31 ゲームの世界に抗いたいです
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
地獄の課外授業が終わり、普通の学園生活が再開した。
無視されることはどうってことはないのだが、食事をさせてもらえないのが辛かった。
カイロ経由でオスカーが、ビスケットやらパンやらを差し入れてくれたからなんとか乗り切れた。
でも、できればもう課外授業は御免こうむりたい。
来年はサボろう…じゃなかった、欠席しよう。
同じか。
課外授業をさかいに、イザベルからのイジメが陰湿になった。
とりまき的なモブをつかってイジメてくる。
足を引っかけられたり、誰も見ていないところで押されたり、水をかけられたり。
まあ、怪我をさせられることもないからいいか。
なんて言うと「さすが聖女様」って言われるかもだけど。
そもそも、この事態を生み出したのが自分だと思うとイザベルを責められないと言うか。
最初から素直にオスカーの告白を受け入れていればイザベルは出てこなかった。
イザベルとオスカーが再会した時点で私がきっちり身を引けば、イザベルが悪女役をする必要はなかった。
私がふがいないばかりに、イザベルにはなんだか申し訳ない。
さきほど、水をかけられてしまったので学園のお庭で乾かしているとアリシアが走ってきた。
「フローラ、どうしたの?」
アリシアには、イジメられていることは話していないから驚いている。
「ちょっと…濡れてしまったの。今日は晴れているから、休憩するついでに乾かしてたのよ」
そういうと、アリシアは「どうしたら、こんなところが濡れるのよ」とハンカチで服を拭いてくれる。
優しい。
アリシアを見ていて、もしかしたら私がアリシアをイジメてヴィランにならないから、イザベルが出てきてしまったのかもしれないと思った。
この世界は、私が知ってるキミカナでもキミカナTでもなくなってしまった。
それでもこの世界がゲームの世界に近づこうとしているのかもしれない。
ヒロインとヴィラン……ん?
主人公はアリシアじゃないのか?
そこまで考えて、ハッとする。
もしかして…
「アリシア、あなた、誰かにイジメられてるんじゃない?」
アリシアにはだいたいヴァンがくっついているけど、今みたいにいないこともある。
ヴァンは隣国の皇太子だから、色々とあるんだろう。
ときどき所用で学園を休んだり、授業を抜けたりするのだ。
アリシアの表情が固まる。
「うそ…誰に?誰がイジメてきてるか、わかってるの?」
私がアリシアもヴァンもオスカーも幸せにするって決めたのに。
アリシアがイジメられていたことに気がつかないなんて。
「…お願い。ヴァン様には言わないで」
アリシアがポロポロ泣く。
なんで言わないんだ。
ヴァンに言えば、すぐに助けてくれるのに。
よくわからないけど、アリシアがそう言うなら仕方ない。
「ヴァン様には言わないから、話して」
そう言って、聞き出すことに成功した。




