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~ 新しき白、古き影 前編 ~

商人としての出発点に立ったマサミ、しかし問題は山積・・・

 これから事業展開するにしても、この世界でのノウハウは全くない上に、グラントール公爵がパトロンである以上、このクレオスペリアで始めなければならない。

 そして、ここでも問題がある。グラントール公爵と接触しているのはあくまで冒険者マサミ、商人ギルドに登録しているマサミとは別人だ。

 事業展開とは簡単にいくものではない。しっかりと地場固めと自分の方針を忘れずにやっていかないと足元を(すく)われる。


 そこでわたしは考えた、この街にも拠点が必要になる。商業は商人のマサミでなければ今後のことがあるのだ。

 レスティラントのケイトさんは唯一信用できる人だが、ここでは離れすぎている。

 秘密を守ってくれる人、ケイトさんに相談しよう。

 わたしは、急遽(きゅうきょ)、レスティラントへ戻ることにした。


 また、クレオスペリアの街散策できなかったね。

 まだ、いくらでも来る機会はふえたのだから、ここは目の前の事に集中することにした。


 クレオスペリアからは、レスティラントへ連絡馬車が同じようにあったので、それで戻ることにした。

 この世界ではやはり、旅は時間がかかるし、長旅をする人が居ないのも頷けるね。

 せめて主要な街のあいだだけでも、あの魔導列車があったらと思ったが、あの列車の運行には、クレオスペリア並みの魔導炉があちこちに必要になるらしい。

 あの街ならではの発展だったんだね。


 連絡馬車に乗るたびに星刻様同乗パターンはあった。商人は喜び、傭兵は楽ができるななどというものである。

 もう、前回で慣れてしまったので、別にどうとも思わなくなった。


 レスティラントに近づくごとになんとなく、故郷のような懐かしさを覚えた。ここにはケイトさんが居るからかもしれない。


 二週間ほどの旅でやっとのことレスティラントへ戻ってきた。

 ただいま、レスティラント。

 すぐにでも、ケイトさんに会いたかったけど、まずは、家へ帰って、身だしなみを整えないとね。

 お風呂も、洗濯も済ませて、旅の疲れをとってからね。疲れを残してる姿はケイトさんに見せられないもの。


 翌日から早速行動を開始することにした。

 まずは、何をおいても、冒険者ギルドへ行かないとね。ケイトさんに真っ先に会いたいだけなんだけどね。


「こんにちは、ケイトさん」

「おかえりなさい、マサミさん、大変だったみたいですね。セシリアから色々聞きましたよ。」

 さすが、ギルド情報網、早いね。でも、ケイトさんの笑顔で(いや)されます。

「ケイトさん、早速なんですけれども、あの、クレオスペリアにわたしの秘密を守りながら協力してくれる人は居たりしませんか?」

「やっぱり、そう来ると思っていましたよ。クレオスペリアの領主様にお会いしたと聞いていたので、あちらでも自由に動きたいのですよね。」

 ケイトさんにはお見通しだったのね。

「はい、実はクレオスペリアで商人として活動することになったのですが、わたし、別人として登録してるじゃないですか」

「そうですよね、安心してください。とても信頼をおける友人がいますから。」

 やっぱり、ケイトさんは頼りになるお姉ちゃんです。

「ありがとうございます。」


「また、すぐにクレオスペリアに戻るんですか?」

「すみません、ほんとはケイトさんとゆっくりお話ししたりしたんですけど・・・」

「次に戻ってきたときは、一緒にまたお買い物でも一緒に行きましょ」

「はい、ぜひ」

 やっぱりケイトさんはわたしの優しいお姉ちゃんです。


 今回のこと成功させたら、もしかしたらケイトさんとの約束に着手できるかもしれないから、頑張らないとね。

 こっそり、心の中でケイトお姉ちゃんと呼んでみて自分で照れてしまった。


 再び、お約束の連絡馬車トークと二週間の旅路を経てクレオスペリアに戻ってきた。

 まずは、ここの冒険者ギルドで、ケイトさんに紹介してもらったエマさんに会いに行く。

 エマさんも、セシリアさん同様、元同僚で気の合ったとても仲の良い友人らしかった。


 冒険者ギルドに入り、受付へ向かうと、カウンター越しに、にこやかに手を振る人がいた。

 その人のほうへ向かうといきなり、大きめの声で言った。

「急襲の魔人こと、星刻のマサミ様ですね。ようこそ、クレオスペリアの冒険者ギルドへ」

 な、なんてことを・・・一斉にギルド内から注目をあびた。

「も、もしかしてエマさんですよね。」

「はい!ケイトの友人のエマです。」

 とても元気な人だけど、怖いなあ

 エマさんはそのあとそっと耳打ちしてくれた。

「ケイトから聞いてます、巻き込まれ体質だって、マサミさんのこと知らない人が絡んでも困るので、アピールしておいたんですよ。別に意地悪したわけじゃないですからね。」

 なるほど、そういうことですか、それにしてもその二つ名は可愛くないので辞めてほしい。

「早速なんですが、小さくていいので、安い個人宅を購入したいですけど、古くても住めれば構わないです。」

「はい、聞いてます。ここなんかどうですか?大金貨95枚で、魔導炉付きです。中古ですがいかがですか?」

 小声で付け加えた。

「大通りから一本裏手、変身には最適です。」

 なるほど、ケイトさんの紹介だけあるね。

「魔導炉って使ったことないので教えてもらいたいのだけど・・・」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

【旅の寄り道コラム】


 クレオスペリアの家庭用の一般的魔導炉エネルギー契約

 (※ガス・電気両方に相当)


 魔力管契約(/月)

  基本料金 大銀貨  5枚

  従量料金 小金貨 2-3枚(一人世帯)

  ※中途解約、再開可能。再開時に大銀貨3枚の再接続料がかかる。


 魔力石(筐体デポジット方式)

  魔力石保証金 大銀貨 1枚

   S石(小型): 1~2人世帯の「約1日分」を目安

   M石(中型): 1~2人世帯の「約3日分」/3~4人なら「約2日分」

   L石(大型): 1~2人世帯の「約7日分」/3~4人なら「約4~5日分」


  魔力石充填価格

   S石: 大銀貨 2枚

   M石: 大銀貨 5枚

   L石: 小金貨 1枚


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 これで拠点は確保できたね。

 本格的に商店で売り上げあげていかないとね。本腰をいれよっと。


 しかし、ここで一番の問題は、商人マサミにどう引き継ぐかということだった。

 グラントール公爵に身元を隠したいからというのもどうなのだろうかと思っている。

 なかなか、こんなところで躓くとは思わなかった。


 準備しなければいけないもの、商品の大量生成

 これは、一気に作ればなんということはない。

 在庫の置き場にしても、何しろ小さいものだからそれほど大きな倉庫は必要ない。


 そして、常時販売する店員の問題だ。

 これは信用がおける人でないといけない、わたしはここに常駐するわけにはいかないのだ。

 いわゆる番頭さんがいてもいいのかもしれないが、管理人的な人材は必要だ。


 店の確保はグラントール公爵のバックアップがあるのだから問題にはならない。

 これだけは、唯一というほど安心できる要素だ。


 わたしは、思案しながらクレオスペリアの街を散策していた。

 街並みの雰囲気が違うだけで、産業都市というわりには綺麗な街だと思った。


 わたしはいっそ商品作って卸すだけで、グラントール公爵に売ってもらおうかなどという不届きな考えを持ち始めていた。

クレオスペリアの街にも拠点を築いたのだが、解決しなければならない問題は増える一方だった。

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