第十七話:ガランの相棒?
第十七話完成だよっ。
今回はガランのお友達が登場するよ~♪
新たな仲間――ガランを加え、エグリスに向け出発してから丸一日ほど経っただろうか?
旅立ちの時は遠くに聳えていた山脈が今は目の前にある。そう、我らは今、エグリスに向かう道のり最後の難関である山脈の麓にいた。
長
「この山――ラギス山脈を抜ければエグリスは目の前です。」
アラン
「山越えか。まさに最後の難関、といったところか。」
山の標高はざっと見て二から三千メートルといったとことか。
一昨日の不眠がたたったのかあまり体調がいいとは言えない今の状態では、その標高は決して低いものとは言えなかった。
アレックス
「うだうだ言ってねぇでさっさと行くぞ!日が暮れちまう!」
アラン
「言われなくてもわかってる。」
チャンボ
「じゃあ、さっそく登ろう♪」
チャンボの掛け声を合図に我ら五人はラギス山脈へと足を踏み入れた。
山の中はシンと静まり返っていた。
山を覆う針葉樹は間隔を開けて大きく生えそろい、成長した葉は太陽の光を遮り山の中に影を作り出す。鳥のさえずりすら聞こえない山に響くのは、木々の間をさわさわと駆け抜ける風の音のみだった。
アラン
「――やけに静かだな?」
チャンボ
「確かに。動物の気配も感じないよっ。」
音が何もしないというのはかえって不気味だ。この山には何かあるのか?
長
「この山には山賊の根城があるのです。それを恐れてか、この周辺の動物達はみんな逃げてしまったのですよ。」
アラン
「山賊が出るのか!?」
思わず大声を上げてしまう。そういう大事なことは早く言ってもらいたい。
しかし、疑問な点もある。
アラン
「しかし、この山に山賊の根城があるとわかっているならなぜエグリスは何もしないのだ?近くに山賊がいるとなれば民も安心できないだろう。」
長
「それが、この山に出没するということはわかっているのですが、見てわかるとおりこの山はとても広く、正確な場所を見つけ出せないというのが現状らしいです。」
確かに外から見た割にはこの山は広い。迂闊に入れば迷子になるのは必至だろう。
それに、生い茂る木々のせいで昼間でも薄暗い。山賊の隠れ家にはもってこいということか。
アレックス
「まあ、もし襲ってきたら返り討ちにしてやるけどな。」
ガラン
「ははは!そりゃいいや!」
指を鳴らしながら首を回すアレックス。むしろ出てこないかと期待するかのようにキョロキョロとあたりを見回すあたり、彼らしいと言える。まったく血の気の多い奴め。
……………
しばらく足を進めると、急にガランが立ち止った。
アラン
「ん、どうした?」
ガラン
「いや、何か気配が……」
そう言ってキョロキョロと辺りを見渡し、怪訝な表情を浮かべている。
その言葉を聞き、他の四人も身構えた。
アラン
「まさか、例の山賊か?」
長
「いえ、それにしては気配が薄すぎます。」
お互いの背中を預け、注意深くあたりを見るが、山賊らしき影はどこにも見当たらない。
正体のわからない気配に緊張している中、最初に気配に気づいたガランだけは警戒しているというより首を傾げて考え込んでいる様子だった。
???
「……ぉーい。」
と、気配の主のものか声が聞こえてきた。最初は感じ取れなかった気配も今でははっきりと認識できる。
チャンボ
「だいぶ近いねっ。」
アレックス
「へっ!来るなら来やがれ、返り討ちにしてやる!!」
背負っていた大斧――無月を構えやる気満々で待ち構えるアレックス。
そんなアレックスの期待に応えるかのように声はだんだんと大きくなっていき、木々の隙間からやがてその姿を現した。
???
「やっと見つけたぜ!ガランの旦那!」
ガラン
「おっ、ステルスじゃねぇか!今までどこに行ってたんだ?」
その姿は一見するとコウモリのよう。しかし、その翼は明らかに硬質化しており、まるで刃のように鋭くとがっている。それに通常のコウモリより一回りほど大きい。
言葉をしゃべっている時点でただのコウモリでないことは明らかだが、その体から発せられる異質な気と、額に刻まれた紋章からその正体は明らかだった。
アラン
「魔族か……?」
ステルス
「どこに行ってたんだ、じゃなーい!ちょっと目を離した隙に勝手にどんどん進んじゃうからここまで来るの大変だったんだからな!!」
ガラン
「そうだったか?ま、追いついたならいいじゃねぇか。」
ステルス
「ちっともよくなーい!!」
笑ってごまかすガランの肩にとまり、甲高い声で大声をあげる。
はたから見たら人間とコウモリが会話している何ともシュールな光景に映るかもしれない。
長
「ガランさん。それは一体……?」
ステルス
「それ言うなっ!!」
長の言い方が気に食わなかったのかガランの肩から飛び出し長の目の前で牙をむく。さすがの長も驚いたようで目を丸くしていた。
ガラン
「こいつはステルスって言ってな。オレの昔からの相棒ってわけだ!」
ステルス
「よろしくなぁ!……ってなんでおれエルフなんかによろしくとか言ってるんだよー!?」
チャンボ
「あはは。なんだかおもしろい人だねっ!」
ステルス
「うるせぇ!!」
子供のような声でギャーギャー叫ぶのでさっきから耳が痛い。まったくしつけがなってないな。
ステルス
「ガランの旦那!なんでこんな奴らと一緒に行動してんの!!?」
ガラン
「お前も知ってるだろうが。俺が何であの星から逃げてきたのか。」
ステルス
「――アンモニウムのやり方が気に食わなかったからだろ?」
ガラン
「そうだ。それでこいつらはそのアンモニウムを倒すために旅をしてるそうだ。」
ステルス
「!?……なるほどな。」
さっきまで騒いでいたのに急に静かになると我らの顔を一人ずつ観察し始めた。
我、長、アレックスと見ていき、最後にチャンボの顔を見たとき顔色が変わった。
チャンボ
「な、なに?」
ステルス
「……よーくわかった。」
じっくりチャンボの顔を覗き込んだ後、ガランの肩にとまりため息をつく。
ステルス
「こんな奴らに手を貸すのは癪だけど、ガランの旦那は手ぇ貸すんだろ?」
ガラン
「おうよ。」
ステルス
「だったらこのおれもついていってやるぜ。感謝するんだなっ!」
と、なんだかよくわからないうちに新たに仲間ができてしまったようだ。
それにしても、さっきから我らに対して随分ないいようだな。チラッとアレックスの方を見てみると無月を握りしめわなわなと肩を震わせている姿が目に入った。
やれやれ、とりあえず軽く蹴りを加えておく。
アレックス
「ッて!?何しやがる!!」
アラン
「飛びかかる前に調教しておこうと思ってな。」
アレックス
「なんだとオラァッ!!!」
長
「二人とも喧嘩はいけませんよ。」
チャンボ
「あははっ♪愉快だねぇ♪」
一瞬にして笑いに包まれる一同。そんな様子を見てステルスはそっとガランに耳打ちする。
ステルス
「……こんなんで大丈夫か?」
ガラン
「大丈夫だ。問題ない。」
どこか満足げな表情を浮かべるガランにステルスはただ呆れるしかなかった。
なんだかとっても面白い人が仲間になったねっ♪
ステルス
「うるせぇ!!お前なんかに言われてもうれしくないやい!」
ははっ♪愉快だねぇ♪