10 私が幸せにすると新たに決意します
聖 女 :フローラ・レイナ(白)
悪役令嬢:アリシア・ヴァレリ(黒)
皇太子 :オスカー・ヴァル(赤)
隣国の皇太子:ヴァン・セドリック(紫)
「そっか。好きになっちゃったんだ」
人を好きになるのって不思議だ。
好きになろうと思って好きになるわけじゃない。
好きになっちゃいけないと思っても、好きになっちゃうこともある。
「じゃあ、ヴァン様とお付き合いするの?」
どこかで、こうなることを予想していたから気持ちは落ち着いている。
「…どうしたらいいんだろう」
アリシアがそう呟いて、ポロポロと涙をこぼした。
アリシアの手をとる。
「言ったでしょ。この世界であなたは主人公なの。あなたがやりたいようにすればいいと思うわ」
「フローラ。私がヴァン様と恋人になっても、友達でいてくれる?」
アリシアが潤んだ瞳で私を見る。
本当に可愛い。
悪役令嬢でありながら、続編では主人公になっちゃうくらいだもん。
可愛くないわけがない。
「もちろんだわ。私がお願いしたいくらい。…そして、私を処刑しないで」
「もちろん」
2人で力強く手を握る。
「ヴァン様とお付き合いをすることになっても、フローラをざまぁすることなんてないわ」
それだけ約束してもらえれば、それでいい。
もともと、ヴァン様のことは諦めていたし…あんなに嫌われていては望みは無い。
なによりアリシアが幸せになれるなら、もう望むことはない。
アリシアに笑顔が戻って「ヴァン様にお応えしてきます」と嬉しそうに小走りで校舎に戻っていった。
さすが、主人公。
キラキラとして可愛い。
これで私とオスカーが恋人になると、アリシアとヴァンと敵対することになるかもしれない。
それだけは避けなければ。
アリシアと敵対したくないというのもあるけど…。
そうなったら、オスカーもざまぁされるということだ。
キミカナTのストーリー。
私が修道院に行ったときも処刑されたときも、オスカーは廃太子となっていた。
私なんかと恋人にならなければ、オスカーは皇太子のままでいられる。
アリシアだけじゃなく、ヴァンにもオスカーにも幸せになってほしい。
だから私は、オスカーと恋人にはならない。
これは、私だけの決意だ。
アリシアに伝えたらきっと、自分を責めるだろうから。
ここまできたら、3人とも私が幸せにしてやるんだから!




