19 レベル99を目指すことにします
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)
「フローラ!あの、イザベルって誰?あれも、キミカナTに出てくるの?」
アリシアが怒っている。
「キミカナでオスカーの許嫁って言葉だけ出てきたでしょ。たぶん、イザベル様がその許嫁」
私がそう言うと「そんなこと言ってたね」とアリシアが記憶をたどっているようだった。
「それより、噴水デート、どうだった?」
私のことはどうでもいい。
アリシアとヴァンがどうなっているかのほうが気になる。
「え?…えぇっとぉ…ヴァン様がね…」
アリシアが恥ずかしそうに噴水デートであったことを教えてくれた。
ゲームをプレイしてるから、知ってるんだけどね。
噴水デートは、ただスチルが綺麗なラブラブイベントだ。
ヴァンは自分のことについてアリシアに話そうとするけど、話せない。
でも、必ずいつか話すから信じてほしいと言って、キスをするというストーリーだ。
「…で、き、キスを…きゃ~!!!」
アリシアが顔を真っ赤にして照れている。
うん、知ってる。
アリシアとヴァンは順調そうだし、オスカーは許嫁と会えたし。
私は教会へ、学園をやめたいという手紙を出したし。
ドレスやネックレスは、オスカーに返したし。
…ひっそり作戦を実行していかないと。
「あのね、アリシア。お願いがあるの」
ここからは、アリシアを上手に騙していかなくてはいけない。
親友に嘘をつくのは辛いけど、これもアリシアのため。
そして、私のため。
「実は、やっぱり私、オスカー様のことが好きになれそうにないの。その…許嫁もいるし。そういう人がいるのに他に好きな人がいるとか、ちょっと無理っていうか…」
許嫁と合わせたのは私だけどね。
「だから、オスカー様と距離をおきたいと思っていて。もしかしたら、学園を辞めることになっちゃうかも」
私がそう言うと、アリシアがポロポロと泣き始めた。
ぎょっとする。
この子は、すぐに泣くんだから。
「学園、辞めちゃうの?…私、フローラと、お友達でいたいのに…」
ポロポロと綺麗な涙を落としながら、辞めないでとアリシアが言ってくれる。
可愛いけど、ここで折れてはいけない。
「ごめんなさい。私、どうしてもオスカー様とは。でもね、けっして、オスカー様と敵対したいわけじゃないの。アリシアもそうでしょう?」
泣き崩れるアリシアの手を取って、ゆっくりと話す。
もともと、アリシアの推しはオスカーだもん。
アリシアがオスカーとケンカしたいと思ってるはずはない。
「それは、もちろん」
アリシアがそう言って、涙を拭う。
「だからね。オスカー様とイザベル様が恋人になったら、アリシアとヴァン様ともお友達になってほしいと思っているの」
遠回しに、ざまぁしないでとお願いする。
「フローラはどうするの?」
「教会に戻って、聖女の仕事をまっとうするわ。魔物を倒して、倒して、レベル99を目指すつもり」
レベル99は言い過ぎだけど、レベル上げはしようかなと思っている。
「…そうなんだ。私も、教会に遊びに行ってもいい?」
私の意志が強いことが伝わったのか、アリシアがそう尋ねた。
「もちろん。アリシアは、私の親友だもん」
根回しは完了した。
あとは、教会からの返事を待つのみだ。




