第八話:新たな仲間を求めて
第八話完成だよっ♪
“アルフヘイム”を目指して出発〜♪
アレックス
「すいません王子!!すっかり忘れてて……」
チャンボ
「なに、気にすることはないよっ♪」
街道に沿って歩を進めるチャンボ一行。
見渡す限り草原が広がり、特に目立つものは何もない道だ。
そんな道をてくてくと歩きながら、アレックスとチャンボは会話していた。
会話の理由はチャンボの持つ“あるもの”にある。
アレックス
「よもやジャンボ王から授けられた無月の存在を忘れるとは……一生の恥です!!」
そう、チャンボが手に持つ無月の存在だ。
早々にギルドを飛び出していってしまったアレックスは、自分が無月を取り返すためにギルドに乗り込んだことをすっかり忘れてしまっていたのだ。
唯一気づいたチャンボがウルフに頼み、無事に返してもらい後を追いかけ、そして今に至るというわけだ。
チャンボ
「だからそんなに気にすることはないよっ。無事に戻ってきたんだからそれでいいじゃないか♪」
申し訳なさそうな顔をするアレックスにチャンボは笑顔をもって返す。
それにしても、全長二メートルはあろうかという大斧をチャンボは軽々持っている。
いったいどんな魔法を使ったのやら……
アレックスはまだ納得が行かないような顔をしていたが、やがてチャンボから無月を受け取り背中に背負う。
武術を使うアレックスもいいが、やはり大斧をもっている姿のほうがしっくり来るものがあるな。
アラン
「……あんなに大騒ぎしていたわりに最後には忘れているのか。お前の頭には脳みそが入ってないのか?」
アレックス
「脳みそくらいつまっとるわ!!喧嘩売ってんのかテメェ!!?」
アラン
「お前の馬鹿さ加減にあきれているだけだ。」
アレックス
「何だとぉ!!やるかコラァ!!!?」
アラン
「望むところだ!」
またしても喧嘩が始まってしまった。もはや定番といってもいいだろう。
二人は並んで歩きながら口喧嘩をしている。あたりに響くほどの大声だったが、幸いにも周りには何もない草原が広がっているのみ。
これが街の中とかだといろいろと面倒になりそうなので、できるだけ控えてもらえるとありがたいんだけど……
チャンボ
「はっはっはっ♪愉快愉快♪」
そうは思っても止めに入ることはしないチャンボ。だってこの方が楽しいんだもん♪
チャンボは踵と踵をぴったりとくっつけ、ピョンピョンと跳ねながら移動している。
歩きにくいその状態で早歩きに近いアランとアレックスについて行っているのだから、相当速いことがわかる。……これも何かの魔法だろうか?
本当に謎多き人物である。
さて、ギルドを出発してから三時間近く歩いただろうか、太陽はいまだ空高くに輝いている。
場所は街道を離れ森の中へと突入していた。
アレックス
「まだつかねぇのか……?もう疲れたぜ……」
アラン
「我も疲れが溜まってきた……」
永遠に続くかと思われた喧嘩も今では収まり、二人とも今は疲れた表情で歩いていた。
ここまで三時間ぶっ続けで歩きどうし、さらに途中で競争まがいのことまでしたため、その疲労は相当なものだろう。
チャンボ
「二人のももう疲れちゃったの?だらしがないなぁ♪」
しかし、チャンボだけはまったく疲れを見せずに進んでいた。
相変わらずのピョンピョン歩行だったのにもかかわらず、息の乱れすら見られない。
この少年の体のどこにそんな体力があるのやら、と御年二十三歳のアランは疑問に思うのだった。
チャンボ
「あ、森を抜けるみたいだね♪」
と、チャンボは前方を見て嬉しそうな声を上げる。
密集していた木々がだんだん疎らになり、ようやく森の外へ出ることができた。
アレックス
「やっと抜けたかぁ……。もう動けねぇぜ……」
そこは高台のような場所で、何十キロも先の景色をも見渡せた。
森を抜けたことで達成感のようなものを感じたのか、アレックスはその場に座り込んでしまった。
考えてみれば昼食も食べていない。これ以上進むのは無理か……
アラン
「…ん?あれは……」
アランは今いる高台の下に街があるのを発見した。
ナイトランドの城下町ほど大きくはないが、それなりに大きな街だった。
チャンボ
「どうしたの?アラン。」
アラン
「ああ、あそこに街が……」
アレックス
「なに!?それは本当か!!??」
と、それまで元気がなかったアレックスが勢いよく立ち上がった。
アラン
「な、何だいきなり。街があるといっただけだ。」
アレックス
「よぅし!!そこで昼飯だ!行くぞ!!!」
そういうと、アレックスは凄い勢いで街へと走っていってしまった。
あいつ…もう動けねぇとか言ってなかったか……?
