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第十五話:追いかけてきた者

第十五話完成だよっ♪


一体誰のことだろう?

街で情報を得るため、芸術の街――エグリスに向かうことにしたチャンボ達は、踏み均された草原の道を外れ、エグリスへ向かう途中にある北西に聳える山脈を目指していた。


アレックス

「ふあ~……。しっかし、ここら辺はなにもねぇなぁ?」


その道中。アレックスは馬の背中で大きなあくびを一つ吐くと、あたりを見回しながら呟いた。

その言葉に首を回してみるが、目に映るのは太陽の光をやわらかに受け、時折さざ波の様に風に揺れる草原が広がるのみ。遥か遠くに森や山脈は見えるものの、このあたり一帯はほとんど何もなかった。


アラン

「ここは人里離れた言わば辺境の土地だ。人間達の立ち入りが少ない分自然が豊富なのだろう。」


アレックス

「なるほどな。でも、暇でしょうがねぇぜ……」


アレックスは再度欠伸を吐く。うつらうつらとして今にも寝てしまいそうだ。

まあ、敵に襲われるよりましだが、確かに退屈だな。


チャンボ

「ねぇ長。エグリスには後どのくらいで着くのかなっ?」


馬に乗り、アレックスの少し後方にいるチャンボは、隣を歩く長に目線を向けた。


「そうですねぇ。天候に左右されなければ三日もあれば着くと思いますよ。」


チャンボ

「へぇ、結構近いんだねっ?」


「直線コースですから。街道から正規のルートで行けば二週間ほどかかると思います。」


エグリスはまるで守られるかのようにぐるりと山に囲まれている。入口は西側にしかなく、ここからきちんとした道を通ろうとすると山を迂回しなくてはならないため、かなりの遠回りになってしまうのだ。

あまりのんびりもしてられないし、この選択は間違っていなかったと今は思う。


アレックス

「さっさとこんなつまんねぇところおさらばしたいぜ。」


アレックスのぼやきを聞きながら、まだまだ遠くに見える山脈を目指して進むのだった。






特に変わったこともなく時は流れていき、日没が迫ってきた。


「もう日没ですね。今日はここまでにしませんか?」


アラン

「そうだな。夜に進むのは極力避けたほうがいい。」


チャンボ

「それじゃっ、さっそく準備しなくちゃねっ!」


どこか嬉しげなチャンボ。まるで遠足に行く子供のようだ。

さて、とりあえず焚火でも……ん?


アラン

「長。それはなんだ?」


「これですか?人間の間では“寝袋”と呼ばれるものですよ。」


アラン

「いや、それはわかるんだが……」


いつ、どこから出した?旅荷らしきものは持っていなかったはずだが……

頭に疑問符を浮かべていると、その表情から察したのか種明かしをしてくれた。

長はおもむろに手を前に伸ばすと、手のひらを開いた。


「これはここから出したんですよ。――こんなふうに!」


言ったと同時に手のひらに力を込めた。すると、差し出した手のひらを中心に空間が歪んでいき、それはやがて直径50cmほどの黒い穴を開けてしまった。


アラン

「こ、これは……」


「このように、私は別空間に物を収納しておくことができるのです。もし名前を付けるとしたら、そうですね……“異次元の穴”ディメンション・ホールとでも呼んでください。」


平然と言ってのけるが、空間に穴を開けるなんて芸当、とても常人には真似できない。

チャンボとの戦闘で見せた実力もさることながら、長は我らが思っている以上に凄い人物なのかもしれない――

そんな回想をしているを知ってか知らずか、長はテントやら何やら野宿に必要な道具をあらかた引き出すと、さっさと準備に取り掛かってしまった。


アレックス

「おいアラン!テメェもボーッとしてねぇで薪探すの手伝いやがれ!」


アラン

「今行こうと思っていたところだ!先に行ってろ!」


ともかく、長がどんな人物だろうと今は関係のないことだ。志を同じくする仲間なのだから――






あらかた準備を済ませ簡単な夕食をとると、寝るまでの暇な時間がやってきた。

長の話では、この辺りには夜盗の類はおらず、ここを通る者も少ないようなので、今日は警戒せずにゆっくりと寝られそうだ。


「もし何かあっても、私が気を張っていますから心配には及びませんよ。」


アラン

「あぁ、それは助かる。」


何から何までお世話になりっぱなしだな。

それでは、冷えてきたことだし、遠慮なく寝かせていただくとしよう。

と、長の用意してくれた寝袋に入ろうとしたときだった。


ガサガサッ


草をかき分けて近づいてくる足音。走っているのか、その音は大きく激しい。

正体不明の相手に皆はそれぞれの武器をとり構える。


ガサッ!


