第七話:アレックスVSウルフ
第七話完成だよっ♪
これでひと段落かな♪
ウルフ
「オレの名はウルフ。盗賊ギルドのボス、独眼のウルフだ!」
アレックス
「ウルフ?テメェが……。
アランに何をしやがった!!?」
目的の人物に合えたことに一瞬表情を変えたが、すぐに険しい表情に戻り、ウルフを威嚇する。
ウルフ
「そいつはオレの“ポイズンブレス”を食らったんだよ。周りをよく見てみな。」
アレックスは警戒しながらも視線だけを滑らせ、周りを見回してみる。
さっきケルベロスと戦ってるときは気づかなかったが、この空間だけ紫色の薄い霧が立ち込めているのに気がつく。
もしかしなくとも、これがウルフの言う“ポイズンブレス”なのだろう。
ウルフ
「テメェもじきに毒が回って動けなくなるだろう。ギルドをめちゃくちゃにしやがって、たっぷりと礼をさせてもらうぜ!」
ウルフはナイフを振り上げ、アレックスに迫る。
そのスピードはアランまでは行かないが、十分速かった。
アレックス
「ぐっ!?」
アレックスは左手を盾にして受けた。ナイフが突き刺さり、だらだらと血が流れ始める。
苦痛に顔をゆがめながらも、右の拳を振り上げ反撃するが、軽々と避けられ、カウンターに膝蹴りを食らってしまう。
ウルフ
「うちの連中をブッ倒して来た割にはたいしたことねぇな。それとも、もう毒が回って動けねぇのか?」
ウルフは尚もパンチや蹴りなどを連発し、アレックスを痛めつけていく。
アレックスは腕を交差させ、完全に防御に徹する。攻撃をかわすそぶりをまったく見せない。
しかし、それには理由があった。
アレックス
「(野郎……調子に乗りやがって!)」
アレックスは攻撃をかわせないのではない。“かわさない”のだ。
その訳は、アレックスの背後にある。
アラン
「……………」
そう、毒を食らって動けない状態にあるアランの存在だ。
アランとウルフのちょうど間に位置するアレックスは、もしも自分が攻撃を避けたらアランに当たってしまうのではないかと懸念しているのだ。
ウルフ
「なかなかしぶといな。だが、そろそろフィナーレと行かせてもらうぜ!」
散々アレックスを嬲ると、ウルフはナイフを振り上げる。その切っ先はアレックスの胸部――心臓を狙っていた。
ウルフ
「くたばれぇ!!」
ウルフのナイフが振り下ろされる。その軌道に狂いはない。
が、次の瞬間――
ガキン!!
ウルフ
「な、何だ!?」
ナイフがアレックスに届く直前。突如形成された青色のバリアがそれを阻んだ。
覚悟を決めて思わず目を閉じていたアレックスは、その音に目を開け、後ろを振り返る。
そこには――
チャンボ
「やぁ♪危ないところだったね、アレックス。」
アレックス
「チャンボ王子!!?」
派手派手なパンプキンズボンを白のローブで隠し、手におもちゃのようなステッキを持った少年。
――チャンボの姿があった。
チャンボは毒霧の立ち込めるこの場所をものともせず、まっすぐに歩を進めてくる。
アレックス
「王子!ここは危険です!お逃げください!!」
チャンボ
「大丈夫。“プロテクション”!」
チャンボはアランの元まで来ると、ステッキを掲げる。
すると、先程アレックスの前に作られたものと同じ青色のバリアが形成された。
チャンボ
「これでアランは心配要らないよっ。アランは僕に任せて、思う存分暴れていいよ♪」
アレックス
「王子……ありがとうございます!!」
アレックスはチャンボに礼を言うと、ウルフのほうへ向き直った。
両手の拳を左右に広げ、戦闘の構えを取る。
ウルフ
「なるほど。仲間を気にして動けなかったってわけか。
だが、いまさらその枷がなくなったところで何ができる!毒も効いているはずだしな。」
アレックス
「ガタガタうるせぇんだよ!