チャンボ
「行っちゃったね。まあ、ちょうどお腹もすいてきたことだし、あの街でお昼にしよっか♪」
アラン
「やれやれ……。仕方がない、行くとするか。」
アランはため息を一つつくと、チャンボと共にアレックスの後を追うのだった。
アラン
「まったく……どこに行ったんだ?」
アレックスの後を追い街に入ったアラン達。
しかし、先に行ったはずのアレックスの姿は見当たらない。
チャンボ
「それにしても、楽しい街だね♪」
アラン
「それはそうだろう。ここはパレードの街――フェストだからな。」
チャンボの言うとおり、この街は楽しげな雰囲気に包まれていた。
街全体に愉快な音楽が響き渡り、あちらこちらで踊りや曲芸を披露している人の姿が見える。
まさにパレードの街だった。
アラン
「噂で聞いただけだったが、いいところだな。」
チャンボ
「あっ、ねぇアラン!あそこたくさん人がいるよ♪」
嬉しそうにはしゃぎながらチャンボが指差す先には人だかりができていた。それもかなりの人数だ。
チャンボ
「あそこに行って見ようか♪」
チャンボはそう言うと、スタスタとその人だかりのほうへ歩いていってしまった。
おいおい…アレックスを探さなくていいのか?
アラン
「まあ、仕方がないか…。」
アランはやれやれと首を軽く横に振ると、チャンボを追って行った。
やがてそこに着いたが……
チャンボ
「……見えないね。」
アラン
「うむ……」
人が多すぎてなにを見ているかはわからなかった。
どうやらここは食堂のようだが…いったいなにを見ているのだろうか?
チャンボ
「こうなったら……」
チャンボはおもむろにステッキを取り出す。
急に声が低くなったったチャンボにアランは驚きの表情を浮かべる。
い、いったいなにをするつもりだ……?
アランが固唾を呑んでチャンボの様子を見守る中、チャンボが次に発した言葉は――
チャンボ
「強行突破だぁ!」
そう言うなり、チャンボは人混みの中に突進して行った。
やぁー♪と叫びながら突っ走るチャンボに驚き、人々は自然と道をあけてしまう。
アラン
「こんなのありか……?」
アランはその行動に思わず苦笑する。
そして、チャンボの後を追って人混みの中を突破した。
アラン
「おい……」
人混みを突破し見せの中に入ったアランは、どすの利いた声で目の前の人物に声をかける。
その人物の周りには、山のように高く積まれた皿がいくつも並び、相当な量を食べたことがわかる。
アレックス
「オヤジ!おかわりだ!」
それにもかかわらずその人物――アレックスはこの食堂の店主と思われる、頭にねじり鉢巻を巻いた男に追加の料理を注文する。
店のオヤジ
「あいよ!しかしお客さんよく食べるねぇ。そんなに食べて御代を払えないなんて言うんじゃないだろうね?」
アレックス
「あぁん?御代?俺様は一銭たりとも持ってねぇぜ?」
ガツガツと料理に食らいつきながら言うアレックス。その言葉にその場は一気に静まり返った。
皆、口をあんぐりとあけ、店主にいたっては顔が目に見えて青くなっていくのがわかる。
アレックス
「ん?どうしたオヤジ。顔が真っ青だぜ?」
アラン
「お前のせいだろうが!!!」
ボカッ!!
