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小さな恋心  作者: 華帆
12/14

12:それぞれの想い

佑介は階段をゆっくり下って行った。

あれから凛に引き止められたが、帰る。と言って抜け出した。

教室に忘れてしまったバックを手に取り、廊下を歩いた。

佑介が向かった先は、図書室だった。

ドアノブに手をかけ、入ろうとした瞬間、

「───佑介?」

後ろから、聞き覚えのある声がした。

振り向くと、冬香が不思議そうな顔をしていた。

凛じゃなかった事に安心して、ほっとした。

「何してるの?」

冬香は首を傾げて聞いてくる。

その仕草に、つい顔が赤くなってしまい、顔を手で隠しながら答えた。

「いや……それより、一緒に帰ろう?」

「うん……いいけど……どうして顔、隠してるの?」

悪戯っぽい声で聞いてくるのに、また顔を赤くした。

「わかったぁ〜♪照れてるんでしょー?可愛いー♪」

「う……うるさい!とにかく帰るぞ!」

冬香はハーイと言って佑介の横に立った。

「……そんなの、お前が可愛いからに決まってるだろ……」

小声で言うと、冬香は照れた顔を隠さず、

「ありがとう」

と、最高の笑みで言った。

二人は手をつなぎ、階段を下って行った。





「────!!」

見てしまった。

見たくない光景を、見てしまった。

早く階段を下ろう。

そう思っているのに、凛の足は動かない。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!

雄麻が冬香と仲良く話しているの……見たくなかった。

だから、早く階段を下ろうって……!!

なのに、足は動かない。

呼吸が乱れてくるのを感じる。

手をつないで、幸せそうに歩く二人なんか見たくない!!

咄嗟に、凛は走りだした。

階段を昇って昇って……一年生の教室に逃げ込んだ。

何組かはわからない。

だけど、そんなのどうでもいい。

体の震えが止まらない!

止まれ止まれ止まれ!!!

そう願いながら凛は、ぽたぽたを涙を流した。

「───凛?」

誰かの声が聞こえた。

頭がぼーっとして、よくわからない。

顔をあげると、雄麻に似た少年が、手を差し伸べていた。




「───え?」

何で、そんな事を佐藤が知ってるのよ?

その気持ちを悟ったのか、佐藤は静かに口を開いた。

「凛から聞いた。───いや、凛から俺が聞き出したんだ」

「ど、どういう事……?」

私はおそるおそる聞くと、

「───好きだから……神崎の事」

佐藤がそう言ったと同時に、図書室の扉の、汚れた窓から、新垣先輩の姿があった。

来てくれた……!?

私は、今の状況を忘れて、ドアを開けた。

そこで見たのは───新垣先輩と冬香ちゃんが、手をつないで階段を下る所。

わかってはいた。

二人は付き合ってるんだから……!!

だけど───!

悲しみが怒りが混じり、私はあてもなく走りだした。


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