御託はいい。テメェも男なら拳で語り合おうぜ!!」
ウルフ
「フッ、いいだろう!」
ウルフは手に持っていたナイフを無造作に投げ捨てた。
そして、両手を前に出し、ファイティングポーズをとる。
ウルフ
「それじゃいっちょ行くぜ!」
アレックス
「うおぉーーーーっ!!!!」
ドン!と鈍い音を立ててお互いの拳がぶつかり合う。
互角……いや、若干ウルフが押されている。力だけならアレックスのほうが上のようだ。
ウルフ
「くっ、馬鹿力め!…だが、胴がガラ空きだぜ!」
ウルフの左足が素早くアレックスのわき腹を打つ。それにより、アレックスは短い呻き声を上げて体制を崩した。
そこにすかさず右の拳が迫るが……
パシッ!
ウルフ
「な、何!?」
アレックスはそれを左手で受け止めた。
その手からは、いまだにナイフにより傷つけられた傷からだらだらと血が流れている。
アレックスはウルフの右手を掴んだまま、にやりと笑った。
アレックス
「無月を盗んだ分と、アランを傷つけた分。三倍にして返してやるぜ!!!」
アレックスの体からオーラのようなものが溢れ始める。
ゆらゆらとアレックスの身体を取り巻くそのオーラは、周囲の毒霧を吹き飛ばし、さらにウルフを硬直させた。
ウルフ
「な、何だこれは……!?体が言うことをきかねぇ……!!」
アレックス
「恐怖をその身に思い知れ!!狂神崩山拳!!!!」
アレックスはウルフの手を掴んだまま、右手を大きく後ろに振りかぶる。
はたから見れば普通のパンチだろうが、受けるウルフにとってその右手は、通常の何倍もの大きさに見えたことだろう。
それはまるで、巨人の腕の如く。
ウルフ
「や、止めろ…止めろぉーーっ!!!」
アレックス
「くたばれぇ!!!!」
アレックスはウルフの顔面を思いっきり殴った。ウルフはふっ飛ばされ、数メートル先の壁に激突する。
ウルフはズルズルと背中を壁にずらせ、ついにはガクリと気を失ってしまった。
アレックス
「へっ!思い知ったか!!!?」
アレックスはそう叫ぶと、その場にドッカと腰を下ろした。
身体を覆っていたオーラはすでに霧散している。
チャンボ
「お疲れ様、アレックス♪見事だったよっ!」
アレックス
「ありがとうございます王子!ところで、アランは?」
パチパチと無邪気に拍手をしているチャンボに、アレックスはアランの状態を問う。
チャンボ
「大丈夫。心配ないよっ♪ほら♪」
アラン
「……………」
チャンボはその身を一歩横にずらし、アランの姿をアレックスに見せる。
アランは片ひざを立てた状態で座っており、無言でアレックスを見ていた。
チャンボ
「僕の治癒魔法で毒は浄化したからもう大丈夫だよっ!」
アレックス
「……フン!毒くらいで参っちまうとは、テメェも大した事ねぇな!?」
チャンボの言葉に一瞬安堵の表情を見せるアレックスだが、すぐに喧嘩腰になってしまう。
そんなアレックスを見て、アランは静かに立ち上がるとアレックスのすぐ前まで接近する。
アラン
「…毒も効かないような酔っ払い馬鹿に言われる筋合いはない。」
アレックス
「な、なんだとテメ……」
アラン
「だが!」
このまま喧嘩に発展するかと思われたが、アレックスの言葉をアランがさえぎった。
アランの思わぬ行動にアレックスはキョトンとした顔になる。
アラン
「……ありがとう。」
アレックス
「は、はぁ~?」
アラン
「我を庇い戦ってくれたことに感謝する、といっているのだ。
我を護るために怪我まで負って……」
アランは顔を横にそらし、恥ずかしそうに言う。
その頬は若干赤かった。
アレックス
「へっ!テメェはムカつく野郎だが、“仲間”だ。見殺しにするような真似はしねぇよ!!」
アラン
「アレックス……。フッ、その頭に詰まっているのは筋肉だけだと思っていたが、どうやら計算違いだったようだな。」
アレックス
「なっ!?て、テメェ!人がまじめに話してるって言うのに!!ぶっ飛ばされてぇか!!?」
アラン
「望むところだ!男同士拳で語り合おうではないか!!」
アレックス
「上等だゴルァ!!!」
結局喧嘩になってしまう二人。
喧嘩するほど仲がいいというが、この二人もそうなのだろうか?