惚けたように言うアレックスの後頭部にアランの硬く握られた拳が振り下ろされた。
振動で周りの皿が崩れ、その下敷きになってしまったアレックスにアランは、
アラン
「馬鹿も大概にしろ!!この酔っ払い馬鹿が!!」
怒りにわなわなと身体を震わせるアランに、皿に埋もれ姿が見えないアレックスは無言を持って返した。
アラン
「まったく!少しは周りの事も考えてほしいものだ!」
チャンボ
「まあまあアラン。落ちついてよっ!」
食堂の椅子にどっかと腰を下ろし、尚も怒り声で話すアラン。
そんなアランをなだめながら、チャンボはアレックスを皿の雪崩から救出していた。
ちなみに集まっていた人だかりはアランに恐怖したのかまったくいなくなっていた。
チャンボ
「とにかくお昼を食べようか♪お腹すいちゃったよっ♪」
アラン
「……お前、この馬鹿が馬鹿食いしたおかげで相当な金額になってるはずだ。その上我らまで食べてちゃんと払えるのか?
我はせいぜい5000ギルぐらいしか持ち合わせていないぞ?」
アランは憤慨しながらもしっかりと状況を理解しているようだ。
これだけ食べたうえ、さらにお皿もかなり割れてしまっているため、弁償には相当な金額がかかると予想される。
チャンボ
「大丈夫大丈夫♪問題ないって♪」
アラン
「どこが問題ないんだ!!主人、この馬鹿はいくら分食べましたか?」
店のオヤジ
「ええと……しめて70000ギルになるね。」
アラン
「なっ!?」
あまりの高さに絶句するアラン。
70000ギルというと質素な生活をしていればゆうに一年は働かずに暮らすことができる金額だ。
アラン
「そんな、払えるわけ……」
チャンボ
「あるよっ♪」
と、チャンボは懐から札束を取り出す。
ざっと見積もって1000000ギルはあるだろうか……
アラン
「なぜそんな大金を持っている!!?」
チャンボ
「僕を誰だと思ってるんだい?チャンボ星の王子だよっ♪」
ああ、そうだった…。こんなふざけた態度を取ってる奴が王子だなんていまだに信じられないが……
アランは深いため息をついた。
アラン
「それで?“アルフヘイム”までは後どれくらいなんだ?」
アランは料理を食べながらチャンボに問う。とりあえず腹ごなしをしようということになったのだ。
アランの問いにチャンボは地図を広げながらうーん、と考えている。
チャンボ
「今の場所がここだから……まだまだ先だねっ。」
アラン
「そうか。まあ、そう簡単につけるほど甘くはないか。」
と、ちょっぴり落胆した表情を見せるアラン。
アランはジョッキに入ったぶどう酒をグイッ、と一気に飲み干す。
と、その時!
ドカーーーン!!!
急に聞こえた爆発音。それと同時に街に流れていた音楽も途絶えた。
アラン
「……おい、もう起きてるだろ?ちょっと外の様子を見て来い。」
アレックス
「何で俺様が!!?」
アラン
「つべこべ言わずにさっさと行け。」
アレックス
「誰が行くか!!テメェが行って来い!!」
また喧嘩に発展しそうな雰囲気になってきたが、それは慌てた様子で店に飛び込んできた男によって阻止された。
飛び込んできた男
「た、大変だ!!中央広場が襲われてる!!」
アラン・アレックス
「!!?」
それを聞いたアランとアレックスは同時に腰を上げ、外へと飛び出して行った。
パレードの街――フェストで事件発生だよっ!
アラン
「あの爆発音……一体何が?」
襲ってきたのは誰なのか、次回もお楽しみにね♪
それじゃあ♪