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それは私の英雄譚  作者: 九時半
3/18

3:多分真面目な話

パンを平らげた後に、私はこの世界についてや私の今後について聞いてみたりした。


まず何より重要な言語だが、私と彼らが会話できている時点で察するだろう。普通に日本語である。

但し、文字は母音と子音の組み合わせだった。ローマ字みたいな感じだね。

ちょっとめんどくさいけど、せっかくだから覚えることにする。


この世界についてだが、まあよくあるゲームの世界みたいなもんっぽい。

魔法があるし、魔獣もいる。騎士団とかもあるらしいし、ファンタジー系のゲームの定番まんまである。

余談だが目の前のお二人さんもマジモンの騎士らしいのだが、服装は鎧ではなくどちらかと言えば軍服の方に近い。聞けば軍人と騎士の違いがそこまでないそうだ。

魔法の使い方は人により、コツさえ掴めばいいらしくて詠唱したり杖を使ったりする人もいるらしい。


私の今後に関しては、それはもうとんでもなかった。

だってまさか、戦争の兵器として使われるなんてね。ああ、本人はこんな直接的には言ってなかったよ。

だがまあ、なんて言うかなぁ。

うちの国はそんなに大きくないのに何故かとてつもなく強い国に戦いを吹っかけられてる状態で、なんか昔からめちゃくちゃ強いって言われてる異世界の人間を召喚するしか手はねえなって感じだったそうだ。

そこで召喚されたのが私。ウケる。

しかも召喚のコストが高すぎてもう1回召喚とか冗談でも言えないらしく、ここで私が無能だったすごいボロカスに詰られるんだろうなとか思ってる。


まあ、既にみんなの期待は裏切られたようなもんだけど。


みんなの理想はガチムチの男だったのだ。

文献で英雄と謳われた異世界人はムキムキのフィジカルエリートだったから、その印象が強かったとか。

だから私が来た時には「は?」ってなったそう。

召喚した本人達は成功した喜びでそれどころじゃなかったけど、佐木2号やシエルたちのような騎士達がさ…

通りで当たりがきつかったわけである。流石にそれだけの理由であんなに当たりが強かったわけではないようだけど。


「めんどくせー!!戦力として戦ったりみんなの英雄としてこれから頑張らなきゃ行けないんですか?そうなったら国同士の体裁とかもありますよね?え?世界征服した方が早くないですか?」


「まあまあ落ち着いて」


「いやいや落ち着いてますとも。いやね?力って素晴らしいですよ。圧倒的な力で捻じ伏せれば誰も逆らえないし、時間さえあればそれが当たり前になっていくし」


人々を虐殺するわけじゃなく、ましてや飼い殺すわけでもない。

ただ私を圧倒的な存在として誰にも触れられないよう、そんな感じのあれを確約されたいのだ。

それならば犠牲も最小限で完璧だろう。私天才か。


「いやこの国の戦争とか知らんし…勝手に戦って適当に死んでそれっぽく奮戦すれば良くないですか?ほら、多くの人を従える立場にある人の見る100人と、100人のうちの1人である人が見る100人は重みが違うんですよ。前者は100人しか、後者は100人もって感じで。私は前者なんでマジ興味ないっすー!」


「正直過ぎる…」


「そもそもお前世界征服とか出来んのかよ…」


「さあ?」


勝手に期待して勝手に落胆してバカなんだろうか。それともそんな風になるほど文献が世に広まっていたりするのかな?まあいずれにせよ私には関係ないね!


