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夏の記憶

作者: Asyth

蝉の声が、アスファルトの照り返しで熱気を帯びた空気を震わせていた。

マンションの窓から見えるのは、いつもと変わらない灰色のビル群。


中学二年生のユウタにとって、夏休みの中でもお盆の期間は憂鬱でしかなかった。

ユウタの家では、毎年お盆期間は、地方にある母親の実家へ10日間ほど帰省する。


小学生の頃は、そこに行けば祖父と一緒に川で遊んだり、虫取り網を片手にカブトムシやクワガタムシを捕まえたりと、無限に広がる冒険の日々で、毎年行くのを楽しみにしていた。


でも、中学に上がってからは、そんな衝動は薄れ、スマートフォンの小さな画面がユウタの世界のほとんどを占めるようになった。


「ユウタ、いつまでゲームしてるの?いい加減準備しなさい!」


リビングから母の声が飛んでくる。ユウタはイヤホンを外し、ため息をついた。今日から母の実家、つまりユウタの祖父母が暮らす田舎へ行くことになっている。

父親は仕事のため、一緒には行かず、ユウタと母が帰る2〜3日前に車で来てもらうことになっていた。


「だって、田舎なんて何もないじゃん。電波だって悪そうだし、ゲームもまともにできないでしょ? だから今のうちに遊んでたんだよ」


そう言いながらリビングに入っていくと、母は旅行用の大きなバッグに衣類を詰め込みながら、呆れたようにユウタを見た。


「何もないって言うけど、ユウタが小さい頃はあれだけ喜んでたでしょ。それに、おじいちゃんがユウタに会いたがってるのよ。少しは顔を見せてあげなさい」


祖父がユウタに会いたがっているというのは、半分は本気で、半分はユウタを連れて行くための口実だろう。


ユウタは祖父のことが嫌いなわけではない。むしろ、幼い頃は祖父に魚の釣り方や虫の捕り方を教わったり、祖父の語る昔話に目を輝かせたものだ。

しかし、いまのユウタにとって、それらは全て過去の、子どもっぽい思い出でしかなかった。


ユウタと母は、新幹線や在来線を乗り継ぎ、さらにローカルバスに揺られ、家を出てから数時間が経った。

窓の外の景色は、田んぼと里山へとゆっくりと変わっていった。


ユウタはスマホのバッテリー残量を気にしながら、ダウンロードしておいた漫画を読んだり、SNSをチェックしたりしていた。


しかし、いくつかバス停を過ぎたあたりから、圏外になることが増え、最終的にはほとんど電波が届かなくなった。


「あー、最悪……」


ユウタはスマホの画面をタップするのを諦め、窓の外に目をやった。

バスは曲がりくねった山道を進み、

周囲は鬱蒼とした森に囲まれている。時折、古びた民家が点在しているのが見えるが、人の気配はほとんどない。


バス停で降りると、祖父が軽ワゴンで迎えに来ていた。祖父の顔はシワが増え、少し小さくなったように見えたが、その笑顔は昔と変わらず優しかった。


「ユウタ、よく来たな!大きくなったもんだ」

「じいちゃん、久しぶり」


祖父の軽ワゴンは、ユウタが幼い頃に乗った記憶のまま、独特の揺れとエンジンの音を響かせた。

車窓からは、見慣れない風景が流れていく。どこまでも続く畑や田んぼ、うねるようにそびえる山々、そして、ひたすらに青い空。


都会の喧騒とはかけ離れた静けさが、ユウタの心をわずかに落ち着かせた。


祖父母の家に着くと、祖母が冷たい麦茶と手作りの菓子で迎えてくれた。懐かしい香りと、都会では味わえないゆっくりとした時間が流れる。

それでも、ユウタの心には常に、ゲームやSNSから隔絶された寂しさがまとわりついていた。


「ユウタ、明日はじいちゃんと一緒に裏山にでも行ってみるか? カブトムシでも捕まえてやろう」


夕食の席で祖父がそう尋ねると、ユウタは曖昧な笑みを浮かべた。


「うーん…… いいや。 もうカブトムシは飼うの大変だから…」


祖父は何も言わず、少し寂しそうに微笑むだけだった。ユウタは、祖父の優しさに申し訳なさを感じながらも、昔のように虫取りに夢中になれない自分をもどかしく思っていた。



次の日は、祖母の家事や、祖父の畑仕事を手伝ったりもしたが、それもすぐに終わって飽きてしまった。


近くにコンビニもなければ、遊ぶ友達もいない。スマホは繋がっても電波が弱く、動画もまともに見られない。ユウタは完全に時間を持て余していた。


あまりにも退屈で、ユウタは一人で散歩に出かけることにした。目的もなく、ただあてもなく歩く。


祖父母の家の裏手には、深い森が広がっていた。小さい頃から祖父に連れられて、何度も森の中に入った記憶がある。その時は、木々の隙間から差し込む光が神秘的に見えたり、土の匂いや鳥のさえずりが新鮮に感じられたりしたものだ。


