2:割と快眠だった
寝た!
起きた!
夢じゃなかった!
ンーどうやらここは本当にちょっとおかしな現実らしい。
「Damn it !!!!!」
「寝起きのクセにうるせえな!!」
枕に顔を埋めて叫んだらずっと居たらしい佐木2号に怒鳴られる。敢えて無視させていただくけどね?
窓の方を見ると外はもう真っ暗だ。
「もしかしなくとも中途半端な時間に起きちゃったやつだね。ところでお腹空いたんだけど」
「自分の腕でも齧ってろ」
「私にくれてやる飯はないと?」
「よく分かったな」
私は幼稚園児か?
バカにされすぎて湧き出た殺意と惨めな気持ちを抑えていると、新しい声が部屋に響く。
「アイク、あんまりいじめちゃダメだよ」
ふーむ、佐木2号の名前はアイクらしい。愛称かもしれないけどね。私は佐木2号って呼び続けるし関係ないんだけど。
そしてそんな佐木2号もといアイクを諌めたのはミルクティーみたいな色の髪を束ねた男の人だ。
なぜこうも男ばかりで周りに女の人が居ないのか気になるけど。まさかスカート履いてるのにそういう趣味の男だと思われてるとか?自分で言うのもなんだけど割とありそうで嫌だな。
ここが異世界なら常識が違うし?
まあ、そんなことはどうでもいい。
一見優しげに見えるこのミルクティー頭、本当に優しそうに見えるけど彼も思いっきり私に刃を向けていた1人なのだ。
まあ驚くよね。キャラが違いすぎる。
「はいこれ。建物が綺麗でどこかのお金持ちのところだとか思っていたら悪いんだけど、うちには料理人も贅沢な料理もなくって。我慢してくれると嬉しい」
そう言って渡されたのは紙袋に入ったパンだった。
焼きたてなのかいい感じにあったかい。
我慢も何も、文句を言う所がないだろう。
「私の知ってる料理がここにもあるってだけで充分です、ありがとうございます」
「お前なんで俺には敬語使わないくせにシエルには使ってんだよ」
「口と態度と人相と愛想が悪い」
「二度と喋んな」
「無理ぽよ〜〜〜」
ミルクティー頭はシエルと言うのか。
あと些細なことだがここの人達の名前は英国人みたいな名前ばっかりで、私の名前の瑠花でも違和感なく結構いけそうだと思う。本当に良かったと思うこともないほどどうでもいいことだけど。
私はパンを1つ取り出して一口サイズに千切り口に入れた。
「美味しい!!良かった!!知ってる味だ!!見た目とか名前は同じでも味はどうしようもないほどゲテモノだったどうしようとか思ってたから本っ当に良かった!!
というか、寧ろこっちのパンの方が美味しいかもしれない」
材料や技術が違うのか。
なんにせよ元いた場所と同じ料理があるのはありがたかった。
「飯ぐらい静かに食えよ…」
「この状況でマナーもクソもあるかよ!」
「最低限のマナーくらいは弁えろ!」
「初対面で剣突きつけてきた男に言われたくないね!!」
確かに食事中にベラベラ話すのはマナーとして良くないし私もそういう人は好きじゃないけど、黙って食ってろよって思うけど、こいつにだけは言われたくない。本当に。
「でも、食べ方綺麗だね」
「あー、親が厳しかったんですよ」
「厳しく育てられたのになんでそんな残念な仕上がりなんだよ」
「君は逆にどう育てばそうなるのかな?」
互いに睨み合いながらも、彼が先に「バカバカしい」と折れる。
勝ったのに負けた気分というやつか?非常に悔かった。