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【完結】死にぞこないの猟犬は世界を知る  作者: うどん
第二章:世界を動かす者

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037:不気味な工場

 狭く薄暗いコックピッド内。

 カタカタとコンソールを叩きながらその時を待つ。

 

 暗闇の空には分厚い雲が掛かり、月や星の光を遮断している。

 一雨降りそうな気配はするが、天候が急激に荒れる心配は無い。

 稲光もせず強い風が吹いているだけだ。


「……」

 

 黙ったまま手を動かし続ける。

 ディスプレイに表示される情報を確認しながら、俺は周囲を警戒する。

 

 作戦エリア外に存在する丘の上。

 見晴らしの良い此処に立てば、風が機体を揺らして砂粒がバチバチと機体を叩く。

 草一つ生えていない荒れ果てた荒野の遠い先には、砂粒ほどの大きさにしか見えない白い建造物が密集した生産工場がある。

 機体のセンサーで拡大すれば、少し画質が荒いがしっかりと確認できた。


 周囲に障害となるようなものは存在しない。

 真っすぐ行けばすぐに作戦エリアであるが。

 それは逆に言えば、遮蔽物が無いが為にすぐに敵に発見されるという事だ。

 エリアに侵入すれば、先ず、敵から警告を発せられるだろう。

 それに応じなければ、すぐに敵の警備部隊が襲ってくる。

 奴らを蹴散らして、俺は生産工場内部へと侵入する。

 内部にも警備システムは当然ながら存在している。

 だが、此方にはジョンから渡された情報があった。


 ヴァンによれば確認も出来ていて。

 不審な点も無ければ、手に入れた情報の中では誤ったものも無いらしい。

 最も、この短期間で情報が上書きされている可能性もある。

 だからこそ、ヴァンも用心して向かうように言っていた。


 今回の作戦では、俺が単機で向かう手筈となっている。

 それがジョンからの唯一の指示であり、同行は誰であろうと認めないらしい。

 イザベラは怪しんでいたが、一度受けたのなら拒否する事も出来ない。

 俺はその指示に従って一人でやって来て、その時を待っていた。

 

「武装リンク……マニュピレーター感度……索敵システム……エネルギー回路……よし」

 

 作戦開始時刻が迫っている。

 それまでに、俺はシステムを念入りにチャックしていた。

 相手はSAWであり、奴らの管理下にある工場を襲撃するのだ。

 用心に越した事は無く、それでもまだ足りないと思うほどだ。

 警備システムの大体が把握できたとしても、内部で何が待ち受けているのかは誰にも分からない。

 もしもだ。もしも万が一、この作戦がバレていて。

 内部に伏兵が待ち構えていたとしたら……考えただけでもゾッとする。


「……」


 手を止める。

 そうして、眉間に皺を寄せながら息を吐いた。


 考えても仕方のない事だ。

 何が待っていようとも、俺がこのまま引き下がるという選択肢はない。

 引き受けた依頼を達成できない限りは、ジョンから情報を貰えないのだ。

 その情報がどれだけの価値があるのかは分からないが……それが無いと、俺たちはこれ以上先に進めないような気がする。


 コンソールをゆっくりと後部へと戻す。

 そうして、レバーを握りながら指のボタンを順番に押す。

 そうして、両手両足を軽く動かしてからスゥっと息を吸う。


「……戦闘システム起動」

《音声コマンド認証。戦闘システム起動》

 

