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~ 境界を焼き尽くす炎 ~

まだ見ぬ脅威に怯えるだけの日々を終わらせるために、私は決断した。

魔物の巣を叩くという選択は、守るための戦いであると同時に、私自身の心を試す戦いでもある。

炎は境界を焼き尽くす。

それは村と魔物の境界であり、希望と絶望の境界であり、そして私の良心と責任の境界でもある。

 挿絵(By みてみん)

 村に戻ると、わたしは長老様に提案した。

 魔物の巣を叩こうと。


 長老様は、まさか魔物の巣を排除するなどとは考えていなかった。

 調査には協力してくれたが、そんな大それたことまでは想定していなかったのだ。


 でも、わたしはやると決めた。


 長老様は、わたしが火猛族の村に行っている間も、魔物の巣の動向を探っていてくれた。

 そのおかげで、前回の襲撃でかなり数が減っていること、出入口は三箇所だけだということがはっきりした。


 わたしは、デディアさんをはじめとする人々の協力を取り付け、魔物の巣を叩くプランを提案した。


 魔物だって生き物だ。

 生き物である以上、呼吸しなければならない。

 だからこそ、わたしは今回のことを「虐殺」になるだろうと思った。


 命を奪うことの意味を、しっかりと理解したうえで、わたしはやるのだ。

 十八歳になれば、わたしの国では成人だ。

 自分のしたことに責任を持つ。

 こうすることの意味を、この先も取り違えたりしないように。


 たくさんの命を奪うことを否定しない。

 言い訳もしない。


 三箇所の出入口を塞ぐ手配をする。

 途中に伝達役を置き、なるべく同時に速やかに行えば、こちらの被害は皆無だ。


 合図すると、少し離れた二箇所の出入口が轟音とともに塞がる。

 わたしは、その音を頼りに塞がったとみなし、できうる限り最大の火炎魔法を出入口から届くところまで送り込む。

 そして、この出入口も塞いでもらう。


 中で燃えた火炎魔法は酸素を奪い、窒息させる。

 場合によっては、何かが燃え、一酸化炭素が発生し、穏やかに中の生命体を全滅させるだろう。


 わたしは入口を塞いでもらったあと、足が震え、その場にへたり込んでしまった。


 わたしが奪った命の数。

 これが虐殺なのだ。

 今、わたしが死に至らしめた者たちは、わたしに直接危害を加えた者ではない。


 村の脅威として、わたしが手を下し、排除したのだ。


 わたしは、自分の両手で体を抱え、ひたすら震えが去るのを待っていた。


「ありがとう、嬢ちゃん。俺たちは嬢ちゃんにすべてを背負わせて命を繋いだのかもしれない。

でも、繋いでくれた命には先があって、そこから新たな命が生まれるんだ。今は見えない命を救ったんだ。それを糧として、嬢ちゃんには胸を張ってほしい。」


 デディアが優しく声をかけてくれた。


 デディアの言葉には救いがあった。

 まだ見ぬ命を救った――それは希望なのだと。


 一方で、相手のまだ見ぬ命も殺したのかもしれない。

 自分の心に、どこかで折り合いをつけなければ、わたしは前に進めない。


 わたしはこれからも、希望と絶望を抱えながら進んでいくのだろう。


「前を向きなさい、マサミ!」


 そう言いながら、両手で自分の頬を叩き、自分に喝を入れた。

炎はすべてを呑み込み、境界を消し去った。

その代償として、私は「虐殺」という言葉を自らに刻みつけることになった。

けれども、デディアの言葉が示したように、そこにはまだ見ぬ命を救った希望もある。

私はこれからも、希望と絶望を抱えながら歩むだろう。

そしてその歩みこそが、私にとっての「境界を越える」ということなのだ。

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