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ジョセフはおじいちゃん

「ねぇ、ノア。あのじいさんは誰なの?」


 今日はケンポーのお稽古の日。

 僕はいつもジョセフに連れてきてもらっているんだけど、皆はお家からひとりで来るんだ。

 だから、僕がいつも連れてくるジョセフが気になったみたい。


「ぼくのおじいちゃんだよ。ジョセフって言うの。」


「なんでじーちゃんなんか連れてきてんの?」


「おじいちゃん、ひとりだとあんまり出掛けないんだ。ずーっと家にいるの。たまには外に出た方がいいでしょ?それにぼくかわいいから、ひとりで歩いてたら拐われちゃうかもしれないもんね。」


「お前、男なんだから自分で可愛いとか言うなよな!」


 皆は笑ってるけど、僕が拐われちゃうかもしれないのは事実なのだ。

 こっそり護衛さんはいるけど、目に見える大人もいないとね。


 僕が街に来るときはお城からジョセフと変装した護衛さん達と一緒に乗り合い馬車に乗ってくる。


 ガタガタしてちょっとお尻が痛くなっちゃうけど、皆でわいわい乗る馬車はとっても楽しいよ。

 お尻が痛いって言ったら、誰か抱っこしてくれるしね。

 お子さまの特権だね。


 それにしても今日は暑いぞ。


 僕達はぞうきんを絞りながら、汗だくだくだった。


「なぁ、裏の川で水浴びしてこよーぜ。」

「川で水浴び?」

「いいね、いいね、賛成!」


 僕、川で水浴びなんて初めて!

 ウキウキいそいそと皆に着いていく。


 道場のすぐ裏には小さめの川が流れていた。皆は走って川に飛び込む。僕もマネして川に飛び込む。


 ━━━バッシャーン


 川の底がぬめっとしていたので、僕はそのままスッ転んでしまった。


「でっ...でんかぁー!」


 あいたたた。

 僕が川から顔を出すと、ジョセフがすごい顔してヨタヨタ走ってくる。遅い。


「でんかぁー!ノア様ー!」


 僕はぎょっとした。

 ちょっと、何言っちゃってんの!

 今の僕はただのノアなんですけど!

 皆、ポカンとした顔で僕を見ている。


「おじいちゃん!ぼく転んだだけだよ。そんなに心配しないで。」


 チラッと皆を見る。

 まだ、ポカンと僕を見てる。

 むむむ、まずいぞ。できれば僕はただのノアのままケンポーを続けたいのだ。

 ジョセフめ。


 ジョセフも自分の失態に気がついたらしく、しまったという顔をしていた。


 ジョセフはそのままバシャバシャと川に入ってきて僕を抱き上げる。


「心配しただろう、ノアサマー。」


 うん?何か発音が変。


「驚いてフルネームで呼んでしまったではないか。」


 んん?


「皆さん、ポカンとしてどうしたのかね?この子の名前は『ノアサマー・デンカア』と言うんだが、知らなかったのかね?」


 知らなかったよ!何その変な名前!


 ジョセフはこれでバッチリだとばかりに自信満々だ。


「え、ノアってノアサマーって名前だったの?」

「デンカア?変わった家名だな。」

「お前、自己紹介の時ノアしか言ってなかったじゃん。ああいう時は普通ノアサマーって名乗るんだぞ。」


 なんと!皆ジョセフのでまかせを信じて、僕の名前をノアサマー・デンカアだと思ってしまった。


 そんなぁ~。


 僕は今日からデンカアさんちのノアサマー君になってしまいました。

 僕がデンカアなら、ジョセフだってデンカアだからな!


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