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~ 威厳と尊厳 ~

王都での大任を果たしたマサミは、ついに国王との謁見に臨む。

与えられようとした爵位を辞退し、代わりに求めたのは「知識への道」。

権威の前にひるまず、自らの尊厳を守り抜く姿は、冒険者としての枠を超え、社会的存在としての確立を示すものだった。

権力と個人の信念が交差する。

 翌朝、冒険者ギルドに呼ばれていたので、レルナードの屋敷で朝食を済ませると、ギルドへ向かった。


「おはようございます。セシリアさん」

「おはようございます。昨日はお疲れさまでした。」


 セシリアさんは、ケイトさんとは違った優しい雰囲気のひとだよね。

 馬鹿な連中に厳しいところは一緒だけどね。


「ギルドマスターの部屋へご案内しますね。」

「お願いします」


 ギルドマスターの部屋へ入ると、レスティラントのマスターの部屋より豪華だった。装飾品が豪勢だ。

 やっぱり、ギルド本部ともなると一味違うんだね。


「おお、来てくれたか」

「おはようございます。」

「昨日はお手柄だったな。」

「あ、はい」

 褒められても、私一人の力じゃないし。

「皆さんの協力があったからできたことです。」

「謙遜するな、ロイドの言ってた通りだな。そういえば名乗ってなかったな、改めて俺はここのギルドマスター、ラルフ=セルヴィッチだ、よろしく頼む。」

 ここにも、わたしの個人情報が・・・

 まあ、そうだよね、ギルドなんて横のつながりだものね。


「これは、ギルドからの褒章だ。受け取ってくれ」

 ずっしりとした袋がテーブルの上に置かれた。


「随分多いみたいですけど。」

「そんなことはないさ、本来ならいくつかのパーティ合同で当たるような依頼だ。」

「あの、兵士の方の報酬は・・・」

「そんなこと心配するな。それは全部お前さんの取り分だよ」

 まあ、そういうことなら受け取っておきますか。


 それにしても随分大きくて重いよね。

 ちょっと見てみようかな。

「っひ」

 わたしは、その多さにちょっとビビッてしまった。


「どうした、嬢ちゃん」

 どう見ても大金貨百枚以上入ってるよね、これ

「こんなに貰っていいんですか」

「嬢ちゃんは数パーティ分の働きをしたんだから当然だろ」

 全くこの人は動じてないよね。さすが本部のギルマスってとこかな


「ところでな、今回の件で嬢ちゃんは、白銀の守人に昇格だ、それとな、王様がお呼びだよ」

 いくら国の重要な鉱山だからって、冒険者を呼んだりするのかな。


「なんだ、不満そうだな」

 王様と会うとか、わたし王様相手でも顔出すの嫌だよ。貴族の頂点だよ。

「いや、その、こんな格好で行ってもいいのかなって」

「それなら大丈夫だ、跳ね人になったばかりのいや、白銀の守人なりたてだったな、冒険者だってことは伝えてある。」

 大丈夫って、つまりこのままでいいってこと?

