第二話 『人間をやめよう』
二話目です。
長い長い説明パートも、残すところあと少し。
「二本が一本になった」=足を一つ失った僕に、「そいつ」は
話しかけてきた。
「まぁ、落ち着けよ、食ったりしないから、よ」
…どういうことだ?
逆に混乱する。
しかし、そんな僕を気にせず、「そいつ」はー存外気さくにー話し続ける。
「早速だが、お前には今から『選択』をしてもらう」
そして、小瓶を差し出してきた。
ー紅い、紅い液体の入った。
(なんだこれは…)
その疑問に応えるように、「そいつ」はまた口を開く。
「単刀直入に言う。お前には、『それ』を飲むか、否かの選択をしてもらう。お前が決めるまでは、俺は手を出さないと約束しよう」
…つまり、選んだ後は殺される、ということか…
飲むか否かの決断よりも、そのことの方が重要事項だった。
しかしー。
「どうせ、『結局殺される』とか思ってんだろ」
「…っ」
「そいつ」は、僕の考えていることをあてて見せただけでなく、
「…もし、お前が『飲む』を選択したなら、[俺はお前を殺さない]と約束しよう」
「な…!」
この時、僕の心には、2つの考えが浮かんでいた。
1つは、「こいつを信じてもいいのか」という気持ち。
この気持ちは、とても大きい。「あんな目」に遭って、目の前に返り血で服を作っているほどの化け物が居て、この気持ちを抱かないものはいないだろう。
しかし、2つ目の気持ちー「生き延びたい」の方が、遥かに大きかった。
そして、僕はー。
「…む」
「ん?どうなんだ?飲むのか?飲まないのか?」
「飲む…」
「そいつ」はとても嬉しそうな顔ー子供のおねだりが叶った時のようなーを、した。
「そうか…!そんなお前に良いお知らせだ。」
決断して、力が抜けている僕に、「良いお知らせ」が入る。
「なんだ…それは」
「お、興味あるか?
それはな…
『人を超越する力』。それを、お前にやろう」