8:協力関係
「おはよー由芽!…なんか元気ないね?」
教室に入ると、舞が飛び付いてきた。
目をクリクリさせていて可愛い。
「そう?疲れてるだけだよ、多分。」
そう答えると、舞は安心した様子で離れた。
「なら良いけど。もうすぐチャイムも鳴るし!また後でねー」
舞はそう言って席についた。
私も自分の席についた。
教科書やノートを引き出しに入れ、先生が来るのを待った。
「おい、神崎」
隣の席の佐藤に声を掛けられ、私は適当に返事をした。
「話あるから放課後、教室に残れ」
「え……うん」
私の返事と同時に、先生が教室に入ってきた。
話ってなんだろう?
伊藤先輩の事……かな?
休み時間になり、その事を舞に話すと、一瞬黙り込んだけど、すぐに顔を輝かせた。
「告白じゃん!!?」
「ばっ!ばか!んなわけないでしょ!?」
私は、軽く舞の背中を叩き、下を向いた。
「いやぁー?わかんないかもよぉー?楽しみー♪」
面白がってるし……まあ良いけど。
でも、佐藤のさっきの顔を見たら、告白かも?って思っちゃうよね?
なんかどきどきしてきたぁ!
「起立!礼!さようなら!」
号令が終わると、各自さまざまな行動をとった。
舞はテニス部だ。
これから練習もあるからその準備をしている。
私は部活に入っていないから、約束通り、教室にいる事にした。
「由芽ーまた明日ねー♪」
そう言って教室を出ていった。
それから五分が経った頃、教室には私と佐藤が残っていた。
お互い黙っていた。
そんな空気を振り払うように、佐藤が話を切り出した。
「あのさ……神崎は新垣先輩の事が好きなんだろ?」
「う……うん」
なんかドキドキする。
「伊藤先輩もさ、新垣先輩の事…好きなの知ってる?」
「し……知ってるよ?」
ぎこちない返事を返す。
「実はさ……俺、伊藤先輩───凛の事が好きなんだ」
「ふーん……って…えぇ!?」
じゃあ、伊藤先輩に告白した年下の人って佐藤!?
「俺と凛はさ、結構仲良かったんだ。そしたら、次第に凛に惹かれていってさ……」
そうなんだ…。
「だからさ!俺はお前に協力するから───」
「私もアンタに協力しろ……って事?」
「うん……」
でも、そしたら私……冬香ちゃんにも、伊藤先輩にも恨まれそう……。
それに……伊藤先輩にこの前、新垣先輩の事、好きじゃないって言っちゃったし。
「頼む!!」
佐藤は土下座してきた。
そこまでする……?
なんか可哀相になってきたなぁ……。
「……わかった!協力する!それで良い?」
「あっありがとう!!」
佐藤は体を起こして、私の手を両手で掴んできた。
「ちょっ!何すんのよ!?」
「あ……ゴメン」
でも、佐藤ったらちょっと可愛いかもって思った。