7:過去
「アハハー!ごめんね由芽子〜」
「いえ……」
あの後、冬香ちゃんは手まで出そうとしたし、私が思いっきり怒鳴りつけたらみんな黙った。
これ以上うるさくされたら迷惑だし、伊藤先輩を私の部屋に連れていった。
「そんな怒らないでよぉー!あっ!そーそー。由芽子、アンタ佑介の事好きなの?」
「……え?」
うそ?なんでそんな事?
「何でですか……?」
「んー?いやぁ……何となく……。で?どーなの?」
伊藤先輩が真剣な表情で私を見る。
「…………そ、そんなわけないですよぉー?アハハー…」
「そ?わかった」
伊藤先輩はすぐに満面の笑みを浮かべた。
「じゃあ……由芽子の言葉、信じるから」
伊藤先輩はそう言ってベットに寝転んだ。
「……あたしさぁー佑介と幼なじみでさぁー…。小学生の頃から好きだったんだぁー…。中一の時、佑介に告ったらOKしてくれたんだぁ……。すっごい嬉しかった」
伊藤先輩は弱々しい声で言った。
「付き合ってて一ヵ月くらい経った時に、年下の子に告られたんだぁー…。その時、仲が良かった冬香に相談したの。相談した次の日、私が年下の子を口説いたって噂が流れててさぁー…。そしたら佑介に、友達のままでいようって言われちゃってさ…。そしたら冬香と佑介が付き合う事になってたんだぁ…」
「え……」
「冬香もさ、佑介の事が好きだったらしい。噂を流したのも冬香らしいんだけど……。だから、ドロボー猫って言ってるんだぁー…」
「……」
「アハハ、ごめんごめん。空気重くなっちゃったねぇー!」
伊藤先輩は手をひらひら振って笑っていた。
つくり笑いなのがすぐわかった。
「先輩は……噂の事、否定しなかったんですか?」
「否定……できなかった。……佑介が、噂を信じたって事にショック受けてさ……」
伊藤先輩は、下を向いてしまった。
そんな重い空気を消し去るように、伊藤先輩は立ち上がった。
「帰るわー!暗くなってきたしぃー!じゃっ!」
伊藤先輩は、そのまま部屋を出ていってしまった。