~ 境界の狭間にて ~
旅人として歩み始めた道は、都市という巨大な舞台の中で新たな相貌を見せ始める。
力を持つことは、ただの特権ではなく、背負うべき責任でもある。
迷いと覚悟の狭間で、マサミは「境界」という言葉の重みを知ることになる。
この章は、彼が己の力と向き合い、都市社会の光と影に足を踏み入れる第一歩を描く。
ギルドでの登録は済んだ。
少々のトラブルはあった、わたしのこの世界に対する認識不足のせいだ。
たぶん、4種の魔法を使いこなせるのは、この世界に対する異世界から来たものだけが主な拾得者なのだろう。容易に想像がつく。
第五階層ランク「星刻」ここまではこの世界の人でもなれる可能性は秘めているのだろうが、ギルドマスターがにおわせていた「その上」第六階層。
わたしは異世界から来たというだけでその素養を持っているのかもしれない。これは過信ではなく、4種の魔法を自在に操れていることからも想像がつく。
すでに、わたしはこの世界の人たちを超える力をもってしまっているのだと思う。
だからこそ、力を持つものとしての責任も持たなければいけない。
わたしは、人だから間違うこともある、最初の村で魔物退治と称する村人を守る戦い・・・虐殺で大量の命を奪っているのだ。
あれが正しかったのか、間違っていたのかなんてわたしが判断することじゃない。
間違っていたというなら、わたしはそれに甘んじるしかないのだ。
でも、こうも思う。わたしが今、目の前にある命を救える力があるのに、救わなければそれもまた罪なのだと。
それを背負っていく覚悟を決めなければいけないのだ。力あるものとして。
身分証が手に入ったので、早速図書館へ行ってみる。
「こんにちは、身分証はこれでここの利用できますか」
「はい、大丈夫ですが、この階だけの利用許可ですので、他の階への移動はお控えください。」
随分制限が厳しいけど、芽吹き手じゃそうだよね。
まず知りたいのは、この世界のこと、この街のこと、それから王族や貴族と庶民の関係なんかいろいろあるけど、触りぐらいは資料がありそうだよね。
できれば魔法のことも知りたいけど、魔法関係の書物はこの階にはないみたい。
最初としては基礎知識みたいなものでも調べるだけで大変だと思うし。
この街の領主は庶民には比較的緩やかな政策をとってるみたい。
レルナードは侯爵なんだね。「蒼穹を統べる境界の鷲」なんて二つ名があるんだね。
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【旅の寄り道コラム】
貴族の爵位
公爵 王族に近い最上位。広大な領地を持つ。
侯爵 辺境の守護者。軍事力と自治権が強い。
伯爵 中規模の領地を持つ有力貴族。
子爵 伯爵の補佐的存在。領地は小さめ。
男爵 最下位の爵位。村や小領地を治める。
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領主直属の部隊が5,500人てすごいね。やっぱり、国境の街を守るって大変なことなんだね。
都市警備で10,000人・・・わたしには想像つかないや。
これだけの部隊を維持する兵舎とか大きな訓練場、都市防衛の要の監視塔なんかもあるんだね。
冒険者ギルドに、魔法ギルド、商人ギルド、噂程度だけど、暗殺者ギルドなんかも存在があるって、これだけの人が集まれば、それだけ、闇もあるってことだね。
あった、あった、スラム街、一つの区画の半分くらいを占めてるんだね。まだ様子がわからないうちは不用意に足を踏み入れないようにしないとね。
種族ごとのコロニー的なものもあるね。種族街ってところかな。
最初に連れて行ってもらった市場、そして、ここ図書館。
街についてはこんなところかな。
国としては、この街が三番目の大きさっていうのは、人口のことなんだね。40万人もっと大きいのは、80万人、100万人の王都が最大ってことだね。
そのうち行くことになるのかな。
街で商売をしようと思ったら商人ギルドの登録は必須なんだね。
魔法ギルドに登録すると、魔法書が買えるようになるのか。ふむふむ、これは一考の余地があるね。
建物購入には冒険者ギルドで斡旋もしてくれるんだね。これはちょっと興味深いかな。
変身の拠点とかにできればリスクを減らせるものね。出入りが目立たないのがよさげだよね。
隣の国とも接してるから、いざとなった時の用心にもいいかな。この街がわたしの拠点になるかもしれないね。
拠点ができるとやっぱり転移魔法は欲しいよね。この世界で転移魔法を成立させるための何かヒントになる魔法が欲しいよね。
どこでもなんちゃらとかあれば便利なのにね。
数日通って分かったことは色々あるし、次は魔法をなんとかしたくなったかな。
帰る前に、この図書館の利用権限のこと聞いておかないとね。
「冒険者ギルドのランクで閲覧可能になるのはどういった感じか教えてもらえますか?」
「冒険者ギルドの階層ランク、跳ね人まではそのまま利用できる階に一致しております。第四階層、白銀の守り人になると一部の閉架以外はすべて閲覧可能となります。第五階層、星刻になると、当図書館の資料はすべて解放となり、王宮の図書室も入室が許可されるようになります。」
「以上ですが、ほかに何か質問はございますか?」
「いえ、ありがとうございました。」
王宮の図書室はちょっと興味あるよね。
わたしは、次は魔法ギルドへと赴くことにした。
「こんにちは、登録したいのですけれど」
「冒険者ギルドのギルド証の提示をお願いします。」
「これでお願いします。」
「申し訳ございません。登録は巡り人以上となっております。」
あらら、初心者には厳しいのね。魔法書の販売もするくらいだから、当然といえば当然かな。
仕方ないよね。
「すみません、出直してきます。」
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【旅の寄り道コラム】
魔法ギルド階位表(冒険者階層との対応)
冒険者階層:第一階層「芽吹き手」
魔法ギルド通常位:―(登録不可)
冒険者階層:第二階層「巡り人」
魔法ギルド通常位:初環・灯し手
元素数の目安:2系統
冒険者階層:第三階層「跳ね人」
魔法ギルド通常位:二環・風読み
元素数の目安:2系統
特別位(3系統使い):翔環
冒険者階層:第四階層「白銀の守人」
魔法ギルド通常位:三環・大地渡り
元素数の目安:2系統
特別位(3系統使い):三環守
冒険者階層:第五階層「星刻」
魔法ギルド通常位:四環・潮導
元素数の目安:2〜3系統
特別位(3系統使い):星環守
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やっぱり、3系統使えるだけでも特別扱いされるほど魔法の使い手は居ないってことなんだね。
登録の時は気を付けないとね。できれば2系統だけにしておいた方が無難かもしれないよね。
ロイドにも言われてるしね。
今は転移魔法に繋がる魔法を覚えられる系統がいいかもしれないね。
図書館で知識を求め、魔法ギルドの門前で退けられたマサミは、己の立場を改めて痛感する。
それは制約であると同時に、未来への布石でもあった。
力を隠し、境界を渡り歩く者として、彼は「責任を背負う覚悟」を言葉ではなく行動で示していく。
この都市での生活は、やがて彼にとって拠点となり、そして試練の舞台ともなるだろう。