 コックピッド内に光が満ちていく。

 コアが本格的に稼働し始めて機体全体にエネルギーが駆け巡って行く。

 冷えた機体内がゆっくりと温まって行くのを感じる。

 俺はディスプレイに映る映像を見てから腕時計を確認した。


 秒針は刻まれて行き――時間だ。


 俺は深呼吸をしてから、キッと前を睨みつける。

 そうして、指のボタンを押しながらペダルを踏んで跳躍した。

 丘の上から飛び上がれば砂が巻き上がり、金属の塊が宙を舞う。

 そうして、一気に丘から飛び上がった俺は地面へと勢いよく着地した。


 地面の砂が大きく巻き上げられる。

 俺はそれを無視してそのまま加速し、地面を疾走していく。

 砂が激しく巻き上げられて、暗闇の中でも音で全てが分かった。

 闇夜に紛れての襲撃だが、遥か先の工場だけは光で溢れていた。

 既に深夜であるが、周辺には人が住むような場所は無い。

 だからこそ、あそこだけは二十四時間光で満ちていた。

 休むことも無く稼働していられるのは、全ての管理を機械が行っているからだ。

 時折来る人間は、そんな機械の最低限のメンテナンス要員で。

 後は工場の状況を把握する為に送られる連絡要員と補助監督員だ。


 この時刻には人間はいない。

 警備の要となるロボットやドローンの大半も、定期メンテナンスを受けて暫くは動けない。

 僅か一時間ほどの警備の穴であり、外部には決して漏れる筈がない情報だ。

 それを見つけ出したのはジョンで……本当に何者なんだ。

 

 最低限の警備は残っているが。

 全てを相手にしないで済むだけマシだ。

 人間はおらず機械だけであり、狙うのであれば今日だ。


 荒野を疾走しながら、俺は周囲を索敵する。

 念の為ではあるが、敵影は確認できない。

 間もなく作戦エリアであり……入ったな。


 作戦エリアに入った事をシステムが知らせて来る。

 それを受けながら暫く走らせて――通信が入る。


《不明機に告ぐ。直ちに当エリアより離脱せよ。繰り返す。直ちに――》


 無機質な自動音声であり、聞く必要の無いそれを無言で切った。

 そうして、速度を上げて駆けて行く。

 工場が肉眼で少しだけ視認出来るようになってきた。


 瞬間、システムが警告を発した。


 今の状況に変化が現れる。

 センサーで確認をすれば、俺から近い場所にある建造物の上部が展開し。

 その中から無数のドローンが放たれていた。

 そうして、工場内の建造物に格納されていた迎撃装置が展開された。

 拡大して確認すれば、大型の射撃ユニットであり見た事が無い形状だ。

 背部の動力部らしき部分から青い光が漏れている。

 恐らくはエネルギー兵器で――来るッ!


 飛んできたドローンを見る。

 円盤状のそれの下部には銃器が取り付けられていた。

 システムが警告を発している中で。

 己の勘を働かせて機体を操作した。

 

 瞬間、迫って来たドローンは一斉に此方へ向けて攻撃を放つ。

 長細いバレルから放たれた青い光が瞬きの合間に地面に当たる。

 背後で物が蒸発するような音が無数に聞こえた。

 小型ではあるが、威力は本物の様だ。


 俺はニヤリと笑いながら。

 機体を左右に揺さぶる。

 相手の狙いを外させる様に仕向ける。

 敵はそんな俺を冷静に狙っていた。


 

 放つ――横にスライドした。


 放つ――前方にブースト回避。


 時間差で放つ――機体を回転させながら跳躍し回避。


 地面に着地して――悪寒が走る。


 