「無理そうだったら世界滅ぼそう!」


「だから出来んのかよ!?」


「知らねーよ!!!」


「キレんな!!」


相変わらずうるさい佐木2号と再び睨み合うようにしたが、今度は逸らすより先に私がベッドに倒れ込んだ。


「あー、マジでクソだるい〜!!無理〜!!なんでそんな執着も何もないわけわからん国に尽くさなきゃいけないのママ〜!!無理〜!!めんどすぎ〜!!」


「言い方はともかくそうなるのも無理はないよね」


「本当に言い方はともかくな」


枕を抱えながら愚痴を叫ぶとそう返ってくる。

そこで「可哀想だけど」とか「大変だね…」といった労りの言葉が出てこない辺り笑えるよね。


「しかも魔法とか使い方わかんないし〜?何、呪文とか言えばいいの?あはは、帽子よ吹き飛べ〜ってか」


寝転んだまま佐木2号を視界に捉えてそんな風にぼやきながら、彼の帽子が私の手元に来るよう想像してみたり。



「ひぇ〜、できちゃった」



マジで私の手元まで飛んできた。しかもいかにもなキラキラを微かに煌めかせてね。

未知数なトンデモ能力を目の当たりにしたわけだから驚きつつ、ちょっとした高揚を味わう。

これは楽しめるかもしれない。


そのまま魔法の発動条件が気になったので、今度は手元の帽子がワープ的なので佐木2号の頭上に落ちるのを想像するだけにしてみる。対照実験だね。

結果はちゃんと発動した。

多分魔法として発動しろ〜って思うだけでいいっぽい?

魔法としてを前提と踏まえなきゃ、軽い想像すら現実になっちゃうもんね。


次に呪文とかも色々試したんだけど、的確に言えばそれだけで魔法は発動した。

例えば固有名詞を使ったりとか。


それから頭の中の情報と呪文だけでも可能らしい。

これは例えばカーテンをぼんやり思い浮かべながら「開けー」と思ったりする感じだね。

同様に視界に捉えたものに対して呪文を使っても成立した。

要約すると、気絶でもしてない限り魔法が使えるって感じか。


「こりゃすごい。魔法同士のぶつかり合いとかになったらどうなるんですかね?戦ってるとして、1人が攻撃の魔法を使った際に相手が防御をすればその魔法は防がれる可能性が出て矛盾ができるくないですか?」


前者の魔法の発動条件が想像することだったとして『目の前の人間を攻撃する』と相手が攻撃されるところを想像した場合、防がれてしまっては後出しが強いということになるだろう?


疑問に思って呆けていたシエルに問いかければ、彼はハッとして戸惑いながらも教えてくれる。


「発動条件をより正確に満たしてたり魔力を多く使った方が相手の魔法に打ち勝つよ」


「なるほど〜」


そう考えると、私の魔法の発動条件が緩すぎて不安だ。…が、まあいいや。


「魔力とかあるんですね」


「…疲労感とかないの?」


「ええ全く」


察するに、私がさっき実験で魔法を使いまくったのは、通常ではかなり魔力を消費して疲れるようなことらしい。

これは魔力最強パターン来ましたね。

ただ、イージーモードだと存外つまらなかったりする。

ゲームでチートを使っても面白くないのと一緒だ。面白かったとしてもそれは最初だけだし、どうせすぐ飽きて記憶にも残らないだろう。

攻略法を立てたりすることがゲームの趣旨だから、チート使っても面白くないのは当然なんだけどね。

チートを使って得るのは優越感であって、ゲーム自体の面白味は得られない。


「あっ、でもこれだったら世界征服も夢じゃないですね!!」


世界征服というゲームがチートによってなんの苦労もなく成し遂げられちゃったらつまんないけど、人生なんてそんなもんだし?


