37 まさかの濡れ衣です
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
騎 士 :カイロ・レオン(桃)
賢 者 :ルーカス・ブレイド(橙)
宮廷医師:ジェラルド・クロウ(黄色)
講 師 :ドミニク・フェルナ(青)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
クラスメイト:セリーナ・クロウ(なし)
パーティーの日。
オスカーがプレゼントしてくれたドレスを着て、オスカーが送ってくれた装飾品をつける。
あいかわらず、オスカーが選んでくれたドレスは、私に似合う。
自分でこんなことを言うのも、だけど。
私って、可愛いんだもん。
そりゃあ、キミカナの主人公だもんね。
オスカーも、もちろんカッコいい。
赤い衣装がよく似合う。
私とオスカーが並べば、これでスチル完成、といったところだろう。
それくらい、完璧だった。
パーティー会場に行って、アリシアとヴァンと合流。
今日もアリシアは可愛いし、ヴァンは素敵だ。
そして、相変わらずのイチャイチャぶり。
見ているこっちが恥ずかしくなってしまう。
前回のときと同じように、オスカーと私が王室の人がくる場所へと進む。
階段をのぼろうとして「お待ちください!」と声がかかった。
振り向くと、イザベルがいる。
「その場所に、フローラ・レイナさんがのぼるのはいかがでしょうか?」
そう言われてしまった。
それはまあ、私もそう思う。
当然のようにあがろうとしたけど、私はまだオスカーの婚約者と認められたわけじゃないし。
私自身、まだしっかりと覚悟ができたわけじゃない。
そっと後ろに下がろうとして、オスカーに腕を掴まれた。
「フローラのことは、このパーティーで話そうと思っていたのだ。始まる前だが、みんなに話しておこう」
オスカーがそう言うと、イザベラが「その前に」と話し始めた。
「殿下はフローラ・レイナさんを婚約者にしようとされているようですが、フローラ・レイナさんには、殿下以外に想い人がいることをご存知ですか?」
イザベラが、とんでもないことを言いだした。
私がオスカー以外に?
混乱していると、オスカーが落ち着いた様子でイザベラを制した。
「イザベル嬢。私の愛する人を侮辱されるのは気持ちがいいものではない」
そう言うと、イザベラがくすっと笑った。
「お可哀想な殿下。殿下は、その悪女に騙されていらっしゃるのです。私、その悪女が、ヴァン・セドリックと2人きりで密会しているのを、何度も見ております!先週も図書館で密会されていましたわ!」
イザベラがそう言い放った。
ちょっと待て。
私がヴァンと密会?
混乱していると「私も見ましたわ」と声をあげた人がいた。
振り向くと、セリーナがいる。
まてまて。
セリーナはヴァンのことが好きだったんじゃないの?
ヴァンのほうを見ると、ヴァンがアリシアに「そんなことはない」と言っているようだった。
そんなことはしていない。
いや、オスカーやヴァンは、もちろんだけど、アリシアだって、そんなこと信じるはずはない。
でも、他の人は?
ぐるっと周りを見る。
コソコソと話をしているのがわかった。
ここで私が何を言っても悪手だろう。
なぜなら、密会していないと証明する手段が、今はない。
でも、否定だけはしないといけない。
できるだけ冷静に。
言おうとして、オスカーがまた私を止める。
「君のことは、俺が守るって言っただろう」
そう言って微笑むから、きゅんっとした。
「イザベル嬢やセリーナ嬢が言うことは本当なのかもしれない。だが、たとえそうであったとしても、俺がフローラにほれ込んでいるのだ」
オスカーが私の髪を手にとって、髪にキスをする。
髪にキスをするのは、深い愛情や敬意、そして「守りたい」という気持ちの表れと言われる。
守りたい…その気持ちが伝わってきて、涙があふれた。
「…それに俺は、フローラが親友のアリシア嬢を裏切るようなことはしないと信じているし、俺の親友のヴァンが、俺を裏切ることもないと信じているよ」
そう言って、ヴァンのほうを見た。
ヴァンは、もちろんという顔をした。




