16 邪魔者はお先に失礼しようと思います
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
きらびやかな会場。
たくさんの人。
ここ、王室の人がくる場所だ。
皇太子が王室の人がくる場所にいるのはわかる。
でも、なぜ私もここにいるの?
ん?…なんか、見覚えがある。
ここ、スチルじゃなかったっけ。
キミカナ…のほう??
オスカーが、私の手を取る。
オスカーと色合わせの衣装…
ふわっと、キミカナのスチルを思い出した。
私、告白されるんだ、ここで。
それで、婚約者になっちゃうんだ。
なんとか阻止しないと。
どうしよう……
そう思っていたけど。
「今日は先生もいないパーティーです。皆さん、無礼講で楽しみましょう」
オスカーは挨拶だけをして、パーティーが始まった。
私を見たオスカーがニッコリ笑う。
「君が嫌がることはしないから。もう少し、我慢してあげる」
そう言われて、キュンとした。
やばい…これは、好きになっちゃうじゃん。
アリシアが近づいてきて、オスカーに挨拶する。
「フローラ!すごい!!キミカナの、オスカールートのスチルだよね!!生で、リアルで見られるなんて!」
アリシアが興奮している。
やっぱりそうか。
キミカナでは、パーティーが始まるまでに1番好感度が高かったキャラクターからパーティーのパートナーを申し込まれる。
そして、ドレスもプレゼントしてもらって、一緒にパーティーに行くんだ。
私も見覚えがあったけど、キミカナTではここはバッサリ飛ばされていたから…
「アリシア、ヴァン様は?」
アリシアの隣にいつもくっついているヴァンがいない。
「あ…お友達に挨拶に行かれるって…」
「すぐ、ヴァン様を噴水にお誘いして!」
アリシアがのんびりしているので、そう小声で伝えた。
キミカナTではオスカーとフローラのスチルがない代わりに、アリシアとヴァンのイベントが発生する。
もちろん、素敵なスチルも。
「え?何が起きるの?なに??」
アリシアが顔を真っ赤にして聞いてきた。
「それは、実際に体験してきて。大丈夫だから」
そう言って送り出した。
そう、大丈夫。
この世界は、アリシアを絶対に幸せにしてくれるんだから。
もちろん、オスカーにも幸せになってもらわないといけない。
この世界がキミカナを軸にしているのなら、フローラとオスカーが恋人にならなかった場合も、キミカナと同じになるはず。
フローラがオスカールート以外でストーリーを終えると、オスカーには許嫁がいたことが発覚する。
オスカー以外の誰かと恋人になれたときは、各キャラクターからお祝いの言葉がもらえるんだけど、オスカーからの言葉は複雑な気分になるものだった。
『君はとても素敵な女性だけど、俺にはもっと大切な人がいるってわかったんだ。君も幸せにね』
といって、告白したわけでもないのに別れを告げられるのだ。
許嫁と再会したのが、たしかこのパーティーだったはず。
私はこっそり帰ったほうがいいだろう。
エスコートもしてもらっておいて挨拶もしないで帰るなんて不敬だろうが、いまさらだ。
そっと、赤い石のついてネックレスを撫でる。
「これも、返さないといけないわね」
そう呟いて、馬車のある場所へ向かった。




