが悩んでいる。
「フローラとヴァンが2人きりで密会していなかったというのは、時間はかかるけど、証拠を集められそうだよ。ちょっと待ってて」
オスカーがそう言って、私の手をとってくれた。
どんな証拠かはわからないけど、オスカーが言うなら何かあるんだろう。
「問題は、イザベル嬢とセリーナ嬢が我々のことを諦めてくれない限り、嫌がらせが続くということだろう」
ヴァンがそう言ってため息をつく。
「いっそ、ゲームみたいに、ざまぁできればいいのだけれど」
アリシアがそう言った。
ざまぁできればいい。
確かにそうだ。
修道院送りにできないまでも、皇太子妃の品格がないと周りの人が納得してくれれば。
もしくは、本人たちに思わせることができればいいんじゃないだろうか。
「オスカー様、ヴァン様、少し、お力を貸していただきたいのですが、よろしいですか?アリシアも、記憶を総動員させて思い出してほしいの」
そう3人に話しかける。
「イザベルさんはオスカー様の許嫁なんですよね?ゲームの話で恐縮ですが、ゲームでは私とオスカー様が恋人になると、イザベルさんは登場しないんです。サンダー家のご令嬢なのに…これって、サンダー家に問題があったか、イザベルさんに問題があったか、はたまた、ヴァレリ家と深いつながりでもあったんじゃないかしら?」
推理を一気に話す。
「え?…うちと、ですか?」
アリシアがきょとんとした。
「ええ…キミカナでは、フローラとオスカー様がアリシア・ヴァレリを…ざまぁするでしょ?」
ごめんねと言うと、アリシアは「ゲームのことだから気にしないで続けて」と促してくれた。
「ヴァレリ家は確かそれで、家門を潰されたか…何かだったじゃない…?サンダー家も、それに巻き込まれたとは考えられないかしら?」
キミカナのときは、ヴァレリ家のことには興味がなかったから、処刑された後のことはさらっと読み飛ばしてしまった。
「ん…家は潰れてないのよ。たしか、商売がダメになったはず…うん、王族との取引ができなくなって、潰れたのよ。それで、没落してた」
アリシアが素に戻ってる。




