第十二話:エルフの里の長
第十二話完成だよっ!
久しぶりの更新だなぁ…。
フェストを出てから五日。アラン達はとある森の入り口にいた。
アラン
「ここが、エルフの住む里があるという森か?」
チャンボ
「うん、そのはずだよっ。」
旅の途中で出会ったウルフの使い――ゼブラから貰った馬のおかげで予定より早く着くことができた。
まあ、早く着いたといっても、馬の足でもあれから二日も経ってようやくだ。これが歩きだったら、どれほどの時間がかかっただろうか?
アレックス
「それじゃあ早く行って、さっさとそのエルフを仲間にしちまおうぜ!」
アラン
「素直に仲間になってくれればいいがな。」
噂でしか聞いたことはないが、エルフという種族は警戒心が強く、滅多なことでは部外者を里に入れることはないらしい。争いは好まないというが、果たしてどうなのだろうな……
そんな不安を抱きつつも、アラン達は森の中へと足を踏み入れた。
森の中は薄暗かった。今は日も昇りきろうかという時間だというのに、生い茂る木の緑のせいで太陽の光は遮られている。そのせいか、少し涼しいと感じた。
森全体に神秘的な雰囲気が漂う。
アレックス
「鬱そうとした森だな…。アラン、はぐれて迷子になるなよ?」
アラン
「それはこっちの台詞だ。馬鹿力だけがとりえのお前が心配するほど、我は方向音痴ではない。」
アレックス
「テメェはいつも一言多いんだよ!!」
チャンボ
「まあまあ。落ち着きなよアレックス。」
二人が喧嘩しそうになるのをチャンボはやんわりと止める。
森に入ってからは、あたりは薄暗く道も狭いので、アランとアレックスは馬から降りて徒歩である。チャンボは馬の背に乗っていた。
チャンボの言葉に上げかけていた拳をおろすアレックス。どんな場所でも、この二人のおかげでまったくの沈黙というものがないから退屈はしない。特に、こういう静かな場所ではとても助かっている。
静寂はつまらないからねっ!
アラン
「……ん?あれは――」
森に入ってから一時間ほど経過した頃、アランは前方に何かを発見した。
森の木に混じってわかりずらいが、それは見張り台のようだった。
ようやく到着、か……?
チャンボ
「――見えた。あれが、エルフの里“アルフヘイム”だよっ!」
アレックス
「やっとご到着か。広い森だなぁ……」
アレックスはちょっとお疲れ気味のようだ。馬の背の上ではぁ、とため息をつく。途中でチャンボと交代したのだ。
アラン達はそのまま里に向かって足を進める。見張り台の上に人らしきものが見えたから、多分あっちもこちらに気づいてるだろう。
万が一戦闘になることを考え、アランは腰に挿しているトマホークの位置を再確認した。そして、ようやく里の入り口と思われる場所に辿り着く。
???
「止まれ。なんだ?お前たちは。」
入り口では手に武器を携えた数人のエルフが待ち構えていた。
???
「ここはお前たちのような奴がくるところじゃない。去れ。」
強い口調で言いながら前に出るのは、少し幼い顔立ちをした銀髪の少年だった。
エルフ族にしては身長が低く、チャンボと大差がなかった。
チャンボ
「僕達は危害を加えに来たわけじゃないよっ。とにかく話を……」
???
「黙れ!若が不在の今、この里に怪しいものを入れるわけにはいかない!
どうしても退かないというのなら――」
チャンボの言葉を遮ってそう言うと、後ろで待機しているエルフ達に右手を挙げて合図をした。
殺気を感じたアラン達は身構えた。
???
「力付くで帰ってもらう。
みんな!行く……」
???
「白、待ちなさい!」
白
「!?」
まさに戦闘が開始されるというときに、凛とした声が響き渡った。
白
「わ、若……」
銀髪の少年――白は、声の主を見てひどく驚いた顔をした。
釣られてアラン達もそちらを見ると、ロングコートを身に纏った長身の男がそこにいた。
その男は白の前まで歩み寄ると、言い聞かせるようにして言った。
???
