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4.救出 其の一


 気づけば私は目に入った報告書に書かれた住所に向け、部室を飛び出していた。




    ◇




 ここに来るまでの経緯を静かに聞いていた目の前の男が小難しい顔をして少しうなった後呟くように口を開く。


「…それは結構マズいことになったな」


「ところでお嬢ちゃ…ハルはお化けとか心霊の類って信じる派か…?」


 唐突に男がそんなことを問いかける。神隠しの調査に向かったオギ君との連絡が極めて不自然な形で取れなくなった今、その背後には心霊的な存在を感じずにはいられない…いられないのだが、やはり心のどこかではその存在を否定したい自分もいる。


 私のそんな様子を知ってか「それじゃあ…」と男がもう一度私に尋ねる。



「見たことないもんは信じられへん口か?」



 ゾクリとした、図星だったのだ。


 私は男の問いに半ば震えるように首を縦に振る。それを見て、男は最初の温和そうな顔、先ほどまでの商人然とした張り付けた笑顔、そのどちらとも似つかぬ人の落ちざまを見送るような、心底愉快そうな顔を浮かべてこう言った。



「ほんなら、ハルも今日から“信じる派”や」




    ◇




 私は名を“カネノ”と名乗るあや貸し屋の主にオギ君の失踪した住宅街までの道案内を頼まれ、道中彼に神隠しについていろいろと説明を受けた。


 神隠しというものは元来、隠し神というくくりの怪異によって引き起こされる霊障の一種で、隠し神たちは特定の条件下に置かれた人間を自身の棲まう領域に引きずりこんでしまうのだという。


「まあ、現代の神隠し伝説は半分くらい嘘なんやけどな」


 大半は子供に言うことを聞かせたい大人の作った作り話やな、あれやあれ修学旅行ディズニー出禁伝説みたいなもんや。私の少し後ろをついて歩くカネノがケタケタと笑いながら例えて見せる。それにしても例えが絶妙に生々しいのがなあ…などと思っているとオギ君が消息を絶った彌伏(みふく)神社が見えてきた。


 眼前に続く長い石段の前におかれた鳥居は朽ちかけており、何世紀も前に塗られたであろう表面の朱丹(しゅたん)はほとんどが剥がれ落ち、代わりに苔むした緑色の柱に置き換わっている。青々とした木々の中に佇むこともあってかその鳥居はどこか怪しげな雰囲気を醸し出していた。


 鳥居のことなど気にも留めず、ほな行こかと歩き始めるカネノに置いて行かれないよう意を決して社へと続く石段に足をかけたその瞬間。



「「チリン」」



 鈴の音が一度鳴って、すぐにザアァァァと強風が木の葉を揺らす音に包まれた。突然吹きすさぶ風に思わず目を瞑ってしまう。目を閉じてじっと風に耐えているとだんだん周りの音がカラカラ、サラサラと乾燥した葉の擦れ合う音に変わっていく。そのうち風が弱まっていき終いにはピタリと止んだ。



 風が落ち着いたことに安心して目を開けると、私はそこがもう存在しないはずの竹林の中であることに気づいたのだった。



初めてのWeb小説ということで拙作ではありますが、週1以上で投稿できればとと思っています。応援、感想、改善点等あればお伝えください。執筆に活かしていきたいと思います。

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