表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もてもてヒロインに転生できたと思ったら「ざまぁ」されるヴィランでした  作者: 西園寺百合子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/50

18 スチルにないデートのようです

聖 女 :フローラ・レイナ(白)

悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)

皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)

隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)


オスカーの許嫁:イザベル・サンダー(なし)

こういうときに限って、馬車が来ない。

呼んでから、ずいぶんと経つのに。

ずっと立ちっぱなしで疲れてしまった。

本当に、なんだか、踏んだり蹴ったりだ。


地面を見ていたから、涙が溢れてきた。

何が悲しいのかわからない。

ダンスが踊れなかったことが悲しいのか、馬車が全然こないのが悲しいのか。

嘘。

本当はわかってる。

オスカーが、許嫁とダンスを踊っているだろうことが悲しいんだ。


きっと、会場が大注目していることだろう。

オスカーはいつも通り素敵で、パートナーのイザベラもキラキラしていて。

幸せオーラに包まれてる2人をイメージして、こうやって馬車を待ってる自分が惨めになった。

「歩いて帰ろう」

涙を拭いて、声を出してみる。


決めたのは、自分じゃないか。

これでオスカーは、廃太子になることはない。

うん、うん。

ほぼほぼ、ミッション完了だ。


あとは、私がひっそりしていればいい。

なんだったら、学園もやめてしまえばいい。

明日にでも、教会に手紙を出してみよう。

認められるかどうかわからないけど、できることはやらないと。


そう思って、歩き出す。

「え~。歩いて帰るの?」

歩き出してすぐ、聞き覚えのある声が聞こえた。

そんなわけはないと思いながら、振り返る。

期待してしまっている自分がいて…


「よかったら、お送りしますよ?聖女様」

そう言って、オスカーが立っていた。

期待通り現れるとか、ほんとに、乙女ゲームってすごい。

泣きそうになって、奥歯を噛みしめる。

「イザベル様はどうしたんですか?」

「どうしたんだろうね。踊ろうと思ったら靴がね。ダンス用じゃないことに気がついて」

どんな理由だ、それ。


本当はなんとしてでも、オスカーを会場に戻すべきだと思う。

でも、来てくれたことが本当に…自分でも信じられないくらい嬉しくて。

一緒に会場のお庭を散歩することにした。

明日、ちゃんと教会に手紙を書くから。

今日だけは、少しだけ、思い出をつくらせてもらおう。


オスカーと色を合わせた衣装で、ロマンチックな雰囲気のお庭を散歩する。

もし、ゲームでこのシーンがあったら、素敵なスチルになっただろう。

薔薇がとても綺麗に咲いていた。

「綺麗な、赤色ですね」

ネックレスの赤みたいに、深い赤色に見えた。


「そうだね。フローラは薔薇が好きなの?」

オスカーに尋ねられて、言い淀む。

薔薇は王家の紋章にも使われているから、嫌いとは言えない。

でも、好きだと言えば、王家であるオスカーを好きだと言ってしまうようで躊躇われた。


「オスカー様!」

イザベルがこちらに向かって走ってくる。

時間切れみたいだ。

イザベルがオスカーの腕を掴む。

「オスカー様、散歩に付き合っていただきありがとうございました。ごきげんよう」

挨拶が終わらないうちに、オスカーはイザベルに連行されていった。

あれくらい、強引な女性のほうがいいのかもしれない。


赤い薔薇。

花を摘むことはできないけれど、せめて。

花びらを1枚、思い出にもらっていくことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