しかし、今のユウタにとっては、ただ鬱蒼とした木々の塊に過ぎない。

暑かったし、他にすることもないので、ユウタは森の奥にある小さな川へ行くため、森の入り口へと足を踏み入れた。


一歩、森の中に入ると、ひんやりとした空気が肌を包み込んだ。蝉の声が響き渡り、風に揺れる木々の葉が、ざわめくような音を立てていた。

舗装された道はなく、獣道のような細い踏み跡が続いている。ユウタは以前、何度も祖父と歩いたその道を進んでいった。


しばらく歩くと道が二手に分かれていた。

一方は坂になっていて、もう一方はまっすぐ平坦な道だった。


「…そういえば、じいちゃんいつも坂を登って川に行ってたけど、まっすぐ行ったほうが近いんじゃないかな?」


かろうじて電波が入ったので、時間をかけて地図アプリを開いた。

やはり、このまま進んだ方が川へは近道だった。


「なんだ、やっぱりこっちの方が近いじゃん。何でわざわざ坂を登って行ったんだろう…?」


不思議に思いながらも歩いた。今まで通ったことのないその道は、危険なわけでも歩きにくいわけでもない。


道の両脇には人の背丈ほどもあるシダが生い茂り、さらに奥へと誘うように続いている。ユウタは、ふと立ち止まった。急に森の木々が開けた場所に出て、古びた鳥居が見えたのだ。


朱塗りの鳥居は、長い年月を経て色が褪せており、その一部は腐って欠けていた。そして、その奥には、小さな(やしろ)がひっそりと佇んでいた。


「こんなところに神社が……」


ユウタは好奇心に引かれ、鳥居をくぐった。社は手入れされている様子もなく、静かに朽ちていくのを待っているようだった。ユウタは社の周りをぐるりと見て回った。特に珍しいものは何もなかった。

