表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/23

~ 叡智の書庫 ~

やっと、王宮の図書室に行くことができます。

 いろいろな事が一度に起きて、わたしは王宮の図書室に行くことができなかった。

 今度こそ、王宮の図書室へ行こう。


 再び王宮へ向かうと、門番がギルド証の提示のみで通してくれる。

 これは星刻になってからというもの、日常になるので慣れるしかない。

 門番は、相変わらず人間族しか見たことないよね。


 相変わらず入口の庭園は奇麗だね・・・

 はっとして、周りを思わず見回してしまうわたしは、傍目からみれば、挙動不審者でしかない。

 さすがに毎度、王妃様に会うことはなさそうだよね。

 胸をなでおろし、いよいよ図書室へ向かう。


 王宮へ入って、入り口付近にいる、警護兵にギルド証を見せて図書室へ行きたいと伝えると、案内を呼ぶからここで待っているようにといわれた。

 しばらくして、白い杖を持った事務方っぽい人が来てくれた。白杖官(はくじょうかん)というらしい。


 案内人とはいえ、王宮内なのでとても静かに案内をしてくれた。

 図書室の入り口に立つと、ギルド証を掲げるように言われたので従うと、白い杖を掲げ何やら魔術的な呪文のような言葉を並べた。


 それは一瞬の出来事だった。私は図書室の入り口にいたはずだったが、今は中にいる。

 恐らくさっきの呪文のようなものとギルド証が反応してここへ転送?されたのかもしれないと思った。

 こんな魔術的な仕組みだとやっぱり、星刻のギルド証にも何か仕掛けがあって、反応するんだろうね。

 ランクが下の人が入れない意味がよく分かった気がするよ。


 中を見渡すと、巨大な吹き抜けになっており書棚が壁一面天井近くまで伸びており、壮観な景色だった。

 その巨大さに呆気にとられていると、ツカツカと寄ってくる人がいる。

「いらっしゃいませ。冒険者マサミ様」

 なんだか私のことを知っているみたいだけど、ここは合わせておこうと思う。

「こんにちは」

「私は、ここの司書、モニカと申します。本日はどのような本をお探しですか?」

 確かに、ここを自在に歩き回らせてもらっても、目的の本が見つかる気はしなかった。


 わたしは、当初の目的の”時間の圧縮”に関する本を読みたいと申し出た。

 「時間の圧縮ですか、少々お待ち下さい。」

 モニカはカウンターの奥へ調べに行ってくれたらしい。


「お待たせしました。あの棚の上から2段目に”時間の圧縮に関する考察”という本がございます。また、関連する書籍も同じような所に置かれていますので、自由に閲覧下さい。」

 そう指さした先はそれこそ天井まである書棚だった。

「マサミ様は空中移動魔法はお持ちですか?」

 わたしは、風魔法で自身を飛ばせるので問題ない。

「はい、大丈夫です。」

「これは、ここでの注意事項ですが、滅多に起きることではありませんが、書物を棄損した場合、その重要度に応じてペナルティがございますので、くれぐれも丁寧に扱って頂けるようお願いします。」

