平野2・日光集約施設
「こんな所にあるとは」
その小屋は、何枚もある中で端っこの鏡の裏側にありました。
何かを管理するため、と言うよりは誰かが住むために作られた部屋らしく、生活感たっぷりの室内に不思議な絵が掲げられています。
「これって……」
その絵はこの周辺を簡略化して描いたものらしく、上に空とお日様、下に地面と鏡、そして鏡から少し離れた所に家らしきものが描かれています。
これだけなら普通の絵ですが、不思議な部分は、お日様から鏡、鏡から家、家から絵の外へと太い線が引かれており、なんとその線が光っているのです。
「急に絵をじっと見つめながら黙り込んで、どうしたんだ? 妹よ」
「お姉ちゃん、ここはたぶん違うと思います」
私は、何となくこの絵が示す意味が分かった気がするので、それをお姉ちゃんに伝えました。
「この鏡は、おそらくお姉ちゃんの言う通り、お日様の熱を集めるものなのでしょう。そして、集められた熱は別の場所に送られているようです」
この部屋は鏡の真下にあるので、絵に描かれた家とは別物のはずです。
「そこまで分かるものなのか。凄いな、妹は」
「今回は偶然ですよ。たぶんそれほど遠くはないはずなので、もう一度探してみましょう」
「分かった」
外に出て捜索を再開したのですが、行くべき道の手がかりはあっけなく見つかりました。
鏡の裏には太い管が繋がっており、その管が一ヶ所に束ねられて一方向に伸びていたのです。
さっきまでなら気にも留めていなかった事も、今ならその意味を理解できます。
「ここも、室内にしては明るいですね」
「確かに、ここは何かあるな」
管の先にあった施設には、以前集合住宅にあった装置に近いものがたくさんありました。低い駆動音が大合唱しています。
「何か分かりそうですか? お姉ちゃん」
「そうだな。調べてみる」
そう言って奥に入っていったお姉ちゃんを待つ事しばし。
「これでどうだ!」
お姉ちゃんの声が聞こえた次の瞬間、本当に中の明かりが消え、音も聞こえなくなりました。
「ふぅ。今回も、妹のお陰で無事消せたな」
「でも結局、お姉ちゃんに任せっぱなしです」
「それは役割の違いと言うだけの事だ。事実、ワタシ一人なら、ここにすら辿り着けていなかっただろう」
「……そうですね。この調子で、無事に試練を達成しましょう。二人で」
「もちろんだ!」
これが私にできる、自分の役割。
それが行動で示せたのならば、私は少しずつでも前進できているのかも知れません。
そんな事を考えながら、私達は次なる未踏の地に向かって進み始めました。