チャンボ
「ははっ♪愉快愉快♪」
そんな二人を楽しげに見つめるチャンボ。
この二人の喧嘩を止められるものは、今の時点では誰もいなかった。
チャンボ
「……あ、そうだ。」
しばらく楽しげにじゃれ合っている二人を見ていたチャンボだが、ふと思い出したようにとをぽんと叩く。
そして、二人の横をすすーと通って、壁に激突して気絶しているウルフの元へ向かう。
チャンボ
「君がウルフだね?ほら、起きてっ?」
チャンボはウルフの身体をゆさゆさと揺する。
完全に気絶していたウルフだが、何度か揺すられるうちに意識を取り戻しやがて上体を起こした。
頭が痛いのか、右手を頭に添え、うぅと唸っている。
ウルフ
「うう…。テメェは?」
チャンボ
「僕はチャンボ♪あっちはアランとアレックス。よろしくねっ♪
僕達旅をしていてねっ。仲間を集めてるんだっ♪」
ウルフ
「旅?仲間?何のことだかさっぱりわからんが……」
チャンボ
「実はね……」
チャンボは旅の経緯を簡潔に話した。
………
……
…
ウルフ
「アンモニウムの銀河征服阻止のため、か…。悪の大魔王もよくやるぜ。」
チャンボ
「へぇ~、驚かないんだ…。」
このガイア星に住む人々は、ほとんどがガイア星のほかに別の星があることを知らない。
そう聞いていたチャンボは、ウルフが疑うと思っていたので、この反応は意外だった。
ウルフ
「オレを誰だと思ってやがる。盗賊ギルドのボス、独眼のウルフだぜ!?
ギルドの情報網を甘く見るんじゃねぇよ!」
チャンボ
「なら話は早いねっ♪ウルフ。僕らの仲間になってくれないかな?」
ウルフの大声にも怯まず、チャンボは目をキラキラさせながらウルフに問う。
ウルフはそれに少し顔をゆがめたが、すぐに思案顔をする。
しばらくして、返答が返ってきた。
ウルフ
「……それは、できねぇ…。」
チャンボ
「えっ…?どうして?」
ウルフ
「さっきも言ったが、オレはこのギルドのボスだ。
オレはボスとして、子分どもを護ってやらなくちゃならねぇんだよ。」
ウルフの顔が若干沈む。
考えてみれば、盗賊をやっているのだから皆世間ではお尋ね者だ。その頭を務める身としては、その考えは当然だろう。
チャンボ
「……そっか。残念だね…。」
アラン
「ならば他に仲間になってくれそうな奴に心当たりはないか?」
突然会話にアランが入ってきた。
見てみると、アレックスを踏みつけながらこちらを向いているアランの姿が。どうやら喧嘩中でも話は聞いていたらしい。
アランの問いにウルフは口元に手を当て、考え込む。
ウルフ
「……風の噂で聞いたのだが、ここから東に行ったところに“アルフヘイム”と呼ばれる広大な森がある。そこの奥深くにエルフ達が住む里があるらしいのだ。
そこの頭首なら力になってくれるかもしれない。」
アラン
「エルフの住む里“アルフヘイム”か……。」
チャンボ
「決まりだねっ。次の目的地は“アルフヘイム”だ♪
情報ありがとうね♪ウルフ♪」
ウルフ
「礼を言うならギルドを直してくれ。そこの馬鹿が散々暴れてくれたおかげで、ほぼ半壊状態だぜ……。」
そう言ってウルフはアランに踏みつけられているアレックスをジト目で見る。
ちなみにアレックスはアランと格闘してその視線に気づかない。
チャンボ
「あ、アレックスがごめんね。すぐに直すからっ♪」
そういうとチャンボはマジカルステッキを頭上に掲げ、なにやら言葉を紡ぐ。
すると、ステッキの先端が青い光を放ち始め、その光はだんだん強くなっていく。
チャンボ
「そーれっ!」
チャンボの掛け声で青色の光は四方に放射された。
その輝きに思わずその場の誰もが目をつぶる。
シュピーン!