別に信心深いわけではないが、なんとなく、壊れかけた社に一礼すると、川へ向かうことにした。


少し歩くと川に出た。


近ごろは猛暑のせいで、水かさが減っているようだったが、足を浸して涼むには十分だった。


「ふぅ、冷たくてきもちいいな」


裸足になり川に入った。水の冷たさと砂利の刺激が心地良い。


足が冷たくなってくると、川の中ほどにあった、大きな岩の上に寝転んだ。

耳には、無数のセミの音、時折聞こえてくる鳥の鳴き声、そして川のせせらぎが聞こえていた。


「…………」


ユウタは目を閉じて、都会では味わうことのできない大自然に浸っていた。そして帰り際には、明日もまた来ようかなと思った。


ユウタは、次の日も、その次の日も同じ道を通って川へ向かった。

特に何かを願うわけでも無いが、神社の横を通った時は、社に一礼していた。



そんなある日、いつものように川へ行く前に神社に寄っていた時


「あんた、こんなところで何してんの?」


背後から、不意に少女の声が聞こえた。


ユウタはハッと振り返る。そこに立っていたのは、ユウタと同い年くらいの少女だった。

白いワンピースを着ていて、長い黒髪が風に揺れていた。顔立ちも整っていて、大きな瞳が印象的だ。


ユウタは一瞬、言葉を失った。こんな森の奥で、自分と同じくらいの年頃の少女に出会うとは予想していなかったからだ。


「えっと……散歩」


ユウタがそう答えると、少女はくすっと笑った。


「散歩?こんなとこまで?」

「うん。暇だから川に行こうと思って…… 君こそ、こんなところで何してるの?」


少女はにこやかに答えた。

「私はサヤカ。こういう田舎の面白そうなところを見て回るのが趣味なんだ」

「面白そうなところ?」


ユウタは思わず聞き返した。この寂れた社が面白そうだというのだろうか。


「うん。この神社、地元じゃ結構有名なのよ。昔、ここで奇妙なことがあったって噂されてて」


サヤカはそう言って、社の奥に目をやった。ユウタは、急に背筋がぞくりとした。確かに、この場所にはどこか薄暗い、湿った雰囲気が漂っているような気がする。


「まあ、私は全然怖くないけどね」


サヤカはそう言って、いたずらっぽく笑った。その笑顔は、ユウタの抱いたわずかな恐怖を打ち消すほど明るかった。


「で、あんたは?」

「俺はユウタ。横浜からじいちゃんちに来てるんだ」

「へえ、横浜なんだ。都会から来たんだね」


サヤカの言葉に、ユウタはどこか違和感を覚えた。都会から来た、という表現が、まるでユウタが別世界の人間であるかのように聞こえたからだ。


「サヤカはこの辺りに住んでるの? 」

「ううん、住んでいるのはもっと遠いところ。近くに別荘があるから家族と来てるだけだよ」


サヤカは自分がどこから来たのかハッキリとは言わなかった。初対面の女の子に住所を詳しく聞くのは失礼だと思い、ユウタは話題を変えた。


「ここらへんって、電波もほとんど届かないし、することなくてさ。退屈じゃない?」


ユウタはそう言って、ポケットからスマホを取り出し、画面を見せた。サヤカはユウタの手元をじっと見つめた。


「それ、何? ゲームボーイ?」


サヤカのその言葉に、ユウタは驚き目を丸くした。


「え?ゲームボーイって…… これはスマホだよ。知らないの?」


サヤカは首をかしげた。


「うーん…… 見たことないかも。これどうやって使うの?」


ユウタは驚いた。ゲームボーイというのは、任天堂の昔のゲーム機であることは、最近YouTubeで見た解説動画で知っていた。

いまどき、スマホとゲームボーイを間違える中学生がいるだろうか。

それはまるで、タイムスリップでもしてきたかのような反応だった。


「ホームページ見たり、ゲームしたり、あと、友達とメッセージのやり取りとかできるんだけど、本当に見たこと無いの?」


ユウタは操作方法を教えようと、簡単なゲームアプリを起動して見せた。サヤカは興味深そうに画面を覗き込んだが、やはりよく分かっていないようだった。


「ふうん…… でも、何だか難しそう」


サヤカはそう言って、少し残念そうに顔を曇らせた。ユウタは、スマホにまったく触れてこなかったサヤカに、新鮮な驚きを覚えた。同時に、少しだけ、優越感のようなものも感じた。自分が知っている世界を、サヤカは知らないのだと。


二人は、その場でしばらく立ち話をした。サヤカは、ユウタが知らない昔の遊びや、この地方に伝わる奇妙な言い伝えに詳しく、ユウタは彼女の話に引き込まれていった。


例えば、『この森には、特定の季節になると現れる“隠れ里”があって、そこには時間の流れが違うらしい』とか、『夜になると、森の奥から笛の音が聞こえてくるけれど、それは決して近付いてはいけない』など、まるで絵本に出てくるような話ばかりだった。


ユウタは、サヤカの話すことが本当にあったことなのか、それとも単なる作り話なのか、判断に迷った。しかし、サヤカの真剣な表情と、透き通るような瞳を見ていると、まるで彼女の語る世界が目の前に広がっているかのように感じられた。


「あんたも、この場所のこと、もっと知るといいよ。面白いことが分かるかもね」 


サヤカはそう言って、にこりと微笑んだ。ユウタは、サヤカとの会話が、退屈だった田舎での生活に、思わぬ彩りを与えてくれたことに気づいた。


日が傾き始め、森の奥が薄暗くなってきた。


「そろそろ帰らないと、お母さんが心配するから」 


サヤカがそう言って、踵を返そうとした。


「また、明日も会える?」


ユウタは思わず尋ねた。サヤカは振り返り、満面の笑みで頷いた。


「うん。じゃあ、また明日のこの時間、この場所でね!」


サヤカはそう言い残し、あっという間に森の奥へと消えていった。ユウタは、その場にしばらく立ち尽くしていた。どこか現実感のない出会いだったが、ユウタの心には、不思議な高揚感が残った。


祖父母の家に戻ると、祖母が心配そうな顔でユウタを迎えた。


「ユウタ、どこに行ってたの?もう夕飯の時間だよ」

「ちょっと森を散歩してた」

「森は危ないから、あまり奥まで行っちゃダメだよ。特にあそこらへんは……」


祖母は何か言いかけたが、途中で言葉を飲み込んだ。ユウタは、祖母の言葉に何か引っかかるものを感じたが、深くは考えなかった。


その夜、ユウタはなかなか寝付けなかった。

サヤカとの出会いが、頭の中をぐるぐる巡っていた。

スマホを知らない少女。伝承や民話が好きな少女。そして、昔話のような不思議な話をする少女。サヤカの存在は、ユウタの日常に、これまでなかった刺激を与えていた。 




翌日、ユウタは約束の時間よりも少し早く森へ向かった。昨日サヤカと出会った神社に着くと、まだ彼女の姿はない。ユウタは、サヤカが本当に来るのか、少し不安になった。しかし、約束の時間ちょうどに、サヤカは森の奥から姿を現した。