「やめろ」


「お願いだからやめて」


「怖…」


ガチトーンと据わった目を向けれられてつい怯んだ。

いや現役騎士に睨まれるとか、パンピーにはキツいっす。


「まあ、大分ドギツい性格の奴が来たから他の奴らの戸惑いも八割増しなんだろうな」


「そんなに!?」


「パンチが効きすぎてるだろ、どうみても」


「本っ当に初対面でいきなり刃物突きつけてきた人達に言われたくないなぁ…あっちでは銃刀法違反で逮捕ものですよ」


銀のチェーンで繋いで首から下げた指輪、所謂リングネックレスというやつを指先で弄びながらグダグダ話す。

具体的な今後も一切わからないし、話によれば帰る方法がないらしいんだよね。

詰んでんじゃん、クソゲーよりつまんねーじゃん、オワコンってやつじゃん!かぁ〜、終わったな。


「君らもドンマイだねぇ〜、ハズレくじ掴まされちゃって。少なくとも私の世界は比較的平和だから一般人は武器扱えないし、非科学的なものに対する理解があんまりないよ?」


大変だよねぇ〜、とヘラヘラ笑いながら言う。

異世界とか何個もあるでしょ、知らないけど。

少なからず彼らのよく知る文献の召喚された異世界人…ここでは異邦人と呼ばれるそうだが。その異邦人は頭からなんか生えてるしドラゴンになれるし魔法や魔獣を最初から知っている風なので私のいた世界出身とは絶対違う。


というか異邦人って外国人って意味だから、世界規模で違えてる人に異邦人は違うくね?と思ったりしたけど、ここでは気軽に行ける異世界があるらしくて外国人扱いなんだと。

気軽に行ける異世界ってなんだよ…とか思ったけど、行き来できる世界は常識などの似た世界らしい。言いたいことことはそうじゃないが、まあいい。


「はぁ…本当にとんだハズレを引いたな。しかも女としても終わってるときた」


「いやいやおいおい、なんで知らない間に女としての価値も取っ払らわれてんだよ!」


聞き捨てならない台詞に思わず体を持ち上げた。

起き上がった私の方を見る佐木2号は呆れた雰囲気なのに意地の悪い笑みを浮かべている。

絶対性格悪いだろ、コイツ。


「突然異世界に連れてこられた女の、しかも子供が刃物を向けられた状態で軽口を叩き、あろうことか案内された部屋の窓を割ってもいいかと尋ねる。終いには同じ部屋に男がいるにも関わらず寝だす始末だ。お前実は男なんじゃねぇの?」


「冗談も通じねーのかよクソつまんないな!ってか子供じゃないです〜。大体さ、何度でも言うけどきみらだって初対面の人様に刃物向けるってどうよ!?冷たい視線と同じくらい冷たい金属の刃!どんな歓迎の仕方だよ!そんなアグレッシブな歓迎嫌だわ!!仮に女としての終わっててもなぁ!!人としてを疑われるような君よりかはマシだから!!」


「話題をすり替えんな!お前が女らしくないって話だっただろ!?そもそも俺らがボロカスに詰るのは非常識で残念な頭の作りをしたお前に限りの話ですー。悔しかったら可愛く泣いてでもすればぁ?!まあ女子力っつう概念すらねぇようなガキには"可愛く"なんて死んでも無理だろうけどな!」


「ハァ〜〜〜ン?倒錯的で生産性のないただの酸素と炭素その他諸々の集合体風情が言ってくれる!!今ここで泣き喚いてやろうか?というか私に女らしくないって言いますけど、きみも男らしさないし!!仮にも女に対する態度じゃねーよ、お前のそれ!口を開けば『立て』だの『歩け』だのオメーは命令形でしか人との意思疎通が出来ないのか!?仮にも!仮にも女なんですけど!?か弱くて幼気なレディに怒鳴りつけんなや!!」


「罵倒の癖がつえーよ!!それに自分で『仮にも女』って言っちまってんじゃねえか!!か弱くも幼気でもねーわ!!!」


「テメェらうるせぇぞ!!!」


そんな低レベルな言い合いをしていると突如、部屋の扉が乱暴に開かれた。

本当に突然だったし鼓膜が揺れまくるほどの大声だったので私も佐木2号もビビる。思わず2人して体が跳ねたね。

そして視界の隅でシエルが腹を抱えて笑っているのも今気がついた。

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