チャンボ
「……もう大丈夫、終わったよっ♪」
チャンボの声に皆恐る恐る目を開ける。そして、すぐに驚きの表情を受かべた。
ウルフ
「これは……いったい……」
ウルフの目に映っているのは、綺麗に整備されたギルドの姿だった。
破られたドアは直り、ひび割れた床はふさがり、むしろ最初の状態より綺麗だった。
チャンボ
「今回は迷惑かけちゃったからねっ。大サービスだよっ♪」
屈託なく笑うチャンボ。とてもこんな所業をした者には見えない。
チャンボ
「じゃあ僕達はそろそろ行くねっ。それじゃあ♪」
ウルフ
「あ、ああ…。
仲間になってやることはできねぇが、情報提供ぐらいはしてやろう。何かわかったらすぐに知らせる。」
チャンボ
「ふふっ♪ありがとねっ♪」
こうしてチャンボ一行は、新たな目的地“アルフヘイム”に向けて出発した。
ウルフを仲間にできなかったのは残念だけど、心強い協力者となってくれそうだ。
エルフの里の頭首か…どんな人なんだろうなぁ?
アラン
「……何か忘れている気がするのだが…?」
アレックス
「はあ?テメェの考えすぎだろ?」
アラン
「うむ………」
アレックス
「それよりさっさと行こうぜ!」
そう言ってアレックスは駆け出してしまう。
アランは何か取っ掛かりを覚えながらもその後を追う。
チャンボ
「やれやれ、せっかちだねぇ♪」
唯一、チャンボだけはここに着たもう一つの目的を忘れていなかった。
その頃、
ガラン
「……ようやくガイア星まで辿り着いたが、もう限界だ……。」
アンモニウム星から逃げ出した戦士は、広大な森を彷徨っていたが、やがて疲労に耐え切れず倒れてしまった。
と、そこへ……
???
「若、誰か倒れています!」
ロングコートを纏った長身の男と、それに付き従う銀髪の少年が現れた。
少年は倒れているガランを見て、すぐさま駆け寄る。男もすぐにそれを追った。
???
「酷く衰弱していますね。……ん?」
男はガランの右腕にあるものを見つけた。
黒い布が巻いてあるのだが、そのすぐそばにある紋章の様ないれずみが目に入ったのだ。
その紋章は魔族の体のどこかに必ずあるもので、男はこの事実を知っていたのだが……
???
「……里に連れて行きましょう。白(はく)、手伝ってください。」
白
「え?いいんですか若。どこの誰ともわからぬ者を里に入れて。」
???
「構わない。私は目の前で倒れている者を放っておくほど非道ではない。」
白
「さすが若!お優しいのですね!」
白の尊敬の念を浴びながら、若と呼ばれた男はガランを抱え、里へと戻っていった。
というわけで、アレックスの勝利っ♪
アレックス
「へへっ!どんなもんよぉ!!」
次回は新たな仲間を求めて再出発♪
どんな旅になるかはお楽しみだよっ♪