 あ、万一間違って魔法でドカンとかすると、ダメなやつだね。

「分かりました、気を付けます。」


 早速、風魔法で自身を飛ばすと、その書棚の付近にあるテラスのようなところにたどり着いた。

 あとで聞いたのだが、移動手段を持たない場合、司書が持ってきてくれるらしい。


 上から2段目だったよね。ふとその時、革表紙の背が光っているように見えた。


 なんとなく気になった一冊の本、革表紙で表紙には何も書かれていない本を手にとり、表紙を開いた。


 急に周りの景色が白い(もや)の中にいるような不思議な場所にいた。

 何も見えないが視界が開けてくると、突如現れた人のようで人ではない、影のような煙のような、そんな存在が目の前にいる。

「よくここまで辿り着いたじゃないか。」

 飄々(ひょうひょう)とした声が聞こえてくる。聞こえてくるというより、頭の中に響いてくる感じ。


「あなたは誰?」

「誰でもあり、誰でもない、ここに存在していて、どこにも存在しない」

 掴みどころがない。


「さっき辿り着いたと言っていたけど、それはどういう意味なの?」

「ここが君の始まりであり、終わりにあるからさ」

 何を伝えたいのかさっぱり分からないけど、多分伝えるために来たんだと思う。


「よく分からない、もっと分かり易く話してくれないの?」

「人の身でありながらここへたどり着く事のほうが驚異的な出来事だからね。理解できているのか、いないのかなんて分からないさ」

 どちらも互いに何かを理解できてないってことなのかな


「ここはどこなの?」

「どこでもあるし、どこでもない」

 全く理解が追い付かない。


「きみは、ここから何かを学ぶかもしれないし、学ばないかもしれない」

 教えてくれるって訳ではないようだね。

「自分で掴み取れってこと?」


 その後の返答はなく、揺らぐように薄くなりながら消えていった。

 わたしは、元居た図書室の本棚の前に戻ったが、手に持っていた本は消えていた。


 自分で掴み取るのかと言った後に消えてることから、わたしは何かを掴んだのか、これから掴むのかという程度には絞れたんだと思う。


 わたしは、さっきから妙な感覚がある。図書室を見渡すと人が移動したり動いている様子がないような気がした。

 図書室に入ってきたばかりの時は、静かではあるが、人の動きがないということはなかった。


 少し不安になり、司書のモニカさんの所へ行った。

「モニカさん、ちょっといいですか?」

 声をかけるが、返事がない。

 モニカさんを見ると、目を開いたまま動いていないみたい。


 どういうことだろう、私だけが動いてる?ほかの人の近くへ行って観察してみると動いてる様子がないよね。


 さらに、周りの人たちを観察して気づいた。動いていないわけではなくて、物凄くゆっくり動いている。

 気づいたのは、ちょうど本のページをめくりかけてた人の手がほんとにゆっくりだけど、ページとともに変化していたので気づけた。

 もしかして、わたしは既に何らかの時間操作をしてしまったか、巻き込まれたということになる。

 この状態では、みんなから動いてるわたしは見えていない。物凄い速さで動いていることになるから。


 もしかして・・・

 わたしが時間操作してしまったのなら、自分で解除できるんじゃないかな。

 わたしは強く念じた”時間と空間を元に戻して!”


 確かに、効果があったようで、皆が一様に動き始め、図書館に入って来た時の感じに戻っている。


 わたしは、あの無地の表紙の本から時間操作を受け取っていたのかもしれない。

 ここでさっきの状態を再現しようと思ったけど、先ほどの状況をイメージしただけでは実現できないみたい。

 ということは、タイミングよく解除できたかのように見えただけで、わたしは巻き込まれただけの可能性も出てきた。


 もう少し、時間に関する書物を読んでみようと思う。

 先ほどモニカさんに紹介された”時間の圧縮に関する考察”という本を見つけ、手にとった。


 要約するとこうなる


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 時間の圧縮に関する考察

  時間の圧縮とは、すなわち時間と空間の質的変容である。

  時間と空間の経験変容による多角的な考察に基づくものであること。

  離れを(ふせ)ぎ、見回しつつ近づけること


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 一通り読んでみて、なにか、足りなかったピースがはまる感覚を覚えた。

 わたしは、次に、時間を操ることを何らかの方法で確認できるか考えてみたが、単純に時間操作といっても、物理的なもの、たとえば砂時計とかを使ってしまっては、その砂時計そのものに作用させた時間とは別物の魔法の可能性ができてしまうよね。


 わたしは、なにか掴めないかとモニカさんのところで、時間操作の魔法について書物がないか確認することにした。

「時間魔法ですか、残念ですが、時間魔法という分野は確立された記録がございません。」


 時間魔法という分野自体が確立されていないとなると、さっきの現象はやはり、あの消えてしまった書物の影響だったのだろうか。


 わたしは、あの消えた書物の中での会話を考え直してみた。

 ”ここに存在していて、どこにも存在しない”・・・”始まりであり、終わりにある”。まるで点と点を結ぶような言い方。


 わたしは、もっと(はま)るイメージを掴みたかった。


 図書室を出ると、わたしは、白杖官を訪ねた。図書室の入退室に使われているのは時間に関係しているではないかと。

 白杖官の話によると、白い杖がこの図書室との力の相互作用で出入りを可能にしているということだけだった。この転移に近い力はここでしか使えないとも言っていた。

 星刻になった冒険者と、王宮関係者でも、中に入れる人は一部の人たちだけだという。星刻の冒険者でも過去に入れなかった人もいたという記録があるらしい。


 固定された点と点を結ぶことは可能だが、今のところ、あの白い杖と図書室があってのみ成立している。

 星刻に制限されているわけではなく、星刻でも入れない人が存在する。

 最初に感じた星刻のギルド証が入室の鍵になっているというの違っているらしい。

 つまり、あの図書室の存在そのものが、入室を制限しているとみてとれる。


 だとすれば、わたしがあの無名の本と出合ったのはただの偶然ではなく必然だった可能性がある。


 まだ、あの図書室で調べなければならないことがあるようだけど、手掛かりなしで無暗にあの図書室のすべてを端から調べられるほど易しいことではなさそう。

 また何か手がかりがつかめたら来てみようと思う。


 わたしは気持ちを切り替えて王宮を出ると、入り口の庭園でまたしても、王妃様に声をかけられる。

「こんにちは」

「こんにちは王妃様」

「またお茶でもいかがかしら、お話したいこともありますし。」

 まあ、王妃様はとても優しい人だし、仲良くなっていてもいいと思ったので、快く誘いを受けることにした。

結局、手掛かりらしきものに出会えたものの、更なる謎が増えてしまった。

またしても、王妃様に声を掛けられ、何がはじまるのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