都市2・不思議な食糧庫
原動機付き荷車に乗り、私達は進み始めました。
「お姉ちゃん、よく普通に動かしてますね、これ」
「動かし方はそれほど難しくはないぞ。妹もやってみるか?」
「遠慮しておきます」
順調に進んでいるのは良いのですが、進めど進めど謎の大きな箱ばかり。
「このずっと並んでる大きな箱って、一体何なのでしょうね?」
「ああ、あれは人間用の住居らしい。妹が寝てる間にひとつ覗いてみたが、細かな差はあれワタシ達が使っている家具らしき物があった」
「へぇ、これがこの世界の人達が住んでいた家なんですか。にしてもずいぶん大きいですね」
「あれはどうやら、家がいくつも重なってできてるようだ」
この世界の人達は一体、なぜそんな不思議な家を建てたのでしょう。
「あれを見ろ、妹よ」
「え? ……あっ!」
その建物の中のひとつ、その一番下の部分で、明らかに他とは違う場所がありました。
そこだけが、まるで中が燃えているかのように明るい光を出していました。
「あれは、燃えているのでしょうか?」
「それは違うと思う、煙も出ていないし。とにかく行ってみよう」
その部屋は、とにかく不思議な場所でした。
まず中はすごく明るいのに、まったく熱くないのです。天井に付いてる装置から、白い光だけが出ているようです。
そしてそこは倉庫のようで、何かは分からない様々な袋が、所狭しと並べられています。ただ倉庫にしては並べ方がきれい過ぎる気もしますが。
「何やら美味しそうな匂いがしないか?」
「えっ、そうですか? じゃあこの袋の中身は食べ物なのでしょうか」
「ああ、食糧はここで確保できそうだ。あと、ここがワタシ達が最初に消す"灯り"なのだろう」
「そうですね」
しかし、見た事も無いこの装置の明かりを、どうすれば消せるのでしょう?
「……って、何やってるんですかお姉ちゃん!」
突然お姉ちゃんは、近くにあった袋を次々と開けていました。
「まずは中身を確認しない事には始まらないだろう。ほら、美味しそうな匂いの元はこれらしい」
そう言ってこちらに差し出したのは、薄くて丸くて黄色い物でした。確かにとても美味しそうな匂いがします。
「うん、これは美味しい。特に食感が気に入った」
私も一口食べてみましたが、確かに美味しいです。
おそらく芋を調理した物だと思いますが、しっかり風味が付いていて、軽い食感と相まって止まらなくなる一品です。ちょっと油っこいのが気になりますが。
「ここには美味しい物がいっぱいあるようだ。持ち出せるだけ持ち出して、全部荷車に積んでおこう」
「そうですね。でもここにある全部は持って行けませんよ」
「ならすべてを開けてみて、厳選して持って行くとしよう」
「えっ……」
本当にお姉ちゃんは、ここにあるすべての袋を一つずつ開けてしまいました。
ただその過程で、ここには食べ物の袋だけでなく、容器に入った水なんかも置いてある事が分かりました。ついてます。
私達はありがたくいただき、荷車に積み込みました。