 レバーを一気に動かしペダルを踏みつけた。

 そうして、機体を左にブーストさせれば。

 機体スレスレに太いエネルギーの線が駆け抜けていった。

 すぐ近くでバチバチとスパークするそれ。

 高出力のそれによって機体内の熱が一気に高まったように誤認するほどだ。

 額から流れた汗が頬を伝い、チラリと背後を確認すれば黒焦げになった地面が見えた。


 一溜りも無い。

 あんなものを喰らえば――即死だ。


 警戒心を跳ね上げる。

 そうして、ドローンからの攻撃を回避しながら武装を向ける。

 両手に装備した強襲型ライフル。

 それを左右に向けながら――ボタンを押す。


 ガラガラと音を立てて弾丸が放たれた。

 空薬莢が舞い、空中を赤熱する弾丸が飛ぶ。

 ドローンは回避行動を取ろうとした。

 が、それを予測する様に銃口を逸らす。

 すると、回避しきれなかったドローンに弾が命中し――爆ぜた。


 派手な音を立てて内包されたエネルギーの粒子が周囲に飛び散る。綺麗な花火だ。

 それを確認しながら、今ので二機撃墜した。

 空中にはまだ十機のドローンが飛んでいる。

 工場との距離はまだ離れているが……問題ない。


 時間差での攻撃に切り替えたドローンたち。

 機体を左右に振りながら、ブーストを繰り返し回避。

 直感が働いて心の中の警鐘が聞こえれば、攻撃を中断して機体を一気にブーストさせた。


 その瞬間の再び凶悪なレーザー攻撃が放たれる。

 全てを焼き尽くす竜の息吹の如き一撃が。

 地面を黒く焦がし尽くしていった。

 

 ギリギリであり、少しでも反応が遅れればすぐにお陀仏だ。

 俺は心臓の鼓動が早まるのを感じながら機体を動かし続けた。

 攻撃を放とうとするドローン。

 それを見つめながら、攻撃の瞬間を計算し――回避。


 放たれた瞬間に機体を跳躍させた。

 そうして、ドローンは攻撃の直後で動けない。

 俺はそんな敵に銃口を向けて――機体を回転させた。


 背後より忍び寄った敵ドローン。

 一気に仕留める為に放たれたそれらが俺の胸部を掠めていく。

 システムが警告を発するが無視。

 俺はそのまま銃口を左右に向けて――弾丸を放つ。


 機体を回転させながら、マズルフラッシュと共に放たれた数十発の弾丸が。

 回避する事も出来ないドローンへと迫る。

 そうして、スローモーションに感じる世界で。

 弾丸がゆっくりとドローンにめり込んでいくのを見る。

 メリメリと装甲を突き破り、破片が周囲に飛び散って――爆ぜた。


 青い炎を噴かせて、それから黒煙が上がる。

 ゆっくりと地面に落下していくそれを一瞥し。

 地面に着地しようと――ブースト。


 ペダルを踏みつけて加速。

 一気にシートに体を押し当てられて。

 それでも尚、更なる加速に挑戦した。


 ブーストの連続使用。

 それによる体への負荷は相当なもので。

 体全体から嫌な音が聞こえるのを無視して歯を食いしばる。


 大型のレーザー兵器の光が強さを増す。

 またしても重い一撃を叩きこむつもりで――来るなら来い。


 俺は笑みを深めながら、ブーストしながら加速する。

 極限まで速さを高めながら、地上を疾走。

 

 そうして、一気に前へと駆けていき――頭部スレスレにレーザーが通過する。


 避けれた。いや、少し掠ったか。

 映像が僅かに乱れながらも、機体を屈めて強引に回避した。

 そうして、一気に工場へと近づいて――跳躍。


 巨大な工場をハッキリと確認し。

 高く積まれた壁を超えようと飛び上がった。

 機体は既に加速状態であり、レバーを全力で起こしながら上昇する。

 ガタガタと揺れて激しく抵抗するレバー。

 それをしっかりと握りながら、力一杯に引いて――超えた。


 巨大な壁を超えて、機体の向きを変える。

 そうして、展開された状態のレーザー砲をロックオンする。

 肩部のキャノン砲を起動して狙いをつけ――放つ。


 肩部に装備された中型キャノン砲。

 それが咆哮をあげて砲弾が飛翔する。

 機体全体に強い衝撃を感じて、ビリビリとレバーが振動する。

 真っすぐに飛んだそれがレーザー砲の動力部に接触し貫いた。

 そして、一気に爆ぜたそれは青いエネルギーの粒子を飛び散らせた。


「これで安全に帰還できる」


 退路の安全を確保して。

 機体の向きを戻して内部へと降りていく。

 何処から狙われるかも分からない状況の中で。

 地面へと着地して、アスファルトの地面を滑って行く。


 センサーで確認すれば、存在するのは何かが入っているコンテナや。

 運搬用の無人機械くらいだろうか。

 ジョンの情報通り、警備ロボットたちは表で稼働していない。


 施設内を進みながら、索敵を開始する。

 障害物を避けて、別れ道に差し掛かり左へと進んで――あれか。

 

