母上とおやつ
ぽけらーっとした兄さまを連れてお城に戻って数日。
その日、お勉強が終わった僕は母上とおやつを食べる約束をしていたので、ジョセフと城内を歩いていたら、遠くを歩いているご令嬢が目に入った。
なんだか最近見たような感じ...。
僕は気になり、ついつい物陰からこっそり観察。
あ!この前のおじさんを追いかけてたお姉さんじゃない!
お姉さんが僕の事、覚えてるかどうかはわからないけど、僕ってば今の服装モロ王子様って感じだよ。
100歩譲っても、どこかの貴族のご令息な感じだよね。
兄上がなんかこうキラキラした感じの服を着せたがるから、僕ってば目立つ服が多いんだよね。
自分はこんなの着ないくせに。
もしお姉さんが僕の事覚えてたらちょっと困っちゃうな。
街にフラフラ現れるのに、お城にも登城できちゃう立場なんだよね?
ジョセフを見ると、彼も渋い顔をしていた。
とりあえず、今日はお姉さんに見つからないようにやり過ごそう。
あ、でもお姉さんが来てること兄さまには教えてあげた方がいいのかな?
これで、あのお姉さんがどこの誰かはっきりするもんね。
もしかしたら求婚出来ちゃうかもしれないし。
う~ん、でもあんまりフラフラしたくないんだよね。
母上も待ってるしな。
う~ん、よし。とりあえず母上とおやつを食べてこよう。
僕はお姉さんの視界に入らないように、母上の元へ向かった。
母上は先にお茶を飲みながら僕の事を待っていた。
僕は母上に今日のお勉強をいかに頑張ったかを聞かせ、最近のケンポーの成果を披露した。
母上は楽しそうに僕の話を聞き、兄上ばりに僕の事を褒めてくれた。
母上とのおやつの時間に満足した僕は、さっきのお姉さんの事を思い出した。
「そういえば、先ほどご令嬢を見かけたのですが...」
「ご令嬢?」
「はい。そのご令嬢が数日前に兄さまと街で見かけた方のようで。」
「あぁ、フレディが抜け出した日ね。」
「はい。兄さまが一目惚れしたと思われるご令嬢です。」
「まぁまぁまぁ!聞いてないわよ、そんな話。」
あれ、言ってなかったっけ?
あ、兄さまが叱られてたから話すタイミング逃して忘れたままだったのか。
母上は目をキラキラランランさせて続きを促してきた。すごく前のめり。
なので僕は望まれるままに話してあげた。
「ぽけーっとした顔してたから、たぶんね。」
因みに兄さまに確認は取ってないので、全部僕の憶測なんだけど。
母上はなかなか決まらない兄さまの婚約者にヤキモキしてるからね、こういう話聞いたら飛び付いちゃうよね。
「そのご令嬢がどこのどなたか確認しなくては!ハリー、ハリー!来てちょうだい。」
母上は侍女を呼んだのに、「いえ、やはりいいわ。私陛下の所へ参ります。ノア、また後でね。」と、自ら行ってしまった。
これから何が起ころうとも、僕のせいではありません。