27 外堀を埋められていくようで不安です
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
「君のほうはどうなの?根回しは順調?」
オスカーがヴァンに話しかける。
ヴァンがイケメンスマイルで「もちろん」と言った。
卒業したら、アリシアはヴァンの国に行くと決まっている。
そこで、皇太子妃になる。
王であるオスカーの父も、その話をとても喜んだそうだ。
なにせ、お金持ちのヴァレリ家の令嬢が隣国の皇太子妃になるんだもん。
隣国にとっても悪い話じゃない。
国同士の友好関係も築けるだろう。
2人で話し合って準備を進めているようだから、見守ってあげたい。
「俺も一応、根回しはしてるんだけどね。サンダー家が…あ、でも心配しないでね」
オスカーが私の手をとった。
全く心配していないと言ったら嘘になるけど。
「オスカーのこと、信じてるから大丈夫。私にできることがあったら言ってね」
そう言って微笑んだ。
「じゃあ、毎日、好きって言って」
オスカーが真面目な顔でそう言うから、顔が熱くなる。
「ひゃい?」
声が裏返ってしまった。
「アリシアはヴァンに、1日に何度も好きって言うじゃないか。フローラも俺に、1日1回でいいから好きって言ってよ~」
オスカーがそう言うと、アリシアが真っ赤になった。
アリシアは確かに、スキスキと何度もヴァンに言ってる。
こっそり言ってるつもりだろうけど、ばっちり聞こえている。
でも、それをここで言っちゃダメ。
ダメなやつ。
ヴァンは涼しげな顔で…いや、ドヤ顔で私を見ている。
ヴァンって、こんなキャラクターでした?
この世界の男どもは、独占欲強めなやつばかりなのか。
オスカーが私を見る。
今、ここで言えと?
少し口を開いて、閉じる。
無理…言えない。
「それは…ふ、ふたりきりの、ときに…」
そう言ったら、なんだか、余計に恥ずかしくなった。
「もう!フローラったら、可愛い!!」
可愛いアリシアにそう言われると、なんだかこそばゆい。
なんだか話が思い切り逸れてしまったけれど。
イザベル様との許嫁問題はそれほど大きな問題じゃないという結論になった。
「フローラが気になるなら、全てのご令嬢と許嫁は甲斐性しておくから」
そう言われて、困惑する。
外堀、埋められていってる。
ここまできてなんだけど、私に皇太子妃なんて務まるんだろうか。
アリシアと私とでは、知識と経験の量が違う。
ダンスだって踊れないのに…
私が不安そうな顔をしていたからだろう。
オスカーが「大丈夫」と言ってくれる。
本当に、大丈夫なんだろうか。