「お待たせ!」 


サヤカはいつものように白いワンピースを着ていて、笑顔が輝いていた。ユウタはホッと胸を撫で下ろした。


その日も、二人は社の周りで他愛もない話をした。サヤカは、この近くの遺跡や、珍しい植物や虫について教えてくれた。ユウタは、サヤカが話すことすべてが新鮮で、興味深かった。


そして喋り疲れて一息ついていたとき、サヤカは、歌を口ずさんだ。

それは、よくユウタの母親が歌っている、何十年も前の歌だった。


「ずいぶん昔の歌を知ってるんだね」

ユウタが尋ねると、サヤカはきょとんとした顔で言った。


「えっ、最近の歌でしょ。だってこの前CD出たばかりだよ」

「CD…? CD買って音楽聴いてるの?」

「うん、そうだけど。ユウタはCD買ったことないの?」


ユウタは驚いたように言った。


「無いよ。音楽はダウンロード販売かサブスクで聴いてるから」 

「さぶすく? 何それ? ユウタはシングルCDとか買わないの? 長方形の紙のケースに入ってるやつ」


サヤカは指で空中に細長い四角形を書いた。

しかし、CDというものは幼児向けの本や英語の本などに付いてる物しかイメージに無く、ユウタには全く想像もできなかった。


「ところでユウタは、普段どんなことして遊んでるの?」


サヤカが尋ねたので、ユウタはスマホのゲームや動画、友達と行くカラオケ、ファストフード店の話をした。

サヤカは目を輝かせながら、一つ一つの話に耳を傾けた。特に、スマホのゲームの話になると、まるでSF映画でも聞いているかのように目を丸くしていた。


「へえ、そんな小さなゲーム機みたいなので、いろんなことができるんだね。すごいなぁ」

「ゲーム機ではないけどね… まぁゲームしてることが大半だけど」


サヤカはスマホを不思議そうに見つめた。ユウタは、サヤカの反応を見ていると、まるで自分が未来から来た人間であるかのような錯覚に陥った。


それから毎日、決まった時間に、ユウタは森の中の社へと向かった。サヤカはいつも、約束の場所に現れた。二人の会話は尽きることがなかった。ユウタは、サヤカとの時間が、この退屈な夏休みの中で、唯一の楽しみになっていた。サヤカもまた、ユウタとの会話を楽しんでいるようだった。


「ユウタと話してると、時間が経つのがあっという間だね」


サヤカがそう言うたびに、ユウタの心は温かくなった。

ある日、ユウタはサヤカと家族が泊まっているという別荘の場所を聞いてみたこともあった。


「どの辺に泊まってるの?」

「えーとね、国道の橋を渡ったところを左に曲がったちょっと奥の方。あんまり人が来ない場所だよ」


そう答えて、木の枝で地面に地図を書いた。ユウタは、家族とゆっくり過ごす時間を邪魔しちゃいけないと思い、尋ねる気は無かったが、一応スマホのカメラで地図を撮影した。

 


次の日、サヤカと会ったとき。サヤカは大きくて分厚いスマホのようなものを持っていた。


「え、スマホ買ってもらったの!?」

「まさか、ユウタが持ってるような物なんて、私買えないよ」


サヤカはクスクスと笑いながら答えた。

よく見ると、それはスマホではなく、ボタンの付いた携帯ゲーム機、ゲームボーイだった。


「ユウタがゲームボーイ見たこと無いって言うから、持ってきたよ。ほら、ソフトもあるよ」


そう言って、サヤカは小さなポシェットの中からゲームボーイのソフトをいくつか取り出した。


そのほとんどは、ラベルの絵とタイトルからはどのようなゲームなのかも想像もつかなかった。

その中で、マリオのゲームを見つけると手に取った。


「マリオもあるんだ」

「あー、これ結構難しいよ」

「マリオなら得意だから。あと、それ以外は知らないゲームだし…」


サヤカはソフトをゲームボーイに挿すと、電源を入れた。


「はい、どうぞ」

「う…うん」


最初は白黒の画面と、2Dの横スクロールアクションに戸惑ったユウタだが、少しすると夢中になって、童心に返ったかのように楽しんでいた。


「あーまたやられた! これ難しくない!?」


ステージ2の中盤辺りまで行ったところで、ゲームオーバーになり、ゲーム機をサヤカに返した。


「ユウタ、意外と反射神経いいんだね!」

「そう? 普通だと思うけど」

「私はステージ1のボスまで行けなかったもん」


サヤカに褒められ、ユウタは少し照れた。

サヤカと過ごす日々は、ユウタの心をゆっくりと解き放っていった。都会で凝り固まっていた心が、澄んだ森の空気と、サヤカの笑顔によって、少しずつ柔らかくなっていくのを感じた。ユウタは、このまま夏休みが終わらなければいいのに、とさえ思うようになった。



