『星の継ぎ手』 ――幼なじみが敵国の巫女になっていた件について。
教室の窓から見える空は、今日も変わらず青かった。
体育の後で汗をかいた背中に制服が張りついて、なんとなく気持ちが悪い。
とはいえ、もうすぐ六月。夏の気配がじわりと忍び寄ってくる時期だ。
俺の名前は、天音流星。十八歳、高校三年。
そこそこ健康、そこそこ成績、そこそこ目立たない。
まあ、どこにでもいる“普通の男子”ってやつだ。
それでも、ちょっとだけ特別なことがある。
俺の隣の席に座っている幼なじみ、星野そら――
「……なんで、星って、消えるんだろうね」
そう呟いた彼女の横顔は、やけに真剣だった。
いつもどおりの放課後、いつもどおりの教室。
だけど、そらがそんなことを言い出すなんて、少しだけ“いつも”と違っていた。
「流れ星の話? それとも星座?」
「ちがう。……もっと大きな意味で。
たとえば、空に浮かぶ“あの星”が、ある日突然、全部消えたとしたら――どうなるのかなって」
冗談みたいな話をする彼女の目は、どこまでも澄んでいて、まっすぐだった。
俺は、なんて返していいかわからず、ただ曖昧に笑った。
それが、“きっかけ”だったのかもしれない。
この世界の裏に隠された、もうひとつの世界。
誰も気づいていない“星の継承”と呼ばれる儀式。
そして俺が――それに巻き込まれる、ほんの数日前のことだった。
空が、軋むような音を立てて、裂けた。
見上げたその瞬間。
俺の右手が、星のように光った。