3:一安心
それからの授業には全然力が入らなかった。
あの二人……付き合ってるんだ……。
まあ、私みたいな子相手にされないのは当たり前だけど。
キーンコーンカーンコーン
四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「起立!礼!着席!」
日直の挨拶が終わったと同時に、みんな動きだした。
そういえば辞書返してない!
どーしよお……。
何組かもわかんないし……。
名前もわかんないし!!!
「由芽子〜〜!ちわーっす☆」
あっ!伊藤先輩だ!
「先輩!こんにちわ!あの……さっきの男子の先輩の名前ってわかりますか?」
「あー!新垣佑介ね!」
あっ……。
そういえばあの時、佑介って言ってたもんね……!
伊藤先輩に聞きたいなあ……付き合っているのか……!
「ありがとうございます!あの……。伊藤先輩って彼氏いますか?」
「彼氏ー?いない、いない。好きな人はいんだけど……。そいつ彼女いるし」
……?
あれ?
付き合ってないの?!
ぃょっしゃぁぁぁぁっ!
「私!先輩の恋、応援します!」
そう言うと凛は、由芽の手を握り、顔を輝かせた。
「あっりがちょー!!!じゃあ、私も由芽子が好きな人いるんだったら相談のる!いるの?」
「……あ、はい。気になってる人なら……。」
「マジ!?じゃあ今日携帯にメールするから、アド教えて!」
「はいっっっ!」
由芽は、ポケットに入れておいた小さい紙に、アドレスを書いて渡した。
「あっ!辞書返しといてあげるわ!じゃあねーん!」
凛は、辞書を掴み取り、そのまま走り去ってしまった。
由芽は、スキップしながら給食の準備に入った。