プロローグ4
思わず目を瞑ってしまったが、段々と光が収まってきた。時間が固定されているせいか、景色が白黒だな。そして、見るからに此処は手術室か。
後ろを振り向くと、人に囲まれた手術台があった。台の上には、ななみが寝ていた。
「ごめんな。きちんと守ってやれなくて。あと、当分会えそうにないみたいなんだ。」
ななみの顔を撫でる。
光がゆっくりとななみを覆っていく。
「すぐに帰ってくるから。」
光が落ち着いてくる。
「じゃあ、行ってきます。幸せになれよ。」
顔から手を離す。本当はもっとそばに居たかった。だけど、これ以上いたら離れられなくなりそうだ。時間もあまり残されていそうになっかた。
母さんに会いに行こうと思っていると、いつの間にか目の前に母さんがいた。おそらく、ここに来た時と同じように飛んだのだろう。
母さんの顔。朝見た時よりも老けたな。
当たり前か。息子が死んで、娘も重体。心労が重なってるはずなんだからな。
「女手一つで俺たちを育ててくれてありがとう。あと、親不孝な息子でごめん。」
俺が4、5歳の時に父さんが死んでから、母さんがどれだけ苦労したか見てきた。そんな母さんにさらに苦労を掛けるのが心苦しい。母さんにもっと楽させてやりたっかた。もう会えないかもしれないと思うと考えがぐちゃぐちゃになってしまう。
どうにかしたい。でも、どうすることもできないことはわかっている。
身体を光が包み始めた。どうやら、もう時間みたいだ。
「必ず、帰ってくるから。」
涙があふれてくる。
俺、頑張るから。絶対帰ってくるから。待っててくれよ。ななみ。母さん。
光が完全に身体を包みレオが消え、世界が色を取り戻し、動き始めた。
目を開けると、エアルカーシュがいた。涙をぬぐう。どうやら無事に戻ってきたようだ。
「おかえりなさい。挨拶は済ませれましたか?」
こちらを気遣ってくれているのだろう。今の俺の状態には触れずにいてくれる。
「一方的にではあるが、最低限、言いたいことは言えたよ。」
「そうですか。よかったと言えるのか解りませんが、よかったですね。」
「そうだな。それに、本当は挨拶なんてできないのにさせてくれてありがとう。」
「お礼を言われることではありません。それよりも、依頼の話をしましょう。」
お礼を言うと、困ったような顔をし首を振った。なにか負い目があるのだろう。露骨に話を変えたし。
「わかった。俺がもう一度、ななみや母さんに会うためだからな。俺は何をすればいいんだ?」
「貴方には、一つの魔法を消滅させていただきます。」
「魔法?」
「正確には、異世界召喚の魔法です。」