29 ひとりぼっちの課外授業です
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
窓の外を眺めて、ぼんやりする。
以前もあったな、こうやってぼんやりしてること。
隣で、きゃっきゃ言いながら食事をしている子たちがいる。
ただ残念なことに、私には食事は支給されないようだ。
1食2食抜いたところで、全然問題はないのだけれど。
一緒のグループの子たちは、私をいないものとすることにしたらしい。
同じグループに、イザベルがいるからだろう。
イザベルは、皇太子の許嫁に選ばれるくらい名家のお嬢様。
私は異世界からやってきた変な人。
どっちの味方になるかと言われたら、名家のお嬢様を選ぶだろう。
仕方がない。
アリシアは、ちゃんと食事をさせてもらえているだろうか。
あの子はすぐに泣くから心配だ。
ここには居ても居なくても変わらないみたいだし、ちょっと様子を見てこよう。
…見てこれるかな?
方向音痴ではないけど、他のグループがどこで課外授業をしているかはわからない。
「勘でいくしかないな」
どうせ、あそこにいても、課外授業もまともに受けさせてはもらえないだろうし。
こうなったら、探検してみよう。
私たちのグループが宿泊する施設から出て、ぐるっと見回してみる。
そんなに遠く離れているはずはないと思うけど、他のグループはどこにいるんだろう。
こういうとき、聖女の力でぱあっと道が開けたらかっこいいのに。
そんな奇跡は起きない。
そもそも、この世界には魔法がある。
魔法が使える人は、炎が出せたり、水を操ったりできちゃう。
私ができるのは、祈ることぐらい。
魔物は倒せるけど、自分を守ることはできない。
傷は治せるけど、死に至る病は治せない。
炎は出ないし、水も操れない。
万能の力があるわけではない。
だから、聖女だからってチヤホヤされたり、あがめられたりしない。
現に今、イジメられてるしね。
キミカナは恋愛を楽しむゲームだから、聖女にそこまでの力が必要なかったんだろう。
戦闘よりも、デートしよう!って感じのゲームだったもんね。
ちょっと、お腹が空いてきた。
何か食べられそうなもの、持ってきてないかなとカバンを漁ってみる。
飴を発見。
探検するときは、糖分は持っていくのが常識だ。
1つ口に入れてみた。
満腹にはならないけど、気は紛れる。
しばらく歩いてみたけど、やっぱり他のグループがどこにいるのかはわからなかった。
アリシアのことは気になったけど、これ以上、自分のグループの施設からはなれたら戻れなくなりそうだから戻ることにする。
歩いていると、誰かにつけられている気がした。
さあっと血の気が引く。
ふと、考えてしまった。
もしもイザベルが、本当に私のことを殺したいほど嫌っていたとしたら。
名家の令嬢が殺し屋を雇っていて、私を殺そうとしていたら。
私、今、超、狙いやすいところにいるんじゃないかしら。
とりあえず、走ろう。
ところが、走ろうとして、腕を掴まれた。




