21 放課後に騎士とおしゃべりをします
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
騎 士 :カイロ・レオン(桃)
賢 者 :ルーカス・ブレイド(橙)
宮廷医師:ジェラルド・クロウ(黄色)
講 師 :ドミニク・フェルナ(青)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
「ん~…泣いた!」
ベッドの上で伸びをする。
泣き活というのがあったけど、あれだ。
思いきり泣いたら、すっきりした。
ちょっと引きずるところはあるけど、予定通り、オスカーに嫌われることができた。
『もう、ちょっかいは出さない』と言われたけど、同じクラスなんだよな…
とはいえ、ここで休んだら、オスカーに特別な感情を抱いている、みたいになってしまうかもしれない。
しかたなく、学園に行くことにした。
「フローラ!大丈夫?体調、崩してたんでしょ?」
アリシアが心配そうに近づいてきた。
「うん…ごめんね」
相変わらず、一定の距離を保つモブたち。
そして、一定の距離を保ってくれているオスカー。
「てっきり、フローラが来たら話しかけてくると思ったのに。こっちを見もしないね」
アリシアがオスカーを見てそう言った。
「…イザベル様とラブラブなのよ。他の女性と仲良くしてたら嫌でしょ、ヴァン様が」
そう言うと、アリシアは納得したようだった。
休み時間になると、アリシアはヴァンのところに行ってしまう。
モブは少し離れたところで、私の噂話をするけど、決して話しかけてこようとしない。
全部聞こえているから、話しかけてくれればいいのに。
ちょっと寂しいから、ぜひ話しかけて。
そう思っていてつい、オスカーを見てしまう。
おもえば、私に話しかけてくれるのって、このクラスではアリシアとオスカーだけだったもんね。
オスカーはクラスの女子に囲まれて、なんかヘラヘラしている。
ヘラヘラしてんじゃないよ、と心の中で突っ込んで、自己嫌悪。
不愛想なよりいいよね、うん。
やることもないから、ぼんやりと窓の外を眺めた。
ひっそり学園生活を送る作戦、うまくいってるじゃん。
このまま、こうやって生活するのもいいかも。
そう思いながら放課後、校舎の裏のお庭に足を伸ばす。
特に用事があったわけじゃない。
図書館ではアリシアとヴァンがイチャイチャしている。
まだ寮には帰りたくなくて、なんとなくここに足が向いたのだ。
木の幹に座って、ぼんやりする。
この世界には、テレビもゲームもない。
本でも読んでみようかな…あ、図書館はラブラブ中だっけ。
「ふぅっ」と息を吐くと「あれ?」っと声がした。
「ああ…カイロ様。護衛の仕事は休憩中ですか?」
そう尋ねると、カイロが頭を掻いて「え、ええ…まあ、そんなところで」と言った。
煮え切らない男だ。
「フローラ様は、何をしているんですか?」
カイロが立っていようか座ろうか悩んでいる。
「私の特等席の隣を、譲ってあげますわ。どうぞ」
そう言って、ぱんぱんと地面を叩いた。
「あ…いえいえ。特等席の隣なんて申し訳ないので…俺は…ここで」
そう言って、カイロは少し離れたところに座る。
本当に煮え切らない男だ。
「特に、何もしていません。ぼんやりしていただけです」
「そ、そういえば…学園をお辞めになりたがっていると風の噂で聞いたのですが。何かあったんですか?」
カイロがしどろもどろになっている。
女性と話すのが苦手なんだろうか。
「ひっそり暮らしたいと思ったんです。それに、レベル99も目指したくて」
「レベル99?って何ですか?」
カイロが首を傾げる。
そっか。
レベルなんて、キャラクターにはわからないことだよね。
「えっと、強くなりたいなと思って」
そう言い直した。
「ひっそり暮らして、強くなりたかったんですか?」
カイロは騎士だから、強くなりたいという言葉に興味に思ったのかもしれない。
「そうです。…私、この世界で大切なものができて。それを守れるように、強くなろうと思ったんです」
おしゃべりできる人が少なかったからか、言わなくていいことを言ってしまった。




