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~ 新しき白、古き影 中編(上) ~

以前のEP21を三分割、フルスクラッチで書き換えた第一弾を中編(上)としまた。

後日前書き、後書きは追加します。

 当初の思惑通り、雪白の売り上げはとても順調だった。

 小さな店舗で、店頭にキャッチフレーズや、具体的な価格や概要を掲げるという方法はこの世界になかったので、庶民にもウケがよかったのだと思う。

 また、庶民でも手の届くお手軽価格かつ、限定販売方式で女性を惹き付けたのだと思う。

 ラメ入りの高級バージョンは貴族の特に王妃様をはじめとする王族関係者の間で広がりつつあった。


 エミリちゃんは、斑鉄仮面事件以降わたしが教えた方法をより進化させて、自分を綺麗に見せる術を会得し、店頭でデモンストレーションを兼ねて実演販売を手がける優秀な店長に育っていった。

 その甲斐あって、売り上げはどんどん伸び、当初決めていた限定販売数をわずか一時間足らずで完売してしまうほどの人気を誇った。


 エミリちゃんはとても熱心にお店のこと、特に綺麗に見せるための化粧品類を研究して、雪白庵でも色々と口紅や、頬紅、化粧水なんかも売りたいと言われた。

 当初は、いきなり商品開発というわけにもいかないので、他の商店の安全な品物を見極めて業務提携という形で販売を始めた。

 雪白庵独自の商品を開発した際、いちいち文句をつけるのは無しという条件で進めたし、その代わり、業務提携していた先の商品も店頭に並べ続けることは、条件として付け加えて相手を利用するだけというのは無いようにした。


 わたしは、ナチュラルメイク派なので、実質エミリセレクトが並ぶことになった。

 提携先は軒並みレフィアルド商会が難癖をつけてきたところも多く、貴族相手の美白魔法薬の独占市場を切り崩したことでの評価もあり、提携話は順調に進んだ。

 雪白庵のおしろいも数量限定ではあるが、提携先へ卸すことも厭わなかった。


 この世界でも化粧品の需要がこんなにあるとは知らなかった。主に貴族向けだったものが、雪白庵で扱いを始めると瞬く間に庶民への需要が広がり、販売数もうなぎ上りだった。

 業務提携先からも嬉しい悲鳴が聞こえてきたほどだ。

 もっとも、化粧をするのは人間族だけで、獣人族は、毛色にポイントアクセントをつける程度だった。それでも、需要を増やしたエミリちゃんには頭が下がる思いだった。


 最近エミリちゃんのメイクがわたしの世界のギャルっぽいメイクになってきたので、もっと上品なメイクはどうかと勧めたのは言うまでもない。


 そんな中、グラントール公爵から正式な召喚がかかった。もちろんエミリも一緒にというご指名までついて。

「誰も取って食おうなんて思ってないから気楽にして大丈夫だよ」

 エミリちゃんは領主と謁見するような経験がなかったようで、とても緊張していたが、わたしの一言でいくらか気楽になったようだった。

 魔導蒸気塔に着くなり、エミリちゃんは、セリーナ様の部屋へ連れていかれた、たぶん、メイクの腕を買われたんだと思う。

 上品なメイクに方針転換させておいて、つくづく良かったと思う。セリーナ様のギャルっぽいメイクも見てみたかったけどね。


 わたしは、謁見室へ呼ばれた。公式な召喚なのだから当然なのだけれども、概ね事業が順調だから花丸でももらえるのかな?とかお気楽な気分で謁見室に行った。

「マサミよ、堅苦しいことは無しだ。事業は順調のようだな。」

「はい、店長のエミリが独自の事業展開を始めまして、他の商店とも業務提携が上手くいっているようです。」

「そなたの事も聞き及んではいるが、自分の功績とは語らないのだな」

「いえ、わたしは真実として申し上げているだけで・・・」

「そう、畏まるな。今日は、他でもない、事業の成功として何か褒美として望むものはないか?」

「それでしたら、公爵家の図書室の閲覧を許可してもらえないでしょうか?」

「何?そんなことで良いのか?」

「はい」


 その後、公爵家の図書室閲覧権限は褒美のうちにも入らないという事で他に何かないかと尋ねられた。

 星刻として王宮の図書室が閲覧できるのに、公爵家が拒む理由がないからだと言ってた。

「でしたら、貧民街でのわたしの活動に制限を設けないで頂けますか?」

「其方が、何を考えているのかは分からないが、貧民街での行動の自由を保証しよう。他にはあるか?」

 え、これも褒美にはならないの??

