第十六話:決闘!ガランVSアレックス
第十六話完成だよっ!
さて、勝者はどっちかな?
ガランの実力を見極めるため、急遽決闘することになったアレックスとガラン。
周囲に生える長い草を適当にならし、決闘に必要なスペースを確保すると、二人はその中央で向かい合った。
チャンボ
「ガランって強いのかなぁ?」
長
「ガランさんからは並々ならぬ闘志を感じられます。どんな勝負になるか楽しみです。」
すでに少し離れた場所で観戦モードに入っている二人。
チャンボはともかく、長もなんだか楽しそうだな。それほどあの男に期待しているということか。
我が二人の横に腰を下ろしたところで、アレックスが口を開いた。
アレックス
「先手はくれてやる。どこからでもかかってきやがれ!」
アレックスは無月を手にどっしりと構える。
それに対し、ガランは両の拳を前に出し、ファイティングポーズをとる。
ガラン
「そうかい!じゃあ遠慮なく行かせてもらうぜぇ!!」
言うや否や、ガランは地を強く蹴るとアレックスに向かって拳を突き出した。
ガラン
「くらいやがれぇ!!」
アレックス
「ふんっ!」
ガランの拳はアレックスの大斧――無月によって阻まれる。
強烈な一撃だったにも関わらず、無月はびくともしなかった。
アレックス
「どうした?そんなんじゃ俺様は倒せねぇぞ!?」
ガラン
「へっ!すぐにやってやるよっ!!」
ガランは一度後ろに大きく飛び退くと、拳と拳をかち合わせ気合いを入れる。
ガラン
「デビルハンド!!」
ガランは拳を固め、連続で突き出す。
突き出される拳によって圧縮された空気は、拳型の衝撃波となりアレックスを襲った。
アレックス
「やるじゃねぇか。そうでなくちゃ面白くねぇぜ!」
衝撃波の嵐を無月で防ぎつつ隙をうかがう。しかし、ニヤリと歯をむき出しにしながら拳を振るうガランになかなか隙は見つからなかった。
アレックス
「ちっ!埒が明かねぇな。こうなったら――ッ!!」
防御に使っていた無月を握り直すと、斜め上に向かって一気に振り抜いた。
それにより生じた風圧によって衝撃波は霧散する。
ガラン
「!?」
アレックス
「そろそろこっちからも行かせてもらうぜぇ!!」
攻撃を止められたことに驚き動きが止まっているガランに、アレックスは容赦なく無月を振り上げる。
アレックス
「くらいなっ!地砕撃!!!」
縦に降り下ろされた無月はガランの体を真っ二つに切り裂いてしまった!
アラン
「なっ!!?」
長
「ガランさん!?」
まさかまともに受けてしまうとは思ってなかったので、思わず立ち上がって一歩前に出る。
見ている限りガランの実力はそこそこあるように感じた。なのになぜあんな単調な攻撃で!?
アレックス
「お、おい……」
斬ったアレックス自身も信じられないのか、大きく目を見開いていた。
誰もが信じられないと言う想いで真っ二つになたガランの体を見ていた。
しかし、次の瞬間別の意味で驚くことになる。
長
「ガランさんの体が……」
真っ二つになったガランの体。しかし、青白かったガランの体が急に真っ黒になると、瞬き一つする間に霧散してしまった。
アレックス
「こいつは……」
ガラン
「俺ならここだ!幻魔拳!!」
アレックス
「ぐおっ!!??」
突如アレックスの背後に現れたガランはその背中に鋭い一撃を与える。
とっさに無月を振るい、追撃を防ぐ。
ガランは後ろに飛んでそれをかわした。
アラン
「あいつ、いつの間に……」
チャンボ
「……そうか、幻影だっ!」
今までずっと黙っていたチャンボがわかった、と言わんばかりに手を叩いた。
長
「なるほど…。ガランさんは魔族。妖術を使えても不思議はありませんね。」
アラン
「どういうことだ?」
納得した様子の長を見て、いまだによくわからない我は説明を要求する。
しかし、それに答えたのはチャンボだった。
チャンボ
「つまり、アレックスが斬ったのは幻影だったってことだよっ!」
アラン
「なに?」
チャンボ
「たぶん、斬られる直前に幻影で引き付けて、その間に背後に回ったんだっ。」
長
「つまり、アレックスさんが斬ったのは、ガランさんが作り出した幻影と言うわけです。」
なるほど。さすがは魔族と言うべきか。心配して損した。
疑問が晴れたところで、再び視線を戻す。
