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それは私の英雄譚  作者: 九時半
17/18

17:苦いよ

「いずれは来ると思ってましたが、まさかこんなに早くとは…」


戻ってきたメンツに佐木2号が説明し終えると、頭の痛そうな顔で副隊長がそう言った。


「しかも髪、バッサリいかれたね」


「あー、いかれたったいうか、いったんだよね。自分でやったの」


私の方も髪を切った経緯を話す。

別に多分、伸ばそうと思えば伸ばせるしどうということはない。

そう言ったら「女としてそれはどうなんだ…」と言われたけど。本当に解せない。

『たとえ伸ばせるとしてももう少し気にするべき』『躊躇いもなく切るなんて信じられない』だそうだ。

本当にうるさいですね。命と髪どっちを取るって聞かれたら命に決まってるだろ、ふざけんな。

というか比べるまでもないことだし、比べようとすること自体ナンセンスだと思う。行き遅れた爺どもめ。


そうして心の中で悪態をつきまくっていたら何故かめっちゃ睨まれた。ここの人達は心まで読めるのだろうか?



「にしても、なんであんなに魔法が通用しなかったのかなぁ…」


「魔族だからに決まってるだろ」


「えっ」


「え?」


爺どものことはさておきずっと気になってたことを呟けば、イーラがその答えを教えてくれたが内心大驚き。

誰かがそう言った訳ではないのだが私は今回の侵入者を敵国の者だと踏んでたのだ。

この私の考えが正しければつまり、敵国は魔族の国ということになるわけで…


「…話してないのか」


「本気でうっかりしてました」


ジト目で隊長に問われた副隊長は視線を明後日の方に投げながら笑う。

珍しく茶目っ気を出しながら言われたって困るよ。不覚にも可愛いと思ってしまったが、本当に困る。

だって、本当に魔族の国相手とドンパチしてるのかよ。


「魔族の国って言えば、確かヴィライドって帝国でしたっけ」


「へぇ、よく知ってんな」


「へへーん、イーラに教えて貰ったんだ」


聞くところによると、今の王様が手に負えないほどやばいらしい。

先代が大事に大事に育てた兵士をくだらないことに使ってるそうだし、国内もグダグダしてる。

魔族について詳しい話は知らないけど、大変だなーって他人事だった、完全に。


「魔族は我々のようなヒトよりも魔法との関わりが深いため、私たちの使う魔法が通用するケースはゼロに等しいんですよ」


そりゃ参った。世界征服なんてホントにただの戯言じゃないか。

そんなスーパーマンがいればかないっこない…とか言っちゃうけど、国ごと物理的に沈めれば問題ないとか思っちゃってたりもする。


「っはぁ〜、全然口割んないんだけど〜」


副隊長達と一緒に屋敷へついて来たレオリオが大きくわざとらしい溜息を吐いて部屋に入ってきた。

例の3人の尋問をしてたらしい。

そんなレオリオを見て次に私へと視線を向けた佐木2号はバカにしたような笑みを浮かべながら私に言う。


「お前行けば?」


「どういう意味だよ」


「屋敷内で大爆発を起こすような破壊者ならどんな魔族でもビビって情報吐くだろっつう真っ当な意見だが?」


「殴るぞ」


バカにしたようなっていうか、思いっきりバカにしてるね。

言っておくが私の大爆発は正当防衛である。なので私は何も悪くない。だから魔族の彼らもビビらない。よって私が尋問を行う必要も無い。


「存外ありかもしれませんね」


「はい?」


思わぬ伏兵とはまさにこれか。

そのまま有無を言わせねーとばかりに部屋を追い出され、今回ばかりは恨めしくさえ思えるような仕事のできるメイドさんによって3人の保護されている部屋へと案内された。

全然ありじゃないしむしろ限りなくなしに近いなしなんだが、困ったものだね。

言い出した佐木2号本人も若干驚いてたし。

本っ当に困ったものだ…と内心溜息を吐きつつ、それとは裏腹に明るい声で部屋へと入る。


「ハローハロー、ってこの世界にハローって言葉はないのかな?まあどうも、日に日に陽の光がやたら眩しく感じては自分の存在意義を見失いまくりしょうもないテロを起こしてる人生折り返し地点のみなさん、という設定で言わせていただきましょうかお勤めご苦労様です。今日も今日とて人生つまんなさそうなツラしてますね!」


返事はナシだった。流石に無視は酷い。

…やはり私を尋問に寄越したのは人選ミスだろう。

私の魅力的なトーク力を持ってしても彼らの持つ情報が頂けなかったなんて、ざんねん。

そんな私をよそに彼らは彼らでコソコソ話を始めてている。殴り飛ばしてやろうか。


「…やっぱり俺が言います」


「だから新人は先輩様に全部任せりゃいいんだよ!」


「うぅ…死にたくない、死にたくないです……!」


か弱い女子を前にしてすること言うことがそれというのもなかなかである。

私の発言は碌に聞かれてなかったらしい。どんなトーク力でも聞かれてなかったら意味ないもんね。


とりあえず3人の前まで行くと、私はかざすようにして軽く手を挙げた。

何かされると思ったのか身構える3人を無視して問いかける。


「これでどうかねー?」


「……は?」


唖然とする3人に自分の首をちょいちょい、と指させば1人の男が他の2人の首を見て目を見開く。


説明すれば、なんかよくわかんないけど呪術っぽいのがかけられてたのかな?

首をぐるりと覆う一筋の黒が気になってっていうか、怪しすぎたから解いてみた。

他にも事前にイーラから『情報を吐かせようとしたら突然首抑えて死んだ』という話を聞いてたり。


首の黒色が無くなったことを認識した若い2人は直ぐに何かを言おうとしたが、さっき自分のことを先輩様と自称した男が2人を止める。

私が黒を消しただけで、自分にかかった魔術的なそれが消えたわけではない…という可能性を踏んでいるのだろう。

そういう頭が回るところ嫌いじゃないですよ。


恐る恐る、そしてこちらを伺うように。そうして先輩様がゆっくりと口を開いた。


「お、れ達は…ヴィライドの騎士。王の命、により、この屋敷にいるという異邦人を拉致、もしくは殺害しに来た」


「予想通りの魔族だったわけかぁ。王サマはどんな人物?」


「…暴君だ。何よりも争いを好み、それから、他者を疎む傾向にある」


「あはは、随分楽しそうな国じゃん」


にしても、敵国に私がいるってバレてるのは大分まずい気がする。…まあいいか。きっとなんとでもなる。


「君たちも災難だね!ところでコーヒーってブラック派?」


「は?え?いや、俺はミルクを入れる…」


「自分は砂糖入れますよ!!」


「あっ、やっぱり?甘いのっていいよね〜!」

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