しかし、永遠に続くものはない。楽しい時間は、いつもあっという間に過ぎ去るものだった。


ある日の夜、ユウタは酒を飲んでいる祖父に、なぜ川へ行く時に坂を登って行ったのか、と聞いてみた。

祖父はユウタの言葉に、少し顔色を変えたように見えた。


「確かにまっすぐ道を行った方が早い。でも、あそこは……あまり近づかない方がいい場所なんだ」


祖父はそう言って、遠い目をした。


「なんで? 何かあったの?」


ユウタがそう尋ねると、祖父は複雑な表情で頷いた。


「今から30年前に…… いや、なんでもない。忘れてくれ」


祖父はそれ以上語ろうとしなかった。ユウタは、祖父の言葉がどこか引っかかったが、サヤカと会っている事を知られたくなかったので、それ以上聞くのはやめておいた。


その夜、ユウタは微かな胸騒ぎを感じた。祖父の言葉が、妙に気になったのだ。そして、サヤカがスマホを知らないこと、今は売られていない古いゲームを持っていること、どこか時代錯誤な言動をすること。


それらすべてが、頭の中で繋がり、一つの小さな不安の種となった。



翌日、ユウタはいつものように社へ向かった。しかし、約束の時間になっても、サヤカは現れなかった。ユウタは少しだけ待ってみたが、サヤカの姿は見えない。


「サヤカ?」


ユウタは声を張り上げてみたが、返ってくるのは風に揺れる木々の音だけだ。まさか、何かあったのだろうか。


ユウタは不安になり、以前サヤカが地面に描いた地図の画像を頼りに、サヤカが泊まっているという別荘を探すため、少し離れた場所まで足を延ばしてみた。


地図とサヤカの言葉を頼りに、ユウタは道を歩いていた。

そして別荘があると言っていた場所まで来た。

そこには、鬱蒼と茂る木々の奥に、確かに一軒の家があった。


近付いてみると、その家は窓ガラスはほとんど割れていて、壁には一面に蔦が絡まっている。入口のウッドデッキも朽ちかけて苔が絨毯のように広がっており、とうてい人が住めるものではない。


それは人が住まなくなって何十年も経った廃墟だった。


ユウタは呆然と立ち尽くした。

時間だけが過ぎていく。ユウタの心は、徐々に焦燥感に満たされていった。もしかしたら、ここに泊まっていると言ったのは何かの間違いで、サヤカはもう帰ってしまったのだろうか。それとも、何か事故にでもあったのだろうか。


