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グレース嬢キレる

 兄上の婚約者のグレース嬢は、可愛らしい外見をしている。

 でも、お話するととってもキビキビハキハキしてるんだ。

 ギャップってやつだね。


 ブラコンデロデロ兄上には、グレース嬢みたいなしっかりした人がいて、本当によかったと思うの。


 今日は珍しく、そんなグレース嬢とふたりでお茶してるんだ。


 兄上がお仕事で、遅れちゃうんだって。

 だから、僕は兄上の代理なの。


 グレース嬢が退屈しないように、僕は普段の兄上の話をきかせてあげた。


「本当、ブラコンね。ノア様、何かあったら遠慮なく私に仰ってくださいませ。」


 あれ、失敗?

 兄上の評価をちょっと下げちゃったみたい。


 お詫びに後で兄上に抱っこさせてあげよう。




 兄上の仕事がまだまだ終わりそうにないと、ジョセフが伝言を受け取った。


「ノア様、私そろそろお暇いたしますわ。」


「兄上がごめんなさい。また来てくださいね。」


 僕はグレース嬢をお見送りした。






 その日の帰り、グレース嬢は消えてしまった。


 城からの帰り道に誰かに拐われてしまったんだって。

 ちょっと前まで、僕とお話してたのに。

 僕はとても心配だったけど、グレース嬢の無事を祈る事しか出来なかった。


 グレース嬢の捜索の為にお城は慌ただしかった。

 兄上がすごく怖い顔をしてた。

 僕にできるのは、邪魔しないように大人しくしてる事だけ。


 皆、僕には何も教えてくれない。

 2日経ったけど、グレース嬢はまだ見つかってないみたい。


 その夜、兄上が僕のところに来た。

 兄上は僕をぎゅーっと抱きしめて言った。


「グレースを迎えに行ってくるね。」




 僕はグレース嬢が帰って来たっていう報せを聞くまで起きて待っていようと思った。

 けど、いつの間にか寝てしまったみたい。


 朝になったら、僕のベッドに兄上がいた。


 兄上は、よく僕のベッドに潜り込むんだ。


「兄上、兄上、起きて!」


 僕は兄上の顔をぺちぺち叩く。


 兄上が起き上がると、僕が叩いたほっぺの反対側が赤くなっていた。


「兄上、その顔どうしたの!?」


 兄上は僕を膝にのせ、ぎゅーっとした。


「グレースに思いっきり叩かれてしまった。」



 昨晩、拐われたグレース嬢の居場所が判明して、騎士団が救出に向かったんだって。

 兄上は皆に止められたのに、無理やり一緒についていって、グレース嬢を助けたんだって。

 そしたら、グレース嬢が、「こんな所に殿下自ら来るとは何事ですか!」って、思いっきり兄上の事ひっぱたいたんだって。


 兄上はグレースに怒られちゃったよ~、と嬉しそうに話してくれた。


 グレース嬢が無事に帰ってきてくれてよかった。やっぱり、兄上にはグレース嬢がいないとね。




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