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~ 新しき白、古き影 中編(下) ~

旧EP21の三分割、フルスクラッチ書き換え版、第二部を 中編(下)としました。

後日前書き、後書きを描きます。

 急ぎ雪白庵に向かうと、応接間にでっぷりとした人物がいた。どこかで見覚えがあった。

 美白魔法薬の件で、他の商人に街中で難癖をつけていた男だった。

 やはりというか、いよいよ来たかという感じだった。

 (くだん)の美白魔法薬老舗レフィアルド商会のオーナー”レフィアルド”だった。


 店員は、まだほとんどが公爵家のメイドだったのと、店長のエミリは元冒険者だったので、商人相手に怯むことなく冷静に対処していてくれたので、店で大騒ぎになることはなかった。


「こんにちは、わたしがこの雪白庵のオーナーのマサミです」

 事実上の初対面になるので、そこは商人として丁寧に挨拶した。

 レフィアルドは、ふんっといった態度で太々しかったが、せっかく冷静に対処してくれた店のみんなに迷惑をかけるわけにもいかなかったので、苛つきはしたが、我慢することにした。


 レフィアルドが早々に口火を切った。

「さっそくだが、あの美白魔法薬はうちが作って、顔を白く見せる魔法薬なのだ。そのアイデアを盗んで、しかも重要な顧客まで奪うとはなにごとですかな」

 一見冷静そうな口調だが、怒り心頭といった表情は隠しきれていないようだった。この男は、難癖をつけさせたら一流だね。わたしは、内心(あざけ)わらってしまった。

 あくまで同じものみたいなことは言わないんだね。違うものだって認識があるなら難しくないよね。

「なるほど、ですがわたしの店で扱っているのは日焼け止め、白い肌を守る”おしろい”です」

 レフィアルドは、ぐぬぬといった顔をしていたが、わたしは続ける。

「美白魔法薬とは一切関係もありませんし、たまたま白く見せる効果もあっただけの事です。」

 あーそういえば、日焼け止め効果ってあんまり全面に強く出してなかったけど、売り込み文句としてはいいかもね。

 商人同士の話ってためになるね。アイデアがわいてでてくるもの。

 この話し合いで鉛中毒に関して責め立てる気はなかった。鉛中毒をこの世界で立証することは難しいし、わたしの元の世界だって、危険性が知れ渡るまでは使用禁止になっていなかったのだものね。