ユウタは、日が傾き、影を長く伸ばし始めた頃、諦めて祖父母の家へと戻ることにした。


家路を急ぐユウタの心は、重く沈んでいた。サヤカが、突然姿を消してしまったのだ。



「ただいま」


祖父母の家に帰ると、祖父が心配そうな顔でユウタを迎えた。


「ユウタ、どこまで行ってたんだ? もう暗くなってきたから心配したぞ」

「うん。ちょっと森に……」


ユウタは、消え入りそうな声で答えた。祖父は、ユウタの顔を見て、何かを感じ取ったようだった。そして、静かにユウタの様子を見守っていた。


その日の夜、夕食の後、祖父がユウタに声をかけた。


「ユウタ、ちょっといいか?」


祖父は、ユウタを縁側へと促した。ひんやりとした夜風が、火照った体を冷やした。


「今日、森の奥の神社に行ったのか?」


祖父の問いに、ユウタは頷いた。


「うん。ちょっと何があるのか気になって」


祖父は、静かにため息をついた。その表情は、どこか悲しげだった。


「ユウタ……お前が行ったその場所、その神社のあたりでな……30年前、事件があったんだ」


ユウタは、祖父の言葉に姿勢を正して耳を傾けた。胸のざわつきが、確かなものへと変わっていく予感がした。


「30年前、ちょうど今と同じお盆の頃に中学生の女の子がな……そこで殺されたんだ」


祖父の言葉は、雷に打たれたような衝撃をユウタに与えた。殺された少女。森の中の社。そして、突然姿を消したサヤカ。点と点が、ゆっくりと線で繋がっていく。


「……ねぇ、その子ってさ、この辺りに住んでた子なの?」


ユウタは恐る恐る尋ねた。

祖父は首を振った。


「いや、その子は親御さんと来ていて、近くの別荘に泊まっていたと聞いている」


祖父の言葉が、ユウタの頭の中で反響した。中学生の女の子。別荘。そして、森の中の神社。

ユウタの脳裏に、サヤカの姿が鮮明に浮かび上がった。スマホを知らないと言ったこと。昔のことをまるで今のように話すこと。


そして、いつも同じ白いワンピースを着ていたこと――


まさか……。


ユウタの背筋を、冷たいものが駆け上がった。サヤカは、30年前に殺された少女だったというのか。


「……明日も朝早いから、もう寝るか。それじゃあお休みな」


祖父はそう言って、部屋を出ていった。ユウタは、言葉が出なかった。ただ、頭の中は混乱と恐怖でいっぱいだった。



その夜、ユウタは一睡もできなかった。サヤカの笑顔が、脳裏に焼き付いて離れない。もし、本当にサヤカが幽霊だったとしたら……。


ユウタは、信じたくない気持ちと、現実を受け入れざるを得ない気持ちの間で揺れ動いていた。


布団の中で回線速度の遅いスマホを時間をかけて使い、30年前の事件について検索した。

しかし、まだSNSも無い時代の事件なので、有力な情報は何一つ得られなかった。


ユウタはスマホを置き、真っ暗な天井を眺めた。

もう何もサヤカに関する手がかりは見つからないのか。


そう思った時、ふと数年前の事を思い出した。


祖父と一緒に、ここの地域の公民館へ行った時の事だった。

そこには図書室があり、その中の一角には、過去何十年分もの地方新聞が印刷された大きな本が何冊もあった。

そこで祖父は『ほら、これがユウタの産まれた日の新聞だぞ』と言って見せてくれた記憶があった。


「……そうか、あそこに行けば何か分かるかもしれない」


ユウタは僅かな希望と共に、そう呟くと眠りに落ちた。



翌日、公民館の図書室で過去の新聞記事を見た。

30年前の8月のページを1日から順番にめくっていった。


そして8月13日の新聞が載っているページを開いた時、ユウタの手が止まった。


そこには、『神社で少女の遺体が発見される』と大きな見出しで書いてあった。

一人の少女が殺されて、神社の脇で発見された、という内容から始まっていた。


読み進めていくと手が震えだした。30年前の夏、この森で命を落とした少女。


その名前はサヤカだった。


そして、その被害者の写真として写っていたのは、昨日まで会っていたサヤカと同じ長い黒髪に、白のワンピースを着た少女だった。


ユウタは、自分が30年も前に亡くなった少女と出会い、毎日会話をしていたのだという、信じがたい現実に打ちのめされていた。


恐怖よりも、胸を締め付けるような悲しみが大きかった。サヤカが、あの事件の犠牲者なら、どれほど無念だっただろうか。


そしてその記事の終わりの方に、第一発見者として、祖父の名前が書いてあった。


「……じいちゃんが、見つけたのかよ」


これで、全ての辻褄が合った。

サヤカの存在、そして祖父が神社の道を通らない理由。


急に現実感が薄れて軽く目眩がした。

もうここで知ることは何も無い。

ユウタは本を棚に戻して公民館を後にした。


祖父母の家までは、バスで15分くらいだが、何となく歩きたい気分だったので、1時間以上かけて歩いて帰った。


そして、帰る頃には全身汗だくになっていて、家につくなり畳の床に横になった。


少しして、祖父が畑仕事から戻ってきた。

祖父は、ビールの入ったグラスを持ち、ユウタの隣に座った。


「ねぇ、じいちゃん。森の中の神社の事だけどさ…… じいちゃんが第一発見者だったんでしょ?」


祖父はビールを飲むのをやめてユウタに向き直った。


「どうしてそれを知ってるんだ?」

「公民館で過去の新聞を読んだんだよ。そこに、じいちゃんの名前が載っていたからさ」


「………」


長い沈黙のあと、祖父はポツリポツリと語りだした。


「本当にあの事件は辛い事件だった。当時、わしもちょうど同じくらいの年の娘を持つ親として、とてもやりきれない事件だった……」


30年前に12〜15歳だったとすれば、確かにユウタの母親と同じくらいの年齢だ。


「あの日、わしは魚を釣るために川へ行こうとしたんだ。今とは違って昔は魚も多かったから、夏は毎日釣りに行っていた」


ユウタはゴクリと唾を飲んだ。


「そして、いつものように神社の近くにさしかかった時、お社の脇に大きな白い布切れが落ちているのが見えたんだ」

「その布切れって……」

「ああ、近付いて見てみると、女の子の亡骸が着ている服だった。死んで1日くらい経っていたようで、夏の暑さで肌は黒く変色していた。それが真っ白な服を際立たせていた……」


