第六話:無月を取り戻せ!
第六話完成だよっ♪
最近ハイペースだったけど、ここまでかなぁ。
アレックス
「ぬおおぉぉぉーーー!!!??」
アラン
「何なんだ朝っぱらから!!?いったいどうした!?」
翌日の朝。
朝からアレックスの馬鹿でかい声に起こされたアランは非難の声を上げる。
それに対しアレックスは、顔を青ざめさせて大声で応えた。
アレックス
「俺様の無月がなくなってるんだよぉ!!!」
アラン
「何……?」
見てみると、すぐ近くの木に立てかけておいたはずの大斧が消失している。
昨日誰かの気配を感じたが、そいつらが持っていったのか?殺意がなかったのでほうって置いたのだが…
まあ、とにかく――
アラン
「あんなのデカくて邪魔だし必要ないだろう。そんなに騒ぐことじゃ……」
アレックス
「アラン、テメェ!!!」
ドカッ!
アレックスはアランを殴り飛ばした。アランは近くに木に叩きつけられる。
うぅ…いきなり殴るとは……。仲間といえど許せん!
アランは痛む頭を押さえながら立ち上がる。
アラン
「この酔っ払い馬鹿が……いきなり何をする!?」
こぶしを握り叫んだが、顔を上げ視界に入ってきたのはアレックスではなく、チャンボの姿だった。
チャンボ
「すまないねアラン。でも、アレックスを許してくれないかい?」
アラン
「……あれだけ本気で殴ったんだ、それ相応の理由がなければ気が済まん!」
殴られた頬はいまだにジンジンしている。これで理由もなしに殴ったのであれば、我が奥義で葬ってやろうか!
わなわなとこぶしを震わせるアランに、チャンボは声のトーンを少し落として話し出す。
チャンボ
「わかった、理由を話すよ。
あの斧――無月はね、アレックスにとってとても大切なものなんだ。」
アラン
「……大切なもの?」
チャンボ
「うん。無月は、アレックスが僕の父上から貰ったものなんだ。
無月は一振りで小山を崩すほどの威力があって、使い方を間違えると味方まで傷つけてしまう危険な武器なんだ。
でも、父上はアレックスを信じて無月をあげた。だから無月はアレックスにとって、父上の信頼であり、また、形見でもあるんだ。
だからアレックスにとって無月は、とても大切なものなんだ。」
アラン
「……………」
…まさかあのデカ斧にそんな思い出があるとは……。
知らなかったとはいえ、俺はなんて酷いことを言ってしまったんだ…。
アラン
「……アレックスはどこへ?」
チャンボ
「あっちだよ。多分ギルドに殴り込みにいったんじゃないかな?」
アラン
「あの馬鹿…。無茶しやがって…!」
アランは走り出した。
アレックスに謝るため、そして助けるために――盗賊ギルドへ…。
アレックス
「チクショウ!俺様の無月を盗むなんてふざけた真似しやがって!!盗賊ギルドの連中を片っ端からぶっ飛ばしてやる!!」
アレックスはチャンボの読みどおり、盗賊ギルドの本拠地に正面から殴り込みに行っていた。
はたから見たら無謀そのものだが、幼少の頃からあらゆる武術を学んできたアレックスは斧がなくても十分すぎるくらい強かった。
アレックスの通った後には、侵入者を追い出そうと向かってきたギルド所属の盗賊達の山、山、山。
無月を奪われたことで復讐に燃えるアレックスをとめられる者などいなかった。
アレックス
「俺様の無月!俺様の無月はどこだぁ!!?」
ギルドの中のドアというドアをすべて吹き飛ばし、くまなく室内を探すが肝心のものは見つからない。
アレックスに苛立ちが募ってくる。
と、その時――
グォアーーーッ!!!
突如、身の毛もよだつような恐ろしい野獣の声が聞こえた。さすがのアレックスも何事かといったん足を止める。
ドシン、ドシン、と大きな足音を立てて現れたのは、真っ黒な身体に三つの頭部を持つ野獣――ケルベロスだった。
ケルベロス
「グルァーーーッ!!!」
鼓膜をびりびりとさせるおぞましい声。常人なら聞いただけで一目散に逃げ出すだろう。
しかし、アレックスは――
アレックス
「テメェと遊んでる暇はねぇんだよ!!さっさとくたばりやがれ!地砕撃!!」
元からこういう性格なのか、はたまた怒りで恐怖を感じないのか。アレックスのまったく臆したそぶりを見せず、こぶしを振り上げケルベロスに殴りかかった。
その一撃は読んで字の如く地面をも砕く一撃。その重い一撃は、ケルベロスの三つの頭部の内中央の頭にめり込んだ。
ケルベロスは怯み、一歩後退する。
アレックス
「テメェはご主人様とでも戯れてりゃいいんだよ!」
アレックスはさらに追撃を加えようと接近する。
しかし、ケルベロスには頭が三つもあるのだ。近づいて来るアレックスに右の頭が噛み付こうと大口を開ける。
さすがに引かざるを得ないアレックスだが、それに追い討ちをかけ、左の頭がアレックスを突き飛ばした。
アレックス
「ぐッ!?んにゃろう…!」
すぐさま立ち上がろうとするが、それより早くケルベロスの前脚が突き出され、アレックスを取り押さえた。
身動きが取れないアレックスに、ケルベロスの鋭い牙が迫る。
アレックス
「く、くそっ!動けねぇ!!もはやこれまでか……」
アレックスが諦めかけた、その時――
???
