第五話:旅立ち
第五話完成だよっ♪
仲間を求めて出発だっ♪
アラン
「話はわかったが、まず何から始める?」
チャンボ
「まずはガイア星に行こう♪いくらなんでも三人だけじゃアンモニウムは倒せないからねっ。一緒に戦ってくれる仲間を探すんだっ♪」
チャンボはさっきからとても嬉しそうだ。
まるで遠足を前にした小学生のように、ワクワクした感情が伝わってくる。
悲しい過去を持ち、さらにこれから危険になるであろう旅に出るというのに、なぜこんなに明るく振舞えるんだろう?
一見ふざけた奴だが、実はとても強い心を持っているのかもしれない。
アラン
「なるほど、確かに三人だけでは人数不足にもほどがあるな。だが、当てはあるのか?」
アレックス
「盗賊ギルドはテメェもよく知ってるだろう。そこのボスはかなりの腕利きと聞く。そいつに当たってみるさ。」
アラン
「独眼のウルフか……」
盗賊ギルドのボス――独眼のウルフはナイトランドでは有名だ。
自分から動くことは滅多にないが、仲間に対する意識は強く、ギルドに所属するものが傷つけられると、手を下したものにはそれなりの制裁を加えている。
死人が出ることもあり、城下町の兵隊が手を出せなかったのもそのせいだ。
アレックス
「知ってるなら話は早いぜ!まずはそいつは仲間にするってわけよ!!」
アラン
「そううまくいくだろうか……」
アランは不安だった。
ウルフは実力もあり、戦力としては申し分ない。だが、アランはここに来る前にギルドに所属するバル、ベル、ドルの三兄弟に制裁を加えている。
負ける気はさらさらないが、仲間になるのを拒むというころは十分にありえるのだ。
アランの心配をよそにアレックスは勝手に話を進める。
アレックス
「よし!そうと決まれば早速準備だ!!チャンボ王子、変装をお願いします!あなたを危険な目に合わせたくねぇんです!!」
チャンボ
「わかったよ♪すまないねアラン。ちょっと待っていてくれっ♪」
アラン
「あ、ああ…。そんな格好では目立ちすぎるからな。ぜひ着替えてくれ。」
チャンボはアレックスとともに赤い幕の中へと入っていった。
数分後……
チャンボ
「待たせたね♪」
アラン
「ん?ようやく終わ……は?」
再び幕の中から姿を現したチャンボにアランは目を丸くする。
チャンボは魔術師が着用する白いローブを纏っていた。ただし、ローブの前は大きく開き、その内側には先ほど履いていたパンプキンズボンが覗いている。
なんとチャンボは、ローブを纏った以外まったく服装を変えていなかった。
チャンボ
「?どうしたんだい?アラン。」
アラン
「いや…その格好……」
チャンボ
「なかなか似合ってるでしょ?アレックスが選んでくれたんだ♪」
アレックス
「これで変装はばっちりだぜ!!」
どうやら二人は完全に変装できていると思っているらしい。
チャンボはくるりと回ってその姿を見せ付けてくる。
……本当に変装する気があるのか?
アランはこの先大丈夫だろうかと、始まる前から不安になった。
そんなこんなで旅立ちのときが来た。
アラン、アレックス、チャンボの三人は、城の裏側にある小さな小屋に来ていた。
一見何の変哲もない小屋だが、ここに惑星移動のための魔方陣があるのだという。
アランは惑星移動など初めて(使者に連れてこられたときは気を失っていたため覚えていない。)なので、どんな風に移動するのかはちょっと興味があった。
きぃぃ…とドアを開けて中に入る。
中は少しジメジメしていて、壺や木箱が散乱している。ほとんど立ち入ってないことが窺えた。
チャンボ
「えーと、確かこの辺に……」
チャンボは木箱を移動させる。すると、奇奇怪怪な模様が現れた。
床に刻み込まれたその模様は、チャンボが上に乗ると青く輝きだした。
チャンボ
「さあ、これに乗って。いつでも出発できるよ♪」
チャンボに促され、アランとアレックスは魔方陣の上に乗る。
魔法陣の直径は二メートルほどあったが、アレックスの大斧が邪魔をしてアランはとても窮屈な状態になってしまった。
アラン
「おい!そのデカ斧は何とかならないのか!?」
アレックス
「ガタガタうるせぇんだよ!ちゃんと乗れてるんだからいいだろ!?」
いいわけないだろう!と返したかったが、魔方陣の輝きが強くなったのに気づき、言葉を飲み込む。
チャンボ
「アラン。惑星間移動は慣れないとちょっとつらいけど、我慢してねっ?」
チャンボが注意したと同時に青い光が三人を包み込んだ。
突如感じる気持ち悪さ。まるで巨大な洗濯機の中に放り込まれたような感覚に陥る。
アランは吐きそうになるのを何とか堪え、早くつかないかと切に願うのだった。
