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1.あや貸し屋


カンカンカンカン……


「ハァ、ハァ、ハァ…」


 急いで階段を駆け上がる私の額には大粒の汗が浮かび今にも倒れこみそうな疲労感が押し寄せる。それでもこの事態をどうにかしなければという思いが身体を古ぼけたビルの最上階へと運ぶ。三階のフロア表示を一瞥し、階段を駆け上がって最上階まで最後の踊り場に差し掛かったところで


「「きゃっ」」


 ドンッという音と共に私の身体が小さく宙を舞う。どうやら階段を降りてきた人ととぶつかったみたいだが焦りと不安でいっぱいいっぱいだったせいか相手の顔まではわからず、バランスを崩した私の身体はそのままなす術もなく階下に向かって投げ出されてしまった。数瞬ののちに襲い来るであろう痛みに備えて私の身体が強張ったその瞬間、


「やばい、タマさん!!頼んだ!!」


 大きくて鋭い男性の叫び声がしたと同時に柔らかくてふわふわとした温かさが私の全身を包み込んだ。あまりにも安心感のあるその温かさにこれまでの疲労が一気に思い出され、心配そうに駆け寄る男の影を背景に私のなけなしの意識は途切れた…。



    ◇



 次に目を覚ましたのは深いしわのついた年季を感じさせる革張りのソファの上で、状況が何一つ掴めない私は、久しぶりに感じる昼寝の後のような抜けきらない倦怠感を振り払ってあたりを見渡す。

 どこから集めてきたのか不思議に思うくらい古い家電の数々や体験したこともない昭和を無理やりにでも想起させる珠のれん、怪しげな鏡や護符など、周りに広がる景色はそこが間違いなく私の目指していた『あや貸し屋』であることを示していた…。


 自分の居場所の見当がついたので、さっそく用のあるあや貸し屋の主人を探しに部屋の中を動き回っていると事務所…というよりは家…?の扉が開いて少し慌てた様子のひょろりと背の高い男性が薬局の大きな袋を両腕で抱えながら入ってきた。


 うっすらと夕日の差し込むだけで薄暗い部屋の電気を点けて、手に持つ大きな袋を近くの小さな棚の上に置いたところで部屋を探索していた私と目が合った。


「おおお、お嬢ちゃんもう歩いても大丈夫なんか!?!?」


 少し大げさな関西弁で喋る男が心配そうに駆け寄ってくる。その少し長めに切り揃えられた金髪と季節外れのアロハシャツは気絶する前に見たぼんやりとした男の影そのものであった。


「だ、だいじょぶです!!」


 男の焦りようにつられて私も焦り気味にそう返し、今の私にとって一番大事なことを男に確認する


「ここは頼まれた依頼は“なんでも”解決してくれるあや貸し屋であってますか…?」


 質問する声音で私が依頼者であることを悟った男からは先程までの善人そうな雰囲気は消え去り、すっかり商人(あきんど)の顔をした怪しげな男がこう答えた


「お目の高いお嬢ちゃん、本日はどんなことでお困りで…?」


初めてのWeb小説ということで拙作ではありますが、週1以上で投稿できればとと思っています。応援、感想、改善点等あればお伝えください。執筆に活かしていきたいと思います。

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