「シャイニングカッター!」
突如飛来した光の斬撃が、アレックスに食らい付こうとしていた左の頭を切り下ろした。
ケルベロスは絶叫を上げながら後退する。
窮地を脱したアレックスが振り返ると、そこには――
アラン
「犬一匹に苦戦するとは、お前の力はその程度か?」
アレックス
「あ、アラン!!?」
――両手にダブルトマホークを構えたアランが立っていた。
アランはアレックスの元まで駆け寄ると、手を差し伸べる。
アラン
「さっきはすまなかった。
何も知らずに、酷い事を……」
アレックス
「アラン……。フン!わかりゃいいんだよ!わかりゃ!!」
アレックスはアランの手を乱暴に掴み、立ち上がる。
アレックス
「それより今は、この犬っころをぶん殴らねぇと気が済まねぇ!!」
アレックスは目の前で恨みのこもった目を向けているケルベロスを睨む。
さすが魔獣と言うべきか、頭一つなくなってもしぶとく生きていた。
アラン
「我も手を貸そう。
我が奴の注意を引き付ける。その隙に攻撃しろ!」
アレックス
「手ぇ出すなら足手纏いになるなよ!!」
アラン
「それはこっちの台詞だ!」
アランは言いながら走りだす。
その速さはまさに閃光のごとし。残像が残るほどだ。
自分のまわりをちょこまか動き回るアランに、ケルベロスは牙や爪を出すが、それは虚しく空をきる。
それに苛立っているのか攻撃はだんだん激しくなるが、ケルベロスの視線は完全にアランだけに向けられた。
アレックス
「さっきはよくもやってくれたな!!?お返しだ!地砕翔!!」
アランが引き付けている隙に、アレックスの強烈なアッパーがケルベロスに直撃する。
ケルベロスの巨体が宙を舞った。
そして、打ち上げられた先には、高くジャンプしたアランが待ちかまえていた。
アラン
「犬はおとなしく小屋に戻るんだな!十文字斬り!!」
アランの強力な斬撃により、今度は逆に下へと落ちていく。
落下速度も加わり、そのスピードはとても速かった。
アラン
「アレックス!受け取れ!」
アランはケルベロスを追って落下しながら、トマホークの一本をアレックスに投げ渡した。
アレックスはアランが何をする気なのか一瞬で理解する。
アラン
「遅れるなよ!?」
アレックス
「テメェこそな!!」
アラン・アレックス
『グランド・クロス!!!』
アランとアレックスの斬撃が交じりあい、十文字の軌跡がケルベロスの体を両断した。
ケルベロスは絶叫を上げ、轟音とともに倒れた。
アラン
「…ふぅ、やるな。ただの酔っ払い馬鹿ではないということか。」
アレックス
「一言多いんだよ!!テメェは素直に誉めるっつー事を知らねぇのか!!?」
戦いを終え、いつもの調子に戻る二人。
アランはフッ、と笑うとからかうように言う。
アラン
「我は本当のことを言ったまでだ。」
アレックス
「んだとぉ!?やるかコラ!!?」
アラン
「望むところ……ぐっ!?」
このまま喧嘩に発展するかと思われたその時、アランは急に苦しみだすとその場に崩れ落ちた。
アレックス
「お、おい!どうしたんだよ!!??」
これにはアレックスも動揺を隠せない。
いったいどうなってるんだ!?
???
「敵地で気を抜くとは、愚かな奴だ。」
アレックス
「!?誰だ!?」
突如聞こえる怪しげな声。倒れたケルベロスの陰から一人の男が現れた。
緑と黒の縞々模様のズボンに少し汚れて黒みがかった白のジャンパー。左目に眼帯をつけ、右手には少し長めのナイフが握られている。
威圧感すら感じさせる鋭い瞳をアレックスに向け、男は答えた。
ウルフ
「オレの名はウルフ。盗賊ギルドのボス、独眼のウルフだ!」
今回は無月が奪われちゃった話でしたぁ♪
アレックス
「チクショウ!ウルフの奴ふざけやがって!!」
実際ウルフはまったく関係してないけどねっ。
次回もまだまだアレックスの快進撃は続くよ♪お楽しみに♪