神の試練
「あなたが、神様?」
「はい。ただし、本来貴方達に試練を与えるはずだったこの世界の神ではありませんが」
「え? それでは試練は……」
「その点は心配ありません。代わりに私が貴方達に試練を与え、その達成をもって本来の儀式の完成とします」
何だ、それなら問題ありませんね。でも……
「なぜ、そのような事を?」
「私が管理する世界で、少し困った事がありまして。それをこの世界の神に相談した所、貴方達を儀式の試練と言う形で事態の収拾に向かわせても良い、と言ってくださいました」
すごく雑な扱いを受けている気がしますが、まぁ神様からしたら人間などそんなものなのかも知れません。
「ところで、先程からあなた達とおっしゃられていますが」
「はい。今回の試練は、お姉さんと一緒に受けていただきます」
やっぱりそうでしたか。お姉ちゃんと一緒なら安心です。
「それで、貴方達に与える試練なのですが」
「はい……」
とは言え、やはり緊張しますね。
「私が管理する世界に赴き、人類が生活していた名残、すなわち"灯り"をすべて消してきて欲しいのです」
「え? 神様の世界には、人はいないのですか?」
「今はもういません。少し前まではいたのですが……」
その世界で一体何が?
「申し訳ありませんが、その部分に関してはお教えできません」
「そうですか、分かりました。それで、具体的に私達はどうすれば良いのでしょう?」
「あちらの世界を隅々まで見てまわり、人類が残した、まだ稼働している装置等を残らず停止させて欲しいのです」
あ。灯りを消すって、比喩とかじゃなく本当にそれをするんですね。
「なるほど。でも、達成して帰った時には、私達は……」
「それに関しては大丈夫です。これは本来の試練でもそうですが、試練を受けている間は時間は経過しないものなのです。現実では、ほんのわずかな間に見る夢のようなものとして処理されます。先達の方々もそうだったと思いますが」
そう言えば、みんな当日の間に儀式は終わっていたので、すぐに終わる簡単なものだと思っていましたが、そういう事だったのですね。
「旅に必要な物も一緒に送っておきますので、どうかよろしくお願いします」
その言葉の直後、急に眠気が来て、すぐに意識を失ってしまいました。
まだ聞きたい事があったような気がしますが、大丈夫でしょう。なんてったって、お姉ちゃんと一緒なのですから。