5:止められない想い
「たっだいま〜♪」
冬香ちゃんがご機嫌の良い声をだして、私の部屋にノックも無しで入って来た。
「おかえりなさい。機嫌良いね?どうしたの?」
手をつないだ現場を見てから、完全に頭がパニックになっていたけど、伊藤先輩とのメールのやりとりで、少し落ち着いた。
伊藤先輩は、お風呂に入ってくる。と行ってしまったし、今まで読書をしていた。
「エヘヘ♪わかるー?実はぁ……彼氏に指輪もらったんだぁ♪おもちゃのだけど!」
ジャーン!っと言って、冬香ちゃんは指輪を見せ付けた。
冬香ちゃんの大好きな色──薄いピンク色の指輪だ。
「冬香ちゃん、彼氏いたんだ?誰ー?」
それとなーく聞くと、冬香ちゃんは目を輝かせて言った。
「新垣佑介って言うの!私から告白したら、すぐOKしてくれたの!!うふふふふん♪」
うざいくらいニコニコ笑顔で言った。
やっぱり……付き合ってるんだ……。
…………。
「それでね!明日学校休みじゃん?佑介が家に遊びにくるの!」
「……え?」
「だから由芽!邪魔しないでよね!?」
冬香ちゃんは、そう言って部屋を出ていった。
明日……来るんだ……?
そっか……。
翌日。
ピンポーン!
お昼ご飯を、台所で片付けていると、インターホンが鳴った。
冬香ちゃんは、慌ただしく玄関に行った。
玄関のドアが開く音がする。
なんだか話し声がする。
声がどんどん近づいてくる。
台所とリビングはつながっている。
だから、リビングに来るつもりなんだろう。
ガチャ
リビングのドアが開いた。
「おおー、綺麗だなぁ。……あれ?神崎さん?」
「あ……こんにちは。ごゆっくりして行って下さいね」
新垣先輩と冬香ちゃんが並んでいるのを、見ていたくない……!!
「あっ!待って由芽!お茶とお菓子出してくれる?」
冬香ちゃんがそう言うなら……出すしかないよね……。
テンション低めでお茶を出した。
お菓子あったっけ?
「冬香の部屋は綺麗なのか?」
「佑介のために綺麗にしたわよ!」
リビングで楽しそうに話す声が聞こえる。
羨ましすぎる……!
あれ?ここにクッキー置いておいたのに……ない!
どうしましょ……。
お菓子……待ってるよね?
じゃあ、作っちゃおうかな?クッキー。
アピールできるチャンスだし!
「ありゃりゃ……」
ちょっと固いし焦げてるし!
星やハートの形のクッキーを作った。
食べれるけど……大丈夫かな?作りすぎちゃったし!
まあいいやー!
「お……お待たせしました〜。お菓子なかったから、作っちゃった」
「おー、ありがとー由芽!」
「おいしそうだね、ありがとう」
やば……涙でてきそう。
「うん!美味しい!」
新垣先輩が、そう言ってぱくぱく食べてる。
すごく嬉しい……!!
泣いちゃいそう。
「あ……部屋に戻るね!二人ともごゆっくり!」
あわてて部屋に戻った。
「ふぅ……」
やっぱり、私……
諦められないよ……!