 侵入経路の手前にあるゲートを発見した。

 簡易的な作りであり、俺は機体を加速させてそれを弾き飛ばした。

 バラバラとゲートの残骸が飛び散って、俺は尚も進み続けた。

 

 ……恐らく、建物内部へと通じる道は固く閉ざされているだろう。

 

 侵入するのは困難な気がした。

 ジョンの情報でも、渡されたパスが無ければ入る事は絶対に出来ないと記載されていた。


「……もういいな」


 侵入は成功した。

 俺は仲間へと通信を試みた。

 相手はヴァンであり――繋がった。


《よぉ、侵入出来たか?》

「あぁ、後は内部に侵入するだけだ……ハッキングは出来そうか?」

《ちょっと待ってくれよ……よし。多分、問題ない。そのジョンって奴がくれたパスは使えそうだ。ほら、前を見てみろ》


 地上エリアを走っていれば、前方に封鎖されたゲートが見えた。

 しかし、ヴァンが前を見ろと言った瞬間に赤いランプは青色に変わる。

 そうして、重厚な扉は開かれて内部へと侵入できるようになった。

 俺はヴァンに感謝しながら内部へと入って行く。


 この生産工場が何を作っているのかは正直分からない。

 表向きにはエネルギー兵器用のカートリッジ型のバッテリーを作っているらしいが……怪しいな。


 バッテリーの開発はSAWの特許技術のようなものだ。

 誰にも真似できない技術であり。

 SAWも自社の技術の価値を理解しているからこそ、警備を厚くしているのだろう。

 だが、それでもたかがバッテリーの開発だ。

 それも此処は既に開発済みのバッテリーを大量生産する為の工場で。

 機械たちは予めプログラムされた通りにバッテリーを作って行くだけだ。

 重要な研究資料も、素材となるものについて書かれた設計書も置いていない筈なのに……どうして此処まで警備を厳重にする?


 世間一般でSAWによって作られているバッテリーと同じだ。

 それらの解析は他の企業も既に試している筈で。

 それを解析できなかったのなら、此処を襲撃しても手に入る情報はほぼ無いと言える。

 

 知られたくない何かがあるのか。

 それとも、この施設には別の何かを隠して……いや、今は良い。


 この怪しげな施設についての考察は後回しだ。

 重要なのは任務を達成する事で。

 それまでは無駄な思考に費やしている時間は無い。

 既に俺の侵入は検知されていて、メンテナンス中の機械をすぐに復旧させて来るだろう。

 それがどれだけの時間で終わるかは分からないが。

 あまり時間を掛けていてはダメだ。


 施設内部に侵入すれば、大きな通路には光が灯されていく。

 施設内に設置されたスピーカーから警告音が響いていて。

 侵入した俺に対して投降を事務的に呼びかけていた。

 意味の無い呼びかけであり、俺はそれを無視しながら奥へと進んでいった。

 

 

 通路の奥へと続く道を進んでいけば、下へと繋がる昇降機を見つけた。

 巨大な何かを運ぶ為の台座であり、起動すれば下へとスライド移動していくのだろう。


「ヴァン見えているか? これを動かしてくれ」

《あぁ分かった……よし。どうだ?》


 ヴァンがカタカタとコンソールを叩く。

 そうして暫く待てば、昇降機から音が鳴る。

 ゆっくりと下へと進み始めて、上手く行ったのだと分かった。

 マップを開きながら確認すれば、この昇降機を使って降りていき。

 最短距離で進んでいけば、目指すべきバイオリアクターへと繋がっている筈だ。


 俺たちの計画では、バイオリアクターをそのまま破壊するのではなく。

 オーバーロードさせて大爆発を起こさせる計画だ。

 システムを弄り、出力を限界まで引き上げてしまえば後は勝手にそうなる。

 問題なのはオーバーロードするまでの時間であり。

 その間にこの施設から離脱する必要がある。


「……失敗すれば死ぬだけだ」

《おいおい。そんな縁起でもない事言うなよ……帰って来いよ。絶対だからな!》

「……あぁ、分かった」

 