アレックスとガランは最初と位置を入れ換えた状態で睨みあっていた。
アレックス
「俺様に一撃くらわすなんてやるじゃねぇか。」
ガラン
「言っただろ?すぐにやってやるってな!」
アレックス
「面白ぇじゃねぇか。試しがいがあるってもんだ!」
アレックスは無月を地面に突き立てると、ニヤリと笑ってガランを見た。
アレックス
「こっからは小細工なしだ!かかってきやがれ!!」
ガラン
「上等だ!俺とお前、どっちの拳が強ぇか勝負だ!!!」
ガランの言葉を皮切りにお互いに駆け出す。
小細工なしの肉弾戦が始まった。
チャンボ
「アレックスを相手に素手でやりあえるなんて、やっぱり強いねぇ。」
アラン
「確かに、あの馬鹿力と真っ向からぶつかれるだけでも凄いことだ。」
アレックスは自分の身の丈ほどもある大斧を自在に操れるだけの力があるのだ。
それに幼少の頃からあらゆる武術を学んできたアレックスは、並みのドワーフよりも遥かに強い。
そんな相手に一撃を加えただけでなく、まともにやりあえるのは相当凄いことなのだ。
長
「しかし、どうやらアレックスさんの方が一枚上手のようですね。」
アラン
「なに?」
お互いに互角のように見える。しかし、よく見てみるとガランが押されているのがわかった。
ガラン
「おわっ!?」
ついにガランが後ろによろめいた。すかさずアレックスの拳が唸り、そのままガランを仰向けに押し倒した。
ガラン
「ぐっ!」
アレックス
「これで終わりだぁ!!」
渾身の力を込めた拳はガランの顔に向かってまっすぐ降り下ろされる。
さすがのガランも、馬乗りにされて動きを制限させられているこの状態では幻影でかわすこともできなかった。
ドスッ!
鈍い音が響き渡る。――決着はついた。
ガラン
「……なんだよ。トドメは刺さねぇのかよ。」
顔の真横に降り下ろされた拳を見ながら不服そうに呟くガラン。
アレックスは拳の軌道をそらし、顔の横の地面を殴った。トドメを刺すことはしなかったのである。
アレックス
「……合格だ。」
ガラン
「は?」
拳を静かに戻し立ち上がったアレックスは、ガランを見下ろしながら呟いた。
その言葉の意味がわからず、ガランは勢いをつけて跳ね起きると胡乱な顔でアレックスを睨む。
アレックス
「合格っつったんだよ!
テメェの実力は確かだった。そんだけの腕がありゃあ、この旅にもついてこれるだろうよ。」
ガラン
「それじゃあ……」
アレックス
「テメェを認めてやる。今日からテメェは――俺達の仲間だ!!」
怒号にも似たアレックスの声が響き渡る。
一時の静寂。そして――
ガラン
「――よっしゃあ!!!」
歓喜の声。アレックスの怒号にも負けない喜びの声は、遠く離れたエルフの森にまで届いたかもしれない。拳を空に向かって突き上げ、体全体で喜びを表すガランの前にスッと手がさしのべられた。
アレックス
「これからよろしくな!ガラン!」
ガラン
「――おう!」
がっしりと握手をかわす二人。その表情は、どちらも笑顔に満ち溢れていた。
チャンボ
「さてっ!ガランも無事に仲間になったことだし、早速出発しようかっ♪」
嬉しそうにはしゃぐチャンボは出発を提案する。
しかし、今の時間は夜のはず――
長
「おや、もう日の出ですね。」
東の空を見はるかしながら呟く長。
その言葉通り、その視線の先には地平線から顔を出す太陽が見えた。
ガランとアレックスが決闘をしている間に時は思いのほか進んでいたようだ。
アラン
「まさかこれほど時間が過ぎていたとは……」
さすがにこれには苦笑いを浮かべるしかなかった。
せっかくゆっくり眠れると思っていたのに……
長
「まあまあ。エグリスに着けばゆっくり休めますから。」
そんな我の心中を察したのか、肩に手を置いて励ましの言葉をかける長。
アラン
「大丈夫だ。――では、早速出発といこうか。」
チャンボ
「エグリスに向けて出発ぅ〜♪」
素早く準備を整えると、馬にアレックスとチャンボをのせ、いまだに遠いエグリスに向けて歩を進める。
新たな仲間――ガランを加え、旅はいっそう賑やかになると喜びを感じながら――
うーん、これって引き分けって言うのかな?
アラン
「勝敗的にはアレックスの勝ちのように見えるが?」
まあいいや♪
無事にガランも仲間になったことだし、細かいことは気にしない気にしない♪