ビールの入ったグラスを持つ手がカタカタと震えている。


「その子は何で殺されたの? 犯人は?」

「犯人はひと月もしないうちに見つかった。その子の父親だったんだ」

「父親が!? 何で!」

「人から聞いた話だと、経営していた会社が上手く行かず、親子で心中しようとしたらしい。それで娘を刺して自分も死のうとしたが怖くなり逃げたそうだ」

「酷い……酷すぎる……」

「あぁ、確かに酷いな…… でも数週間後にその父親も首を吊って亡くなっているところを発見された。遺書から全てが分かったそうだ」


そこまで言うとグラスに残ったビールを一気に飲み干した。


「後で分かったんだが、その女の子は神社から少し離れた所で刺されていたらしい。そして、神社まで這っていき、そこで息絶えた……」


祖父は空のグラスを机に叩きつけるようにドンと置いた。


「前日にもわしはその道を通っていたんだ。もし、その時に気付いていれば……」


そこまで話すと、祖父は目頭を押さえてうなだれた。

ユウタは涙を流す祖父に、それ以上声をかける事もできず、そっと立ち去った。


向かう先は一つしか無かった。



ユウタは、庭から摘んだ白い花をいくつか束ねると、家を出た。

森へ向かう道すがら、足取りは重かった。数日前まで、サヤカと会うのが楽しみで仕方なかったこの道が、今はひどく寂しく感じられた。


森の入り口に差し掛かると、ひんやりとした空気がユウタを包み込んだ。木々の葉がざわめき、まるでサヤカの囁き声のように聞こえる。


ユウタは、小さな社へと向かった。社は、相変わらずひっそりと佇んでいて、その周りには、ユウタがサヤカと過ごした楽しい時間の残像が、まるで幻のように漂っている気がした。


ユウタは社の前に立ち、深く息を吸い込んだ。そして、祖父から聞いた、少女が殺されたとされる場所に、そっと花束を供えた。白い花が、薄暗い森の中でわずかに光を放っているように見えた。


「サヤカ……」


ユウタは、絞り出すような声で呟いた。

父親に刺されて、痛みと苦しみの中、この社まで這っていく間、何を思っていたのだろうか。

込み上げてくる感情を抑えきれず、瞳から熱いものが溢れ落ちた。頬を伝う涙が、土の上に小さな染みを作る。


サヤカとの出会いは、ユウタにとって、退屈な夏休みの中で唯一の光だった。それが、こんなにも悲しい結末を迎えるとは。ユウタは、ただただ、サヤカの魂が安らかであることを願った。


その時だった。


「何してるの?」


背後から、聞き覚えのある声が聞こえた。ユウタはハッと振り返る。心臓が大きく跳ね上がった。そこに立っていたのは、まぎれもないサヤカだった。


だが見た目が違う。


Tシャツにデニムの短パン、それに髪はショートヘアーで少し茶色く染めている。

だけれども、いたずらっぽく微笑む大きな瞳は変わらない。


この前まで、ユウタが森で会っていた、あのサヤカが、そこに立っていたのだ。


ユウタは、あまりの衝撃に言葉を失った。幽霊?それとも、これは夢なのか?混乱と恐怖が入り混じり、ユウタは一歩後ずさった。

サヤカは、ユウタの驚いた顔を見て、くすっと笑った。その笑顔は、あまりにも現実的で、幽霊というにはあまりにも生気に満ちていた。


「そんなに驚くことないでしょ?また会えるって言ったじゃん。あ、髪型が違うから分からなかったかな?」


サヤカはそう言って、短く切り揃えられた髪の先を手で弄った。


「昨日、街に行った時に美容院に行ってきたんだ。あ、ユウタはロングヘアーがお好みだった?」


ユウタは、サヤカの言葉に呆然とした。


「30年前に殺された子の事件、調べたみたいだね。新聞に載っていたあの子と似たような白のワンピースがたまたまあったから、あんたをおどかしてみたの」


サヤカは悪びれる様子もなく、ケラケラと笑った。ユウタは、頭の中が真っ白になった。つまり、幽霊ではなかった?


「スマホを見たことがないって言ったのも、あんたを驚かせるための演技だよ。まさか、本当に信じるとは思わなかったけどね」

「じゃあ、あのゲームボーイは……」

「あぁ、あれは本物だよ。お父さんがレトロゲームマニアでさ、長い休みの時は田舎の別荘に閉じ籠もって古いゲームをやるのが趣味なの。だから少し借りてきたのよ。幽霊が本物のゲーム機まで出せる分けないでしょ」