それからほんの数分後。三人はガイア星に到着した。
惑星移動は思っていたより断然早く、あっという間だった。
まあ、アランにとっては長すぎる時間だったかもしれない。アランは地面に膝をつき、肩で息をしている。
アレックス
「なんだぁ?おめぇこんなことでバテてんのか?頼りねぇなぁ。」
アラン
「う、うるさい!!我がこんなことでバテるわけがないだろう!!お前の大斧が邪魔をして窮屈だっただけだ!」
アレックス
「て、テメェ!俺様の無月にケチつけようってのか!!?ぶっ飛ばすぞ!!?」
アラン
「望むところだ!!!」
アランとアレックスは喧嘩を始めてしまった。
チャンボ星からガイア星に来るのも早かったが、二人が喧嘩を始めるまでの時間はそれよりも遥かに早かった。
チャンボ
「二人ともっ!喧嘩はいいけど、とりあえず宿を探さないかい?」
ギャアギャアと舌戦を繰り広げる二人にチャンボは笑みを浮かべながら指摘する。
しかし二人は聞こえないのか、喧嘩を止める様子はなかった。チャンボは怒りもしないでその様子を微笑しながら眺めていた。
夜。結局喧嘩が収まったのは日もとっぷり暮れてあたりが暗くなってからだった。
二人のおかげで宿を探すことができなかったので、今夜はここで野宿となりそうだ。
アレックス
「申し訳ありません!!!チャンボ王子!!!」
アラン
「すまない…我等のせいで……」
アレックスは頭を地面にこすり付けて土下座をし、アランもさすがに悪いと思ったのか、チャンボに頭を下げる。
チャンボ
「まあ、仕方がないよっ!今夜はここで野宿しよう♪」
チャンボはそんな二人を怒ることもしないで笑って許す。父親に似てその心は寛大だった。
何はともあれ明かりとなる火を起こさなければ、とチャンボが最後まで言う前に、アランとアレックスの二人は焚き木を拾いにいなくなってしまった。
チャンボは驚くが、その場に腰を下ろし、クスリと笑う。
面白い人達だねぇ♪
しばらくして両手にたくさんの木の枝を持った二人が帰ってきた。
勝負でもしていのか、我の勝ちだな!、いや俺様だぁ!!と言い合いながらだった。
チャンボは二人から木の枝を受け取ると、適当に枝を組み、懐からおもちゃのようなステッキ――マジカル・ステッキというらしい――を取り出す。
チャンボ
「…それっ!」
チャンボの声に反応し、ステッキの先端から火が飛び出した。
その火は焚き木に燃え移り、やがてパチパチと音を立てはじめる。
アラン
「ほぅ……」
アランはその様子に感心する。
どうやらちゃんとした術を使えるようだな。
三人は焚き火のまわりに腰を下ろす。
チャンボ
「さて、とりあえず現在位置を確認しなくちゃねっ。
アレックス、地図を出して♪」
アレックス
「はい!どうぞ王子!」
アレックスの取り出した地図を広げ、チャンボは現在位置を探す。
チャンボ
「えーっと、今の位置は………ここだねっ♪」
チャンボは地図上の小さな森を指す。
そこはナイトランド王国から南に十キロほどの場所にある名もない小さな森だった。
しかし……
アラン
「おいおい……。盗賊ギルドがあるのはここだぞ?近すぎないか?」
アランが指したのはチャンボ達がいる場所から歩いてほんの数分で着ける距離だった。
もう少し明るいのであれば好都合だが、夜となった今では不都合だ。寝ているところを襲われる可能性だってある。
アランがそれをチャンボに告げるが、
チャンボ
「大丈夫だよっ♪何とかなるって♪」
アラン
「しかし……」
アレックス
「心配性だなぁ!いざって時は俺様がこの無月でぶっ飛ばしてやるから心配すんな!!」
アレックスは自慢の大斧を叩きながら豪快に笑う。
……こいつに言われると無性に腹が立つのはなぜだろう?
しかし、アレックスに言われると自分の考えが馬鹿らしく思えてきた。
アラン
「(いざとなれば戦えばいいか。我が負けるなどありえないからな。)」
アランはナイトランド王国最強の騎士、腕には自信があった。
アラン
「ならばさっさと寝るとしよう。これ以上起きていても仕方がないからな。」
チャンボ
「うん、そうだね。じゃあ、お休み~♪」
三人は眠りについた。
三人が寝静まった頃……
ベル
「へへっ、兄貴こいつらのんきに寝てますぜ!」
バル
「よし、この大斧をいただいていくか。ドル、運べ。」
ドル
「むうぅ!…ひ、一人じゃ重くて持てないんだなぁ…。」
バル
「しょうがねぇな…。三人で運ぶぞ!」
あの三兄弟が来ているなど、寝ているアラン達には知る由もなかった。
影で大変なことが起こっちゃったね♪
アレックス
「ん?敵の襲撃か!?」
まだ寝てていいよぉ♪いずれわかるからっ。
次回はアレックスが活躍するかな?