足音の正体は長い草を乱暴にかき分けると、ついに姿を現した。

足音の正体は、姿は人間の男のようだが、肌は青白く、人間ならざる気を感じる。赤い瞳を持つ鋭い眼や口元にこぼれる小さな牙もそう感じる原因の一つだろう。

下は柔道着のようなものを諸肌を脱いで着ており、上は柔道着の代わりにところどころ破けてしまっているベストを羽織っていた。怪我でもしたのか、腹には包帯が巻かれている。


「あなたは……」


アレックス

「テメェ!何もんだ!?」


前に出て威嚇しているアレックスとは対称的に、その姿を見た長は驚いた表情を浮かべていた。

もしや知り合いか?


ガラン

「はぁはぁ……。やっと追いついたぜ……」


その男は膝に手を突き、肩を大きく上下させている。

追いついたということは、長の里の者だろうか?それともウルフのギルドに所属している者か?どちらにしても敵意はないように見える。

しかし、質問を無視されたアレックスはその姿に逆上してしまった。


アレックス

「おい!俺様の質問に……」


「待って下さい。」


思わず愛斧――無月を振り上げるが、長に片手で制されてしぶしぶ無月を下ろす。

水を差されたアレックスはすこぶる不機嫌そうだ。そんなアレックスに構わず、長は男に近付いていく。


ガラン

「お、あんたが長か?」


「そうです。あなたは森で倒れていた方ですね?」


ガラン

「そこはほとんど記憶がないが、白にあんたが助けてくれたって聞いたんでな。お礼を言いに来たんだ。」


そう言ってニッと笑う男。見かけによらず陽気な性格のようだ。

だが、急にその笑顔を引っ込めると真顔になって長を見つめた。


ガラン

「俺の名はガラン。単刀直入に話すぜ。

――あんたらはアンモニウム大魔王を倒すために旅をしていると白から聞いたが、それは本当なのか?」


「それは……」


思わず言葉に詰まる長。

長はガランが魔族であることに気づいていた。だから、真実を伝えるべきか否かとっさに判断しかねたのだ。大魔王を倒すということは、ガランにとっての主を倒すということだから――