 俺は少し笑う。

 そうして、ヴァンの言葉に返事をして――昇降機が止まる。


《不正なアクセスを検知。侵入者を迎撃します》

《――ッ! まずい。すぐに戻す! それまで耐えてくれ!》

「あぁ頼む!」


 赤いランプが点灯し、警報が鳴り響く。

 索敵して確認すれば、地下へと繋がる道には隔壁が展開されてしまっている。

 これでは動く事は出来ず、立ち往生だ。

 そんな中で、壁から何かが現れ始めた。

 小型の銃器であり――ッ!


 嫌な感じがした。

 その瞬間に、俺は後ろへと下がる。

 サブスラスターを噴かせて背後に後退すれば、壁のそれからレーザーが発射された。

 細長いそれが一気に迫り、台座を黒く焦がす。

 穴は開いていないが、それは台座自体が丈夫に設計されているだけで。

 もしも、機体に何発も当たれば深刻なダメージに繋がるだろう。


 銃器には赤い光を放つセンサーがある。

 アレからの視線を辿りながら、己の勘を頼りに回避しなければならない。

 見ただけでも十個ほどはありそうであり……危険な仕掛けだ。


 情報が無ければ死んでいたかもしれない。

 ジョンに感謝であり――回避。


 床をスライドしながら移動し避けていく。

 空気を焦がすよう音が聞こえれは、次の瞬間には床に黒い焦げ跡がある。

 連続して放たれたそれが俺の移動した軌跡を黒く塗り潰す。

 チャージしてから放つそれは、タイムラグがあり凡そ五秒ほど。

 同時に放たれれても、時間差での攻撃も脅威。

 俺は浅く呼吸を繰り返しながら、視線を動かしながら回避していく。


 次、次、次、次次次次――次ッ!!


 大きな台座の上とは言え。

 開けた空間では無いからこそ制限がある。

 そんな中で、床をスライドして移動し。

 壁に当たりそうになれば、そこを蹴りつけて飛び跳ねる。

 空中を回転しながら、銃弾を発射して壁のレーザー兵器を破壊する。


 避けて撃ち、破壊。

 回避し跳躍し、破壊。


 それを繰り返して行き――ランプの色が変わる。


 赤色から青色へと変わり。

 閉じられていた隔壁が開き始める音が聞こえて来た。

 展開されていたレーザー兵器も停止して。

 俺はヴァンに通信を繋いだ。


《ナナシ! 無事か!? 何とか間に合わせたぜ!》

「あぁ、助かった」

《これから先も何かあるかもしれない。油断するなよ!》


 ヴァンはそう言う。

 俺はその言葉に返事をしながら、下へと視線を向ける。

 警備が手薄な時間帯を狙ったとはいえ。

 この程度の障害は予測していた。

 が、何だこの感じは……この下から何かを感じる。


 嫌な気配であり、まるで俺を待っているかのようだ。

 何がある。バイオリアクターじゃないのか?


 不穏な気配に怯えながら。

 俺は汗ばんだ手でレバーを握る。

 恐怖を感じるのは悪い事じゃない。

 何も感じ無くなればそれは死んでいるのと同じだから。


 ……確かめるしかない。


 嫌な気配を感じるが。

 手ぶらで帰還する事は出来ない。

 依頼を果たして無事に帰って見せる。

 そう俺が決意すれば、昇降機は再び下へと進み始めた――

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