サヤカはそう言って、さらに笑い声を上げた。ユウタは、拍子抜けしながらも、安堵と怒りが入り混じった複雑な感情に襲われた。


「お、お前……!」


ユウタは、怒鳴りつけようとしたが、声にならなかった。全身から力が抜け、その場にへたり込みそうになる。


幽霊ではなかったという安堵感と、まんまと騙されていたことへの怒り、そして、サヤカが無事だったことへの喜びが、同時に押し寄せてきたのだ。


サヤカは、ユウタの顔が赤くなったり青くなったりするのを見て、さらに楽しそうに笑った。


「ごめんごめん。まさか、あんたがそんなに真剣に信じちゃうなんて思わなかったんだもん。心霊スポット巡りが趣味だから、ちょっとした悪戯心でさ」


サヤカはそう言って、ユウタの前にしゃがみ込んだ。ユウタが供えた花束を見て、少しだけ表情を和らげた。


「もしかして、私のために供えようとしてくれたの?ありがとう」


その言葉に、ユウタはさらに顔を赤くした。


「ち、違うし!たまたま、花が咲いてたから……」


ユウタは慌てて否定したが、サヤカはまたくすくす笑った。


「ふうん。まあ、どっちでもいいけど。でも、あんた、面白いね。まさか、本当に幽霊だと思って、こんなことまでしてくれるなんて」


サヤカはそう言って、ユウタの肩をポンと叩いた。ユウタは、呆れながらも、悪戯っぽいサヤカとの再会に、自然と笑みがこぼれた。


「もう、二度とそんなことすんなよな」

「はいはい。ごめんってば」

「じゃあ、サヤカって名前もウソだったのかよ?」

「あ、それは本物だよ。ただしここで亡くなった子とは字が違うけどね」

「でも…… いくら何でも不謹慎過ぎないか? 30年前に死んだサヤカは――」


それ以上は言葉が出なかった。

サヤカは遠くを見るような目つきで、答えた。


「本当にそうかな?」

「えっ?」

「30年も経ってもう誰からも見向きもされない… そんな場所や思い出に向き合うのって、悪い事では無いと思うけど」

「ま……まぁ確かに」


サヤカはちょうど、ヤサカが亡くなったとされている辺りにしゃがんだ。


「死ぬ直前に何を思っていたのか。今となっては誰も知らないし、知ることもできない。最後にこの神社に向かって、自分を刺した父を殺してほしいと恨んだのか、それとも父を救ってほしいと願ったのか。でも、それを考えることが、供養になるんじゃないかな」


ユウタは何も言えなかった。

サヤカは立ち上がって言った。


「今晩、帰るの。だから、もうしばらく会えないかもね」


幽霊騒動は終わったが、サヤカとの別れは、やはり寂しい。


「でもさ」


サヤカは、ユウタに振り返り、満面の笑みを浮かべた。


「私たち、友達だよ。また会えたら、その時はもっと面白いこと教えてあげる。だから連絡先教えて」


と言ってポケットからスマホを取り出した。


「スマホ…… 持ってるんだ」

「当たり前でしょ! 幽霊じゃないんだから」


ユウタは、その言葉に胸が温かくなった。

お互いに連絡先を交換すると、ようやく目の前のサヤカが実在する人間であるという実感が湧いてきた。


「高校生になったら、日本中の心霊スポットを巡ろうと思ってるんだけど… その時はユウタ、一緒に来てくれる…?」


サヤカは伏し目がちに言った。

それはユウタが初めて見る表情だった。


「もちろん! 行こうぜ! …ってか、サヤカ、そんな顔するんだな」


ユウタがそう言うと、サヤカは赤くなって、「……バカ」と言った。


その後、二人で森を出て国道の近くまで来た。そこにはサヤカが乗ってきた自転車が止まっていた。


「じゃあ、ここでお別れね」

「……うん」


お互いしばらく見つめあった後、サヤカが言った。


「な……何よ! 二度と会えないわけじゃないんだし、いつでも連絡できるんだから、そんな真面目な顔しないでよ! 帰りづらいでしょ!」

 

ユウタは、プッと吹き出すと「やっぱりその方がサヤカらしくていいや」と笑った。


「じゃあね、私帰るわ」


手を振って、自転車に乗ったサヤカは漕ぎ出していった。その姿は、あっという間に木々の間に消え、ユウタの視界から完全に消え去った。


ユウタは、その場にしばらく立っていた。蝉の声がやたらうるさく聞こえる。空を見上げると真っ白な雲が風に流れていた。



そしてしばらくして、帰ろうとした時、スマホが鳴った。

画面を開くと、メッセージが表示された。


『あんたと会った時はいつも白のワンピース着てたけど 毎日洗濯して着てたんだからね 汗臭かったとか言わないでよ!』


ユウタはクスッと笑った。

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― 新着の感想 ―
スマホを手放せない現代のユウタが田舎での退屈な日々に直面しそこでのサヤカとの出会いが描かれているのがとても魅力的でした。特にサヤカがスマホやCDに驚く様子や昔のゲームボーイで遊ぶ姿は読んでいて私までタ…
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