「その仮面もそのままでいいの?」

「ああ、大丈夫だ、なにも取って食おうってわけじゃないんだ。安心して行ってこい。」


 何が安心なんだかわからないよ。


 わたしはしぶしぶ承諾して王宮へ向かうことになった。


 わたしは、歩いて城の門のところまで来てしまった。

 やっぱり帰ろうかなって思った時、門兵が何用かと尋ねてきた。

「冒険者のマサミです。王様に呼ばれてきたんだけど。」

「今、確認する。」

 やっぱり厳格だよね。

 門兵は二人とも人間族だね。


 しばらくすると、門兵の一人が戻ってきた。

「失礼しました、マサミ様お入りください。」

 あ、急に態度変わったね。

 なんだろ、やっぱり王様に呼ばれてるってだけで、賓客みたいな扱いになるのかな。

 ま、いいや。


 王宮広いよね。そういえば、レルナードも王宮にいるんじゃなかったけ。

 わたしが、ポコポコ歩いてる横を馬車が通り過ぎていった。


 その馬車は王宮の前で止まると、なんか偉そうな太った如何にも貴族って感じの人が降りて中へ入っていった。

 わたしは、マイペースで歩いていく。


 王宮の入り口って、手入れされてて、綺麗な花が沢山咲いてるよね。

 そんなこと思いながら、景色を楽しんで歩いていた。


 こんなにきれいな花が沢山咲いてるのに誰も見てないんだね。もったいない。

 こんなところでお昼寝したら気持ちよさそうだよね。

「あー王様なんかに会うより、お昼寝したいなー」

 つい口をついて出てしまった。


「あら、陛下にお会いするのはそんなに嫌かしら」

 え、誰、今の聞かれたの、やばいやばい・・・

「こんにちは」

 え、すごい綺麗な人

「こ、こんにちは」

「その恰好、冒険者のマサミさんね」

 わたしのこと知ってるんだ。

「は、はい」


「お昼寝も素敵ですけど、陛下にお会いになってからでは駄目ですか?」

「あ、いえ、会います、会いに行ってきます、失礼します。」

 わたしは急いで王宮へ向かった。

 あーびっくりした。誰もいないと思って油断しちゃったよ。

 それにしてもとっても綺麗な人だったなあ。


 いよいよ、王様と対面だね。

「冒険者、白銀の守人、マサミ様ご到着です。」

 警備兵が謁見の間の外から大きな声で言う。

 あーもしかして、王様の謁見に箔がないのはまずいから、急遽上がっちゃったのかな。ま、いいか。

 もっとも、跳ね人じゃ、かたなしだよね。


 王様の数メートル前で止まって、たぶんこういう時は、片膝をついて、頭をさげておけばいいんだよね。

 で、えっとなんだっけなんか言えって言われてたよね。

「冒険者、マサミ、召喚に応じ、参上(つかまつ)りました。」

 多分あってるよね。


「マサミと申したか、堅苦しい挨拶は良い、(おもて)を上げよ。」


 わたしはゆっくり顔をあげると、王様の横にとてもにこやかに小さく手を振っている、多分お妃様。

 あーさっきの綺麗な人。えーわたし、とんでもないことをしたんじゃ。

 でも笑顔だし、その笑顔の下で殺してやるなんて思ってないよね。


「マサミよ、今回の鉱山での働き、実に見事だった。此度の鉱山は我が国の重要資源でもある。それを守ったことは、叙勲に値するものだ。そこでじゃ、男爵、女男爵の地位を授けるものとする。」

 え、あ、貴族の称号なんて欲しくないよ。貴族同士の醜い争いに巻き込まれたくないよー。


「お、恐れながら、わたしは、貴族のしきたりも、心得もございません。ましてや、今回のこと、兵士の皆さんの働きがあってのこと。その爵位はその兵士の方々にこそお与えになるものだと思います。」

「そちは、爵位を拒むと申すのか。」

「は、はい、大変恐縮ですが・・・」

「はっはっは、自身を(おご)らず、他者を持ち上げる。実に天晴(あっぱれ)な心意気。そちこそ、わが国に貢献すべき人材そのものじゃ、どうじゃ、今一度爵位を受けてはくれぬか」

「も、申し訳ございません」

 爵位なんかもらったら、わたしの巻き込まれ体質が思いっきり発動するよー。


「陛下、そこまで無理強いするものではありませんよ」

 お妃様、グッジョブです。わたしは心の中でお妃様に親指を立てた。

「そうか、では、他に何か望みのものはないか、遠慮なく申してみよ」


「恐れながら、陛下、わたしに、王宮の図書室の閲覧許可をいただけないでしょうか。」

「なに、そんなことで良いのか」

 そのとき、お妃様が国王に耳打ちした。


「そうか、図書室の閲覧許可は、冒険者だと星刻が必要だと申すか。」

「陛下、規則は規則でございます。」

 あーそうだったよね、白銀の守人じゃ無理だよね。


「ならば、ここに国王たるオルフェリウス・ラティーナ五世が宣言する。冒険者マサミを第五階層、星刻と認め、図書室の閲覧許可とする。」

 えーそんなのありなんですかー

 わたしは思わず、声がでそうになったが、なんとか堪えた。

挿絵(By みてみん)

「ありがたく、お受けします。」

 もう、どうにでもなれだね。

 爵位は回避したからいいでしょ。


 それから、ここでも金一封を受け取り、謁見の間を出ると、廊下でレルナードが腕組みをしながら待ち構えていた。

「お疲れ様、ロイドから聞いてはいたが、まさか星刻に本当になっちまうとはな。」

「成り行きですよ。」


「でもなんで、男爵は断ったんだ?名誉なことだぞ」

 貴族が嫌いだなんていえないよー、どう答えろと。

「あ、えっと、わたしには荷が重いと言いますか・・・」

「まあいい、ただ星刻ともなれば、王国はますますマサミさんを手放すわけにはいかなくなったってことだからな」

 そんな意味深な事言われたって・・・


 わたしは、ギルドへ戻ると、セシリアさんが出迎えてくれた。

「マサミさん、星刻昇格おめでとうございます。」

 自分ごとのように喜んでくれるんですね。

「ありがとうございます」

「正式なギルド証の発行は一週間後になります。」

「更新ですまないんですか?」


 そこへギルマスのラルフがやってきた。

「当たり前だろ、星刻がどれだけ重要な人材か分かるか?星刻のギルド証っていえば、王宮すら顔パスだぞ。そこらのギルド証と一緒にするな」

 わたしこれからどうなるんだろ。

 そんなことを考えていると、セシリアさんが耳打ちしてきた。

「マサミさん、これからは、あなたに無暗に絡んでくる人は居ませんよ」

 まあ、絡まれなくなるだけでもいいか。


「それと、星刻になったことは国中に知らせが入りますので、そのつもりで」

 え、わたし国中に知られちゃうの??


爵位を拒み、星刻として認められたマサミは、王国全土にその名を知られる存在となった。

それは名誉であると同時に、逃れられぬ責任の始まりでもある。

権威に屈せず、知識を求める道を選んだ彼女の姿は、尊厳を守る強さを示した。

しかし同時に、国中に名が広まることで、彼女の歩む道はますます大きな渦へと巻き込まれていくのだった。

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