「武器をおろしなさい、白。この争いは無意味です。」
白
「し、しかし若!こいつらは……」
???
「彼らに害はありません。…目を見ればわかります。」
男の言葉に白は納得いかないような顔をしながらも、十字架型の武器――スティレットをおろした。
それを見て、他のエルフ達も武器をおろす。
アラン
「(こうも簡単に従わせるとは……。こいつは、いったい…?)」
アランが感心と疑念の視線を向けていると、男は振りかえってアラン達を見た。
長
「ご無礼をお許しください。私はここ“アルフヘイム”の頭首の長と申します。どうぞよろしく。」
アラン
「あ、ああ……。こちらこそ。」
丁寧な自己紹介にアランは気の抜けた返事をする。
長はそんな様子など気に留めず、ほほ笑みながらアラン達を村へと促した。
長
「どうぞ、ご用件があるのでしょう?」
アラン
「何故それを……?」
長
「……感ですよ。」
長は少し困ったような顔をしたあとそう言った。
明らかに感で当てた様子はない。
アレックス
「わかってるんなら話は早いぜ!さっさと済ましちまおうぜ?」
チャンボ
「そうだねっ。じゃあ、入らせてもらうよっ♪」
疑念の眼差しを向けるアランに対して、他の二人は長に続いて、さっさと村に入っていってしまった。
疑念の眼差しが呆れに変わる。
白
「……若が決めたことだから仕方がないけど、妙な真似はするなよ。」
白は一人残ったアランにそう言うと、エルフ達を引きつれて村へと入っていった。
アラン
「妙な真似、ねぇ……。よっぽど嫌われてるらしいな。」
アランは自嘲気味にそう言うと、先に行った二人を追い掛けた。
長
「……なるほど。話は大体分かりました。」
あの後、長の家へと案内された三人は、簡単な自己紹介をした後、ここを訪れた理由を説明した。
――つまりは、長を仲間にするためである。
長
「……いいでしょう。私もあなた方の旅に同行致しましょう。」
チャンボ
「ホントッ!?」
目を輝かせるチャンボに、しかし長は「ただし」と続けた。
長
「私はこの里の頭首という身ですから、当然里の皆は反対するでしょう。
そこで――」
長は立ち上がると、弓を携えて出口へと歩きだした。
長
「証明するのですよ。里の皆に、私がついていく素質があるのか――私と勝負をしてね!」
……………
………
…
長の発言にしばし呆気にとられていた三人だったが、やがて言葉の意味を理解すると立ち上がった。
アラン
「なるほど、実力で示せということか。望むところだ。」
アレックス
「分かりやすくていいぜ!」
長
「決まりのようですね。では、こちらへ。」
三人は長の案内で部屋を出た。
長の家は里で最も大きな樹を刳り貫いて造られたものだ。
長は里を一望できるベランダに出ると、大声で言った。
長
「皆さん!練習場へ集まってください!」
長はそう言った後、理由を説明した。
アラン達と長が――決闘するということを!