しかし、そんな長の配慮は王子によって崩壊した。


チャンボ

「それじゃあ、君は僕達を止めに来たのかなっ?君は魔族でしょ?」


アラン

「なに!魔族だと!?」


思わずガランを凝視する。魔族には魔族の証である“紋章”が体のどこかに必ず刻まれているのだ。

しかし、それはどこにも見当たらなかった。


アレックス

「テメェ!敵だったのか!?」


ガラン

「待て!違うっ!!」


無月を構えるアレックスを見て、ガランは慌ただしく手を振って敵意がないことを証明しようとする。

そして何を思ったのか、右手に巻いていた黒いバンダナをシュルリと外し、その腕を見せつける。そこには、魔族の証である“紋章”がくっきりと刻まれていた。


ガラン

「確かに俺は魔族だ。だが、俺はあんたらを邪魔しに来たんじゃない!協力するために来たんだ!!」


全員

『!?』


その言葉にその場にいた全員が虚を突かれた。

協力しに来た、だと?それはともにアンモニウム大魔王を倒すということか?魔族にとっての主であり、神でもある、あの大魔王を――


ガラン

「俺はアンモニウム大魔王の卑劣なやり方が許せなくてな。アンモニウム星から逃げ出してきたんだ。

だが、逃げ出す際に思いのほか力を使っちまって、この星に来た途端にぶっ倒れたみたいだな。」


「だからあの時倒れていたのですね。」


ガラン

「そうなるな。――まあ、とにかくだ!あんたらがあいつを倒すって言うなら、俺も協力させてくれ。

魔族のことならよく知ってる。仲間にしておいて損はないと思うぜ?」


――奴は嘘を言っていない。目を見ればわかる。たとえ種族は違っても、その瞳に自身の気持ちが表れるのは皆同じだからだ。

いずれ我らは大魔王を倒すために奴の星に乗り込むことになるだろう。その時、その星に詳しいものがいればいろいろと楽になる。魔族だからといって嫌悪せず、ここは仲間にしておくのが得策だろう。


アラン

「いいだろう。我はお前を信じよう。」


ガラン

「ホントか!?感謝するぜ!!」


アラン

「他の者はどうだ?」


我の独断で決めるわけにはいかない。皆がガランを認めてこそ、真の仲間となるのだから。


チャンボ

「僕は構わないよっ。仲間は多い方がいいしねっ!」


「私も賛成です。彼はきっと、私達の力になってくれるはずです。」


アレックス

「……………」


チャンボと長が同意する中、ただ一人アレックスだけは黙り込んでいた。


アラン

「アレックス、お前は?」


アレックス

「俺様はな……」


そう言いかけて、アレックスは無月を手にガランの前に近付いていく。

普段見せない真剣な表情を浮かべるアレックスにみな黙って彼の次の行動を待つ。

そして――


アレックス

「ガランとか言ったな?俺様はテメェに決闘を申し込むぜ!」


全員

『!?』


予想外の発言にアレックス以外の全員が驚愕する。

まさかあいつ、ガランが魔族だからあんなことを――?


アラン

「待てアレックス。ガランは――」


アレックス

「うるせぇ!テメェは黙ってろ!!」


アレックスの怒号に一瞬ひるむ。しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。

ガランの肩を持つわけではないが、種族が違うという理由だけで突き放すのはいただけない。


アレックス

「アラン、何を勘違いしてるかしらねぇが、俺様はこいつが嫌いだからこんなことを言っているわけじゃねぇ。」


アラン

「――どういうことだ?」


アレックス

「ただ確かめたいだけだ。こいつが、俺達の仲間になるにふさわしい奴か。――この旅について来れるだけの実力があるかどうかをな!」


アレックスは怒号の勢いをそのままにガランを見る。そのあまりの威圧感に思わずたじろいた。


アレックス

「この旅に弱い奴はいらねぇ。ただの足手纏いになるだけだからな。」


アラン

「……つまり、ガランに実力で示せといいたいのか?」


アレックス

「そうだ。」


確かにアレックスの意見にも一理ある。チャンボ、アレックス、長、そして我――アランは戦える力を持っている。それは大魔王を倒し、銀河征服を阻止するのが目的のこの旅には必要不可欠な力だ。

それを持たない者はこの旅にはいらぬ存在。言い方は悪いが、実力がない奴はただの足手纏いだ。


ガラン

「実力で示せというなら――受けて立とう!」


アレックス

「ほぅ……」


ガランは拳と拳をぶつけ合い、その意欲を見せる。その表情はなぜか嬉しそうに笑っていた。


ガラン

「相手の実力を知るには戦ってみるのが一番早い。もし俺が勝ったらちゃんと仲間にしてくれよ?」


アレックス

「いいだろう!存分に暴れてもらおうか!!」


そう言って無月の柄を地面に叩きつけるアレックス。

どうやらもう止めても無駄のようだ。


チャンボ

「面白いことになってきたねっ♪」


「どうなるか見ものですね。」


すでに見物モードに入っている二人。

――しょうがない。これもガランが受けたことだ。黙って成り行きを見守ることにしよう。


アレックス

「俺様の名はアレックス!よろしくな!」


ガラン

「オレはガランだ!正々堂々戦って、そして勝って見せるぜ!!」


ガランとアレックス――魔族とドワーフの戦いが、今始まる!

勝負の行方やいかにっ!だね♪


ガラン

「俺の勝ちだぜ!」


期待してるよっ♪

じゃあ、次回をお楽しみに~♪

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