23 究極の選択を迫られてしまいます
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
騎 士 :カイロ・レオン(桃)
賢 者 :ルーカス・ブレイド(橙)
宮廷医師:ジェラルド・クロウ(黄色)
講 師 :ドミニク・フェルナ(青)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
あれから1か月。
オスカーは本当に、ちょっかいを出してこなくなった。
平和だ。
ときどきカイロが話しかけてきてくれるけど、できればカイロとも距離を置きたい。
今の私の目標は、誰のルートにも入らずに卒業を迎えることだ。
卒業で、キミカナもキミカナTもストーリーが終わる。
そこから先は、自由なはず。
毎日、小説と言う名の妄想日記を書いて学園生活を満喫する。
それでいい。
クエストもミニゲームも、ほどほどにこなして、それ以外の時間はどのキャラクターにも会わない場所に行く。
ゲームを何度もプレイした私にとって、誰にも会わない場所を探すことくらい朝飯前だ。
それでも、ときどきカイロに会ってしまうけど。
好感度が上がっているような感じではないから大丈夫だろう。
そう思いながら、寮に帰る。
ドアを開けると、オスカーがいた。
部屋を間違えたようだ。
「失礼いたしました」
そう言ってドアを閉めて、まわりを見る。
ん?
ドアの数を数える。
間違いなく、ここは私の部屋だ。
一応、ノックをしてみる。
「どうぞ」と声が聞こえて、恐る恐る開けてみた。
やっぱり、オスカーが沸いている。
どういうことだ?
やっぱり部屋を間違えたか。
寮を間違えたのかもしれない。
「うん。ここは、フローラの部屋だから、間違ってないよ」
オスカーに言われて、何から突っ込んでいいかわからなくなった。
「こ、ここは、女子寮ですよ」
そう、ここは女子寮。
「そうだね」
「ここは、わ、私の部屋です」
「うん、フローラの部屋だね」
全部、肯定された。
どうする?
固まっていると、すっと、しおりを渡された。
しおり…しおり?!
びっくりして、手に取る。
これは、薔薇の花びらで作ったしおり。
このしおりが挟んであるのは…
ワナワナとしながら、オスカーの手を見る。
そこには、あの、妄想日記…いや、小説…いや、日記…
なんでもいいや。
誰にも見られてはいけないソレがあった。
「たまたまフローラの部屋に来たら、たまたまノートが落ちていて…」
たまたま、私の部屋に来るところからおかしいだろ。
「しおりを拾ったら、うっかりノートの中が見えてしまって。俺の名前が書いてあるみたいだから、てっきり、悪口でも書いてあるのかと思って…」
そこまで言われて、顔から火が出た。
見られた…
よりにもよって、1番見られてはいけない人に見られてしまった。
何か言ってごまかさないと。
「…というのは、嘘。ごめん。最低なことをした自覚がある。でも、俺の名前が書いてあるのが見えて、気になって…読んでしまった」
オスカーに真っすぐに謝られて、頭がパニックになった。
「ここに書いてあるのが、フローラの本当の気持ちなのだと、俺は信じたいんだけど。…違う?」
オスカーがそう言って、私の手をとった。
心臓がバクバクと音を立てている。
せっかく、ここまで上手にやってきたのに。
ここで…オスカー幸せ計画が破たんするなんて。
でも、たぶんこれが、私が素直になれる最後のタイミングなのだと感じた。
これを逃したら、一生、オスカーとは…友達にもなれない。
ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
オスカーと一生会わない人生を選ぶか、オスカーが廃太子となる人生を選ぶか。
そんなの、どっちも選べない。