長が言い終えると、バタンッ、と乱暴にドアを開けて白が飛び込んできた。
白
「若!どういう事ですか!?この里を離れるなんて!!」
相当急いできたらしく、ゼェゼェと方で息をしながら問い掛ける白。
長はゆっくりとした動きで白に歩み寄った。
長
「この世を我が物にしようと、数々の星を支配してきたアンモニウム星の王。彼らはそやつを倒すために旅をしているのです。」
白
「それがなんだっていうんですか!?赤様がいない今、この里の主は若!あなたなのですよ!?」
長
「では、アンモニウムを野放しにしておいてもよいというのですか?このままでは、すべての星が彼の手に堕ちてしまうのですよ?」
白
「ッ!?それは………」
白は何かを言おうと口を開くが、言葉にならずに黙ってしまった。
拳を握り締め、わなわなと体を震わせている。
長はしゃがみこんで白と目線を合わせた。
長
「私がここを離れる間、里のことは任せましたよ。白。」
白
「そんな……こと……」
白は今にも泣きだしそうだった。
長は静かに立ち上がると、白を置いて出口へと歩を進めた。
アラン達もその後を追い、四人は外へ出た。
アラン
「……いいのか?あいつを放っておいて。」
長
「白は強い子ですから、大丈夫ですよ。」
そう言って微笑んだ顔は、どこか悲しそうに見えた。
長
「……さあ、こちらですよ。」
そう言って歩きだす長に、アラン達は顔を見合わせると、その後を追った。
練習場というよりは闘技場という感じだった。
自然の力では出来ない広い円形のフィールドのまわりには、階段状に作られた客席が並んでいる。
その姿は、ナイトランドの闘技場にそっくりだった。
長
「ここには、弓や槍などさまざまな武器を使うものがいますから、いつでも練習できるように広く造ってあるのです。
上の見学席は、子供達が将来の参考にできればと、造られたものです。」
アレックス
「なるほどな…。」
その見学席とやらは、今は里の住人らしき人でうめつくされている。
あるものは長を讃え、あるものはアラン達に暴言を吐いている。
やはり、みんな長が里を離れることには反対のようだ。
長は練習場の中心まで歩を進めると、三人の方に振り返った。
長
「……では、始めましょうか。」
アラン
「ああ。悪いが勝たせてもらうぞ。」
アレックス
「腕かなるぜぇ!」
チャンボ
「待って、二人とも。」
ヤル気満々の二人に、チャンボは待ったをかけた。
二人がチャンボの方を見ると、チャンボは手に“マジカルステッキ”を握り一歩前に出た。
チャンボ
「この勝負。僕一人でやらせてっ。」
全員
『え!!?』
長を含めて皆が驚いていると、チャンボはさらに続けた。
チャンボ
「これはもともと僕が言い出して始まった旅だ。ここは僕が一人でやるのが筋ってものでしょ?」
アレックス
「そんな!王子を危険な目に遭わせるわけには行きません!!」
アラン
「それに、こういっては悪いが、お前は戦えるのか?」
アランは今まで、チャンボが戦っているところを一度も見ていない。だから、それは当然の心配といえよう。
しかも、その相手である長は相当な実力だと思われる。
そう言う意味も含めて、チャンボ一人を戦わせるのは気がすすまなかった。
しかしチャンボは――
チャンボ
「危険だからってなんだっていうの?この旅を始めたときから、危険な目に遭うのはわかっていたよっ!
僕はもう、誰かに守られてばかりは嫌なんだ!」
アレックス
「王子……」
アレックスとアランは言葉を失う。
チャンボのこんな真剣な目は初めて見た。
自分の父と同じ結末を迎えるかも知れないというのに、こいつは――
アラン
「……わかった。そこまで言うなら、やってみろ。」
アレックス
「アラン!?テメェなにを!!?」
アラン
「これはチャンボが自分の意志で決めた事だ。我らの勝手でその意志を無下にするわけにはあるまい?」
アレックス
「だが……」
それでもまだ納得がいかない表情のアレックス。
しかし、明らかな迷いが見て取れた。
しばしの間沈黙が走る。
アレックス
「………わかった。」
アラン
「ん?」
アレックス
「王子がそこまで言うのなら、俺様もそれに従う。
……だが!危なくなったらすぐに止めに入るからな!?」
チャンボ
「ありがとう……アレックス。」
チャンボはアレックスにお礼を言うと、長の方に向き直った。
チャンボ
「待たせちゃったねっ。」
長
「……いえ、いいのですよ。――勇気のあるお方だ。」
チャンボ
「そんなことないよぉ♪」
さっきの真剣な表情が嘘のように照れるチャンボ。
長
「それでは、いきますよ?」
チャンボ
「うんっ!」
中央で向かい合う二人。
アランとアレックスは端の方に退避した。
チャンボはおもむろに“マジカルステッキ”をかかげると、叫んだ。
チャンボ
「マジカルステッキ、モード“刀”ッ!」
その瞬間、マジカルステッキが輝きだした。
という訳で、長と戦うことになったよっ♪
アラン
「本当に大丈夫なのだろうか?」
次回は僕の実力が明らかになるよっ♪お楽しみに〜