22 二次元の推しはやっぱり二次元の推しのようです
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
騎 士 :カイロ・レオン(桃)
賢 者 :ルーカス・ブレイド(橙)
宮廷医師:ジェラルド・クロウ(黄色)
講 師 :ドミニク・フェルナ(青)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
「大切な人って誰ですか?」
カイロに尋ねられて、口を閉ざす。
自分でもビックリした。
カイロに尋ねられて最初に思い浮かんだのは、アリシアでもヴァンでもなく、オスカーだったから。
「…秘密です」
オスカーの護衛騎士であるカイロには言えない。
オスカーの命を狙っている人がいると勘違いでもされたら厄介だし。
「き、気になります。…ヒントだけでも、教えてくれませんか?」
なぜか、カイロが必死だ。
ヒント…それくらいならいいか。
そっと胸ポケットにしまっていたものを出す。
薔薇の花びらをしおりにしたもの。
「私が…好きな花なんです」
「…薔薇、ですか?」
カイロがそう言って、じっとしおりを見ている。
「はい。あまりにも綺麗だったので、しおりにしたんです」
とても、綺麗な思い出。
まずい。
泣きそうだ。
アリシアのこと、泣き虫とか言えない。
「そろそろ、帰らないといけませんね。カイロ様は、まだ学園に御用ですか?」
「い、いえ。だいたい終わったので。あ!…りょ、寮まで送りましょうか。そうですね、送りましょう」
ひとりで帰れると伝えたのだけれど、どうしても送ると言うので仕方なく送っていただくことにした。
今日のカイロは、なんだかおどおどとして、始終落ち着きがなかった気がする。
もしかして、訓練とか仕事とか、サボっていたんじゃないだろうか。
サボっていたとしても、私がオスカーに言いつけることなんてないのに。
今度会ったら、そう言ってあげよう。
寮に戻って、読めそうな本を探してみる。
「教会から持ってきたのは、歴史書みたいなのばっかりだったもんな。あー、漫画読みたい…」
この世界には漫画がない。
私に絵心があれば描けたかもしれないけど、残念ながらそのようなものは持ち合わせていない。
残念…。
漫画は描けないけど、小説なら書けるかもしれない。
私が、私のためだけに書く小説。
うん、いいかも。
その日から、日記のように小説を書くことにした。
アリシアとヴァンのこと、オスカーのこと。
もしも、私がヴィランのフローラじゃなかったら。
アリシアとヴァンに負けないくらい、オスカーとイチャイチャしたかった。
その欲望を、書き出すことにする。
パーティーの日、お庭を散歩したこともしっかりと書き記した。
本当は言いたくて言えなかったことも。
なにせ私しか読まないのだから思う存分、甘くする。
オスカーに「好きだよ」と言われたら「私のほうが好きよ」と伝えたい。
ダンスに誘われたら、一緒に踊りたい。
実際には踊れないけど、空想の中だったらそれができる。
書き終わると、しおりを挟んで机の奥にしまった。
私の空想は、空想の中のオスカーは、私だけのものだ。
学園では、遠くから見ているだけでいい。
いずれ、イザベル様と結婚して、この国を治める王となる人だもん。
これくらいの距離が、ちょうどいい。