「では、雪白庵の支店兼倉庫として、大きな店舗を用意していただけますか」

「其方は、自身に対して本当に欲が無いのだな」

 半分呆れかえるように笑う公爵

 別に意識してそうしてるわけではないけれど、実際自分の欲なんてたかが知れてると思っているのもあるし、いずれこの世界を去る時には経験以外は持っていけないからね。


 貧民街での活動の自由を手に入れたのは他でもない、ケイトさんとの約束を守るためだ。

 あの時のケイトさんの苦痛に満ちた表情をわたしは絶対に忘れない。あの顔を笑顔に変えられるなら、わたしはどんなことでもすると心に決めたのだから。


 本当は王都での活動にしたかったけど、商人として足がかりのあるこのクレオスペリアでしっかりと地場固めをしたかったし、なにより貧民街での活動に自分の商店が必要だったからでもある。

 それに、領主のお墨付きがあれば、他の貴族もわたしに言いがかりや、難癖をつけてくることへの牽制にもなると思った。


 わたしが、貧民街でやりたかったこと、それは、貧民街に学校を作り、貧民街の人を一人でも多く引っ張り上げることだ。

 なにも、貧民街を裕福にしようというのではない。最低限の生活が保障されるところまで引き上げるだけだ。

 もっとも、貧民街の人たちが学校で学んでも、すぐに職に就けるわけではない。この世界は信用で人を雇うことが主流だからだ。

 そこで、わたしの商店が必要であり、その後の展開のために業務提携先とも良好な関係を築いたのだから。

 そして、やろうとしていることだけで貧民街の人全てを助けられるわけでない事ぐらい重々承知の上だ。今のわたしの限界を踏まえて躊躇してやらないという選択肢は持ち合わせていない。


 わたしは、貧民街へ向かうとどんな人たちがどんな生活をしているかを見ることからだった。

 自分の目で見て、感じて、どうしたらいいかを考える。


 食糧不足による栄養失調

 病気に侵され、寝たきりを余儀なくされている人、その家族を助けようともがき苦しんでいる人

 働き手が亡くなり、貧民街へ逃れてきた人、家族

 子供たちだけで身を寄せ合って生活しているグループ

 働くことへの気力を失い、ただ漫然と今日明日をただ、死を迎えるためだけに生きているだけの人


 ほんの少し見て回っただけでも、これだけ様々な人々が暮らしているのが貧民街だ。

 そして、見過ごしてはいけないのが、犯罪者集団だ、子供を使い大人は働かずに子供を奴隷のように使って稼ぎを上げている。

 見たところで、今のわたしが、この搾取する大人を懲らしめて子供を解放するわけにはいかないのだ。数十人もいる子供を簡単に食べさせて行く術がないからだ。

 わたしは握りこぶしを強く握り、自身の力のなさを改めて嚙み締めた。


 とにかく、学校を立ち上げる事を考えた。

 対象をとりあえず、働けるのに働き口がない人、子供たちだけの生活グループ、ここに絞って考えた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【旅の寄り道コラム】


 マサミの考えた学校システム


 職業訓練を中心として、読み書き、算術(足し算・引き算)を中心に行う。

 働くものとしての信用に関する道徳教育


 基礎的な水準に達した者に、雪白庵での就業訓練、就職斡旋。


 そして、学校で学ぶことに対してポイントを付与し、ポイントごとに食料の供給が受けられるシステム

 ポイントが一定水準に達すると、就職に有利になるシステム


 大事なポイントとして教えることに向いている人を教員として採用すること。

 最初に訪れた名もなき辺境の村でできたやり方をここでも採用する。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そして、問題になるのが、学校として使う場所の問題だったが、貧民街近くにあった教会を借りられないか交渉してみることにした。

 食料を配布することが教会としては理にかなっており、日中だけであればということで、快く貸してもらえることになった。

 ただ、教会内は薄暗く、適していないことから、広い庭先を使わさせてもらうことにしたが、雨などの天候によっては屋内を借りる事にした。


 おおよその学校として成り立つ目途が立ったので、貧民街での生徒の募集を始めた。

 ここでも、一人ひとり声をかけていく地味な作業だ。

 そして、その人に合ったメリットを説明し、食料が貰えることを大々的にアピールすることで数名の対象生徒が見つかった。

 その生徒に対しても、知り合いや親しい人に学校を勧めてもらうことで生徒獲得戦略とした。

 もちろん、生徒募集を行ってくれた人に対しては、ポイント還元で対応した。何も無しでは動くことがないのが人というものだからだ。


 就職可能な人が増えれば、商店としてのアイデアはある。わたしの考えるところでは、新たな商店展開で数十人の店員を受け入れる事ができるはずだった。


 数週間が過ぎ、学校も少人数ではあるものの、順調に生徒も少しづつ増え、問題を解く際にとても丁寧に回答へのアプローチを説明しながら回答する生徒が居た。

 その生徒はとても熱心に勉学に励み、知ることへの興味は尽きないとはなしていたことから、自身も学びながら教員という職につかないかと誘ったところ。一つ返事で承諾してくれた。

 おそらく、環境さえ整えば、研究者などになっていた人なのかもしれないと思った。この世界に研究者という職業があるのかどうかは聊か疑問ではあったけどね。


 教員が雇えれば、学校としてはほぼ成功といえる。連鎖は始まってしまえば瞬く間に広がりをみせるものだし、わたしの手を離れるのにもそう時間はかからなかった。

 学校を支えるだけでも、ポイントを管理したり、職員の給与管理、そんな人が必要になってくるが、その人材ですら生徒の中から生まれてくるのだから。

 学校そのものの建物を購入して行うのも近い将来なのかもしれない。


 順調すぎて自身でも怖いくらいになっていたころ、雪白庵の使いの人が来て、至急店に来てほしいとの連絡があった。

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