11 甘いケーキを食べた後なのにカフェでデートをします
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
本日は、アリシアとヴァンのお茶会におよばれしている。
なぜか、オスカーも。
で、目の前でアリシアとヴァンがイチャイチャしているのを見せつけられている。
問題は、イチャイチャしていると本人たちが気づいていないことだ。
「え、もう、食べられません。ヴァン様が食べてください」
「こっちも美味しいよ。これは俺が食べてあげるから、こっちも食べて」
甘い。ケーキよりも甘い…
幸せそうでよかったけど、できれば2人のときにやってほしい。
ヴァンのことは諦めていたけど、やっぱり目の前で見せつけられると、キシキシと胸が痛い。
そして、ときどき私に向けられるヴァンの視線が痛い。
どこまで私は、嫌われているんだろう。
アリシアはヴァンにしっかり説明してくれた。
何度も説明してくれたみたいだけど、それでもヴァンの中で私はアリシアをイジメる性悪な聖女ということになっているようだ。
「あ~。俺もお腹いっぱいだし、そろそろ失礼しようかな」
オスカーが「甘い、甘い」と言って席を立つ。
オスカーが帰ったら、時間をずらして私も失礼しよう。
席を立ったまま、オスカーが立ち尽くしている。
「何してるの?フローラも帰ろう」
そう言われて「いえ、私は」と断る。
すると、オスカーが私の耳元で囁いた。
「二人きりにさせてあげたほうが、いいんじゃない」
そう言われてしまうと、帰らないわけに行かなくなった。
不本意ながら挨拶をして、オスカーと帰ることになった。
「寮まで送っていくよ。よかったら、このまま王城に行こうか」
オスカーが冗談なのか本気なのかわからないことを言った。
「いえ。寄るところがありますので。お気遣いありがとうございます」
そう伝えて帰ろうとしたら「俺も用事があったんだった」と私の後についてきた。
「皇太子ともあろう方が、おひとりでウロウロされたら怒られてしまうんじゃないですか?」
私についてくるオスカーにそう言うと「大丈夫だよ」と言われた。
ちらっと見ると、オスカーの後ろのほうに護衛が見える。
いつから護衛がついていたんだろう。
「どこに行くの?」
オスカーがついてくる。
どこに行くか決めていなかったけど、ついてこられても困る。
「オスカー様こそ、どこに行く用事があったんですか?私のことはお気になさらず、お出かけください」
そう言って、逆方向に歩いてみた。
「俺の用事は、君と一緒に出かけることだから大丈夫」
勝手に決めないでいただきたい。
反論するのもめんどくさくて、すたすたと歩く。
「あ!カフェがあるよ。素敵なカフェ。ケーキ美味しそう…ね、ちょっと寄ってかない?」
オスカーがチャラ男がナンパしてるみたいになってる。
こんな皇太子、見たくない。
「さっき、甘~いケーキを食べたじゃないですか。もう、ケーキはお腹いっぱいです」
「じゃあ、コーヒーだけでも。ね?」
そう言って、腕を掴まれた。
街中で皇太子の腕を払いのけられるほど、度胸は無い。
「では、コーヒー1杯だけ」
そう伝えて、カフェに入った。