「ところで、お話はそれだけでしょうか?せっかくオーナーが出張ってきているのです。よろしければ、互いの売れる商品の業務提携販売の話はいかがですか?」

 もちろん、安全性の高い商品限定だけどね。老舗をつぶそうなどとは思ってはいないけど、相手が拒むのなら無理だよね。

 今の状況で、業務提携はできないだろうけどね。

「ふんっ、小娘がぬけぬけと、目にもの見せてやる」

 捨て台詞を残して店を立ち去ってしまった。ちょっとムカついたけど、小娘なのはしょうがないじゃんと思った。

 不穏な捨て台詞だったけど、何かしようとしているのかな、嫌な予感しかしないよね。


 エミリや店員に、レフィアルドが何か仕掛けてくるかもしれないから十分に注意してと警告を出して、わたしは別の方面から調べてみることにした。

 業務提携している商店にも警告を出すように伝えた。


 わたしが調べたのは、レフィアルドの背後にについている貴族の事だった。

 老舗だけあって支援していたのは、公爵家に続く地位の侯爵家の一派だった。レフィアルドの娘を侯爵家に嫁がせるほど親密らしかった。

 侯爵家の力を使われるとちょっと厄介だよね。うちが、公爵家の支援があるとはいえ、提携先がそんなに強い貴族と繋がりがあるとは限らないものね。


 貴族の事は知らぬ存ぜぬってわけにもいかないけど、貴族に相談しないとわたしには何もできないよね。提携先に影響があっても嫌だしね。

 相談するにしても、提携先の懇意にしている貴族を一覧にまとめた。そのうえで、セリーナ様に相談に行くことにした。


「セリーナ様こんにちは」

「こんにちはマサミさん、きょうは何かご相談事ですって?」

 セリーナ様はエミリちゃんのメイクアップ技術で一段と美しくなっていたのにちょっと驚いた。エミリちゃんもなかなかやるもんだね。


「えっと、先日レフィアルド商会のオーナーが直々にきて・・・」

 事細かく説明して相談したところ、貴族同志の流儀がそれなりにあるらしい。

 特に化粧品のことは貴族の殿方に言ってもなにも変わらないらしく、貴族女性同士はお茶会でものごとの白黒をつけるらしい。

 これはこれで、とても怖そうなお茶会だと思った。


 セリーナ様にはそのお茶会の席にわたしも同席しなさいと言われてしまった。

 えーわたしもですか、貴族女性のお茶会にわたしなんかが参加してもいいんですか

 わたしは、綺麗なドレスも持っていないし、と説明したところ、部屋に行って途端にメイドに囲まれドレスに着替えさせられてしまった。

「まあ、とってもお似合いよ、それなら殿方の心もつかみ放題ね」

 いえ、そんな事言われても困ります。お茶会のためですよね?セリーナ様・・・


 後日、セリーナ様は、雪白庵に提携している商店の懇意の貴族の奥方と、レフィアルド商会と懇意にしている侯爵家の奥方も顔をだしているらしいお茶会が開催された。

 わたしには、誰が誰やらさっぱり見当もつかなかったが、セリーナ様はご自身に任せておけばいいと言ってくれた。


 セリーナ様は、お茶会の主催者として立派に挨拶している。さすがは貴族のそれも領主の奥方様なんだなと思った。

 わたしはといえば、この貴族の奥様方の中で堂々とセリーナ様の右隣に座るという栄誉を頂いている。

 そして、わたしのことは命の恩人であることを強調し、あらたな美白を作った商店主であることまで紹介された。

 そのうえでしっかりと、もし雪白庵になにか手出しすれば、公爵家が黙ってはいないと暗に釘をさしてくれたのだ。

 安心感はあったが、もし敵に回ったとしたらと思うと、ぞっとする貴族社会の一面を垣間見た気がした。

 これも貴族社会の争いを避けるための立派なシステムの一つなのだなと思った。


 わたしは、セリーナ様から紹介を受けたことで、簡単な挨拶をした。

 先日、セリーナ様のアドバイスで雪白ラメ入りを参加した貴族の奥様方にプレゼントしたほうがいいと聞いていたので、しっかりと準備してきた。

「わたしは、マサミ、雪白庵の店主です。本日お持ちしました雪白ラメ入りは皆さまの白く美しいお肌を日焼けから守り、そしてさらに輝くような白さを引き立てる商品となっております。また、皆様の美しさを更に引き立てるラメというキラキラした粉末を混ぜております。皆様にお気に召して頂ければ幸いです。セリーナ様にはご愛顧頂いておりますものと同じ商品になります。」

 ペコっとお辞儀をする。


 一人ずつ丁寧に雪白ラメ入りをプレゼントして回った。

 その間も、なにか粗相をしてはいけないとドキドキしていたが、セリーナ様の命の恩人を邪険にすることは貴族社会ではセリーナ様を邪険にすることと同じ事になるらしく、始終笑顔で対応された。

 プレゼントしたラメ入り雪白で、いきなりエミリちゃんのように斑鉄仮面にするような人はさすがにいなかったし、いつでもどこでも化粧直しが簡単にできる鏡付きのコンパクト入りは評判がよく、さらに愛用者を増やす結果となった。


 売り上げを激減させたレフィアルド商会からは、ちゃっかり鏡付きコンパクト入り美白魔法薬が発売されていたが、貴族の奥方にはラメ入りの雪白が流行となっていたので、あまり見向きされることはなくなっていった。

 結果的にレフィアルド商会は美白魔法薬はほぼ売れなくなっていったが、商会は規模を縮小して細々と商売を続けているらしいとの噂を聞いた。

 レフィアルド商会が潰れなかったことで救われた人もいる、その一方で規模が縮小したことにより仕事にあぶれて職を失った人がいることを忘れてはいけないと思った。


 これも一つの戦いが招いた結果なのだと改めて噛み締めた。

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