28 ヴィランなのに悪役にイジメられるようです
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
おっと…これは。
教室に置いておいた、教科書とノートがない。
机の中がすっからかんだ。
移動教室の間に、盗まれたか捨てられたかしたようだ。
イザベルから、わかりやすくイジメられるようになった。
ただ、証拠はない。
勉強は嫌いだからいいけどね。
ただ、教科書とノートを買い直すために、またクエストを頑張らなくては…
お金、無いんだから、やめてほしい。
「フローラ。教科書、無くなったんだって?俺の見せてあげる」
オスカーがそう言って、私の隣の人と席を代わってもらっている。
職権乱用ですよ、皇太子。
誰も注意しないところが怖い。
そして、イザベルの視線も怖い。
私のものが無くなると、オスカーが必ず助けてくれるから、物が無くなることは減っていった。
クエストをガンガンこなさなくてもよくなってよかった。
おかげで、レベルは上がったけどね。
ちなみに、アリシアともクエストに赴くけど、最近はオスカーと行くことも増えた。
乙女ゲームでは攻略キャラとクエストに行くなんてことがなかったから新鮮だ。
いや、悪役令嬢と一緒に行くなんてこともなかったけど。
攻略キャラや悪役令嬢とクエストに行くというのは、ゲームに取り入れてもいいんじゃないかと思った。
オスカーとのクエストは、ちょっと楽しかったし。
物が無くなることがなくなったと思ったら、今度はクラスで無視されるようになった。
だけど、もともと、モブの皆さんから話しかけられることはほとんどなかったわけで。
オスカーはもちろん、アリシアとヴァンとはこれまで通りだから、全然気にならない。
「イザベル様は、何がしたいんでしょう?」
アリシアが首を傾げている。
「意味がないことだって、早くわかってもらえるといいんだけど」
私が思うに、イザベルは悪役に向いていない。
こういう場合、オスカーにバレないように私をイジメなくてはいけない。
それなのに、オスカーにバレバレなんだもん。
これではむしろ、自分を嫌ってくれって言ってようなものだ。
困ることなんて何もないと思っていたけれど、それからしばらくして困る事態に陥った。
課外事業で、オスカーとアリシア、ヴァンとも別のグループに入れられてしまったのだ。
全学年がばらばらに配置されるグループで、3人もバラバラになってしまった。
オスカーとヴァンは大丈夫だろうけど、アリシアは大丈夫だろうか。
心配だけど、確認のしようがなかった。




